「今いる会社で働き続けるか? 転職して他の会社に行くか?」「どんなキャリアが自分に合っているのか?」「このまま、会社にいるしかないのか」
ここでは、人脈、才能、ビジネスモデルを必要とする「派手な起業」ではなく、Excelでの数値管理や資料作成、イベント運営といった「地味な起業」で生計を立てている田中さんがその実践法について解説していきます(以下、田中氏の寄稿)。
「地味な起業」の実践法は3タイプ
地味な起業には、人によってやり方が無限にあります。ここでは、普通の会社員をしている人なら誰でも普段やったことがあるようなネタから、一歩踏み込んだスキルが必要な方法まで幅広くご紹介したいと思います。実践法はわかりやすく「マネジメント系」「クリエイティブ系」「コミュニケーション系」の3つのタイプに分類しました。この中から1つだけのスキルでも、あなたはすぐに「地味な起業」にチャレンジできます。
「自分はどれが合っているんだろう……」。そう不安に思う人は、まずは「スタートアップ診断」をやってみてください。
今回は、人と話すことが得意なタイプにおすすめの「コミュニケーション系」。接客や営業経験がそのまま生かせる仕事が多数。会場に足を運んで現場でのお手伝いをすることもあるので、仕事の依頼主ともより信頼関係を築きやすいという特徴もあります。
忙しい依頼主からのニーズ「電話対応」
依頼主に代わって電話に対応します。
「秘書代行サービスを利用するほど予算もないけど、電話に対応しきれない」
「特定のイベントのときだけ、誰かに電話対応をお願いしたい」
といったニーズから発生する仕事です。これは電話対応に限らないんですけど、細かい作業を請け負うことで、依頼主が本業に集中する環境を作ると、結構喜ばれますね。
僕がよくやっていた例では、セミナーの参加者を募集したあと、開催直前になってリマインドをする、あるいは未入金の参加者に「入金をお願いします!」と連絡するなどがありました。とくに喜ばれたのが、緊急時の電話対応です。セミナーを開催すると、必ずといっていいくらい緊急案件が発生します。
「今、会場に向かっているのですが、道に迷ってしまったので、道を教えて頂けますか(迎えに来て頂けますか)?」
「急に参加できなくなりました。どうすればいいですか?」
そういった電話に、いちいちセミナー講師本人が対応するわけにはいきません。個人で活動している人の場合、誰かが緊急時の対応をする必要があります。そこで、「僕が電話番号を作りますので、緊急時の対応は任せてください!」などといって請け負っていました。
ただ、ピンポイントで「セミナー当日の電話対応をお願い」と依頼されるというより、後述するセミナー・イベント運営の仕事のなかで発生するケースがほとんどでした。
■ 電話対応
<報酬の目安>
顧客からの電話対応:時給1000円程度~
英語での電話・メール対応:1件1000円程度~
起業家の代表番号への電話対応:時給1000円程度~
<まとめ>
① イベント時などに発生しやすい
② 緊急時の電話対応は重宝される
③ 他の仕事と連動することが多い
受注数次第で、堅実な収入に「LINE@返信対応」
LINE@の返信を代行する仕事です。LINE@は、ビジネス向けのLINEアカウント。ユーザーに向けて一斉にメッセージを配信したり、LINE限定のクーポンを送信できたりするので、飲食店、美容室などの店舗系で比較的よく活用されています。実際、飲食店などでは、レジのところに「LINE@始めました」などと登録を募集する告知があるのを目にします。
LINE@では、たくさんのお客さんにニュースやお知らせを届けられるというメリットがありますが、個別のトークなどはいちいち対応しきれないケースも多いはずです。とくに、登録者数が100人、500人、1000人……と増えるにしたがって、店舗の負担も大きくなります。
そこで発生するのが、この返信対応の仕事です。僕自身もクライアントに代わって質問に回答するという返信対応を行っていました。どうしても答えられない質問は、「こういう質問を受けたので助けてください!」と講師に直接問い合わせて対応していました。もちろん、返信代行に限らず、LINE@の設定から、情報発信、返信代行にいたるまでの運用をトータルパッケージで請け負う方法もアリです。
「LINE@に興味はあるけど、なかなか手を出せない」という人も多いので、LINE@の運営を複数の会社から受注するだけでも、地味な起業としては堅実な収入になるのではないでしょうか。情報発信のお手伝いをする経験は、自分のスキルを高める上でも役に立つのでかなりおすすめです。
■ LINE@返信対応
<報酬の目安>
起業家や法人が運用するLINE@の返信代行:時給1000円程度~
<まとめ>
① 飲食店などの店舗でニーズが多い
② トータルパッケージで請け負うパターンもある
