「名もなき家事」という言葉が話題になり始めて、もう数年が経ちます。夕食の献立を考えたり、ごみをまとめたり、消耗品のストックを把握したり…。

このような「名もなき家事」のほとんどを女性がやっているということも話題になりました。

「女性が家事をやり、男性は何もしない」
「男性が家のことを何もしないのはおかしい」

そういう論調が主流であり、これらの意見は間違いないと思います。

しかし、なぜ男性が家事をやらない場合が多いのか、という背景に「名もなき家事」ならぬ「名もなき業務」が多数あることにも触れられるべきではないでしょうか。

「名もなき業務」が会社員を苦しめている

この「名もなき業務」ですが、管理職など責任ある役職に多く発生します。

仕事での評価を勝ち取るには、日々の決められた業務だけをこなしていてもムリなので、普通の意欲的な社員は「期待を上回る仕事」を無言のうちに求められるのです。

そのために、上司や取引先のこれまでの発言の傾向から先回りして会議準備を行ったり、どのようにコミュニケーションをとろうか考えたりと、さまざまなことに気を配らなければなりません。

その「名もなき業務」は意外と重要にも関わらず、「名もなき業務」であるがゆえ、社内ではなぜか胸を張って「業務だ」と言いづらいこともあって、サービス残業することもあります。

会社の中では「名もなき業務」には見て見ぬふり。
さも「そのくらいは当然やることだろう」というスタンスだし、「向上心のあるやつはみんなやってるよ」「やらないやつはそこまでの社員だ」という感覚…。

この「名もなき業務」にひたむきに取り組むことが「美徳」とされている風潮も問題です。

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責任ある役職には独特の「名もなき業務」も

社内や取引先との関係ではミスをしたら評価が落ちるのは当然ですが、周囲に「不安」「心配」を与えるだけでも、じつは評価が落ちますよね。

だから「僕たちは大丈夫ですよ」「心配いりませんよ」「問題なく進んでいますよ」という報告、連絡を常日頃から行い、少しでも問題が起きそうになればすぐに相談をしなければいけません。いわゆる報・連・相ですね。

この報・連・相は言葉にすると簡単ですが、常日頃から完璧に行うのはなかなか大変です。

人によっては報告、連絡の形式にこだわる人も存在するので、その人に合わせて資料を準備したりすることで、残業になってしまうこともあります。

管理職など、責任ある役職になるとチームマネジメントという観点から、さらに名もなき業務は増えていき、負担はどんどん増していくのです。

社内イベントの準備も馬鹿にできない

「名もなき業務」は管理職だけでなく、新人社員や若手社員にも多くのしかかってきます。
社内の歓迎会や送別会、さらに社内の親和イベントなどはその代表例でしょう。

業務時間外で準備をしたり、出し物の練習をするなど、仕事以外にもさまざまな準備が必要となります。

そのようなイベント準備は「業務」とは認められておらず、業務時間にイベント準備を行うと「そういうことを業務時間にしないで」と苦言を言われることも多々…。

本業の業務量がまったく変わらない中、イベントの準備もプラスで行うという、「名もなき業務」に苦しめられた伝統は先輩から後輩へと受け継がれていくのです。

満員電車や飲み会も「名もなき業務」

断れない先輩社員の誘いに付き合わないと、仕事に支障が出る…。
そう思って参加する飲み会やゴルフはもはや業務です。

他にも満員電車に乗ったり、災害を見越して出張先に前日入りをしたり「名もなき業務」は様々な場面で人々の時間や体力を奪っています。

まだまだ様々な例があるのではないでしょうか。
各社独自の「名もなき業務」があり、その業務のせいで残業をしたり、休日まで仕事をしなければならなかったりと、会社員はいつでも仕事のストレスを抱えながら生きている人が多いのです。

夫婦で何が大変なのか情報共有すべき

「名もなき家事」という言葉はかなり一般的になり、これまでも「男性の家事・育児参加」というテーマで多く取り上げられてきました。

しかし、男性は会社内で「名もなき業務」を依頼されやすかったり、責任ある立場につくとさらに「名もなき業務」が増えてしまうことも。

「名もなき業務」に疲れ果てた男性は、自宅では「名もなき家事」に疲れ果てた女性に厳しい視線を向けられるという構図が、だんだん見えてきます。

また現在、正社員として責任ある役職に就いたり、家庭と仕事を両立させている女性が増えているため、女性の中にも「名もなき業務」に疲れている人が多いのではないでしょうか。

大切なのは夫婦の置かれている現状に理解を示して、支え合うことです。
「家事の分担を平等にする」というのは解決の選択肢のひとつでしかなく、それだけが答えではありません。

夫婦2人で話し合って、お互いの今の生活で何が大変で何をしてほしいのかを情報共有し、生活を共にするチームメイトとしてうまく連携して生きていくことが大切です。

まずは自分が何に苦しめられ、ストレスを感じているのかを言葉にし、相手の状況を知り、パートナーをどう支えられるのかを2人で考えてみてくださいね。