キャッシュレス推進協議会が、2019年度(19年4月~20年3月)の年間プロジェクト構成を公開した。購買データの活用やインバウンド消費拡大への貢献、現金取り扱いに関するコスト削減などを目指し、主に九つのプロジェクトを進めている。政府は、25年にキャッシュレス決済比率を40%にする目標を掲げており、年間プロジェクトを通してキャッシュレス化が停滞する理由などを探っていく。

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 一つは、「キャッシュレス・ロードマップ2020」の策定だ。現状、消費者や店舗など、キャッシュレスの普及に不安を抱く人は少なくない。また、キャッシュレス化の先にある社会の効率化などの終局的なゴールを改めて意識する必要がある。こうした社会全体にかかる課題や将来像を改めてまとめるのがミッションだ。これまでは関係者向けの資料が主だったが、一般消費者向けにも資料を作成するという。

 もう一つは、「消費者・事業者インサイト調査」。利用者側の視点に立った現状の確認が不足しているとして、キャッシュレス化停滞のボトルネックを探るための調査だ。実査は8~10月まで行い、分析を経て、ボトルネックをクリアするための施策を検討していくとしている。

 3個目のプロジェクトは、「キャッシュレス教育・体験の実証」。消費者の多くがキャッシュレスに対する正しい知識を有していないことや、体験せずに拒否感を示す消費者も少なからず存在すること、どのサービスを使うべきか悩むケースが多いことなどを受けて、理解の促進や体験を促す施策を打つ。今年11月から来年1月まで、体験や説明会などを提供していき、並行してマニュアルを作成していく。

 4個目は、「自動サービス機における普及促進」として、キャッシュレス化のメリット/デメリットを明確化し、自動サービス機別課題、対応策一覧、対策実施効果を測定する。5個目は、「自治体における普及促進」で、現金で支給している介護手当などの自治体給付金のキャッシュレス化に向け動く。6個目は、「医療機関における普及促進」で、キャッシュレス未導入のケースが依然多い診療所や、資金サイクルの課題、インバウンド旅行者の未払い問題へ対処を検討していく。

 7個目は「コード決済の普及促進」。18年度中に各種ガイドラインを策定し、コード決済を導入しやすくするための環境を整備した。普及促進に向け、セキュリティを含めた残課題の洗い出し、対策を講じる。

 8個目は「データ利活用に向けた周辺環境整備」。現状では、各データが企業によって異なる形で保有されており、連携ができていない。将来的には、統合的な購買・決済情報を蓄積・分析することで新たなサービスを創造できる環境を整えていく。9個目は、「災害時に強いキャッシュレスのあり方」として、停電などでキャッシュレス決済が利用できない状況の考慮して、各手段別の災害対策を検討する。

 協議会は、「キャッシュレスの推進は、オールジャパンの体制で取り組むべきであり、特定の業界、組織の利益を追求するのではなく、広く業界、組織を超えて議論を行い、確実に実行していかなくてはならない。年間プロジェクトについては、迅速に実施する必要がある」としている。

協議会はキャッシュレス化が停滞するボトルネックを探っていく