③ スキマ時間を使って仕事ができる
レポートまとめが得意な人向き「セミナーリサーチ」
これは依頼主に代わってセミナーに参加し、その内容をレポートする仕事です。最近、本の要約サイトが注目を集めるようになりました。要約サイトでは、ビジネス書や教養書などの要約が紹介されていて、1冊あたり3分程度で読むことができます。おおよその内容を把握できますし、気に入った本があればネット書店を通じて注文もできます。
セミナーリサーチは、それをセミナーで行うもの。飲食店の覆面調査員の仕事とも、ちょっと似ています。行きたいセミナーがあっても時間がなくて行けないという悩みを持つ人は結構います。そんな人にとってみれば、代わりに参加した人にレポートをまとめてもらうだけでも助かります。
この仕事の面白さは、お金をもらいながら自分も学べるところにあります。よく、学んだことをアウトプットすると、知識が頭に定着するといいます。セミナーリサーチの場合、レポートは必ず書かなければならないので、確実にアウトプットすることになります。自分自身の学習効果も相当高くなるというわけです。Facebookなどを見ていると、「セミナーの申し込みをしたけど行けないので、代わりに参加して内容をまとめてもらえませんか?」という投稿を結構目にします。
セミナーに参加するのが好きで、レポートをまとめるのが得意な人にはぴったりの仕事ではないでしょうか。
■ セミナーリサーチ
<報酬の目安>
時給1000円程度~
<まとめ>
① 代わりにセミナーをレポートする
② 自分自身の学びにもなる
③ 募集している人は結構多い
気配りが成否を分ける「セミナー・イベント運営」
セミナーやイベントの運営をサポートする業務です。具体的には、サイトでセミナールームを調べて会場を予約するところから始まり、参加者のリスト作成、当日の受付、入金の管理、終了後の二次会のお店の予約、誘導など、とにかくセミナー・イベントに付随するいろいろなことを行います。会社でイベントの運営や飲み会の幹事を体験した人なら、大体どんなことをすればよいのか経験的に理解しているはずです。こういうイベントごとって、やるべきことはいっぱいあります。たとえば、セミナー中に会場が暑そうなときはエアコンの設定温度を下げるとか。こういう細かい気配りが成否を分けます。当日会場に来なかった人に連絡をしたり、二次会の参加者から飲み代を徴収したりといった、ひとつひとつのサポートが大切です。
僕の場合、当初は数名程度が参加するようなセミナー運営をサポートしていたのですが、講師がどんどん著名になっていった結果、最終的には200人近くのセミナーを運営するまでになっていました。基本的な作業の流れは変わらないのですが、大きなセミナーを問題なく運営できた経験は自信になりました。講師の方と一緒に成長させて頂いたと思い、とても感謝しています。
■ セミナー・イベント運営
<報酬の目安>
セミナー受付:時給1000円程度~
セミナーのリマインド送信:時給1000円程度~
<まとめ>
① セミナー・イベントにはたくさんの仕事が発生する
② 会社で幹事をした経験が生きる
③ 大きなイベントを成功させると自信がつく
1日数時間でできる「秘書業務」
秘書業務とは、経営者、起業家などの下で、事務作業を担う仕事のことです。最近、この秘書の仕事を在宅で行う「在宅秘書」が増えていて、在宅秘書を募集するポータルサイトもありますね。
「自分で請求書や商品を送るなどの事務作業をしているけれど、なかなか手が回らない」「人を雇いたいけど、正社員というのはハードルが高い」という起業家と、「フルタイムは難しいけれど、子育てもある程度ラクになったから、融通の利く働き方をしたい」「子育てをしながら活躍できる仕事を探したい」という女性はたくさんいますから、在宅秘書という働き方が増えているのも当然です。
地味な起業でいう秘書業務も、この在宅秘書の働き方とほぼ同じです。秘書業務は、基本的に通勤する必要がなく、1日数時間といった単位で、在宅で仕事を行います。具体的な仕事は、電話やメールの対応、商品のや発送、資料作成、請求書や領収書などの作成、スケジュール管理など。つまり、これまでお話ししてきた作業をまとめて請け負っているようなイメージです。
僕自身の経験でいうと、ある店舗でDMやお礼状の発送作業を行ったことがあります。そのお店の経営者はマネジメントで忙しく、アルバイトのスタッフもお店の仕事で手一杯。顧客への発送業務にまで手が回りません。そこで僕が、お客さんの会員カードの情報をExcelで管理し、お礼状や年賀状、DMの発送を請け負っていました。
起業家の中には「たくさん名刺をもらうけど、全然管理できない」という人もいるので、名刺の情報管理なども需要があると思います。お礼状の文面や年賀状の文章を提案できると、さらに仕事をもらいやすくなります。
ところで、いうまでもないことですが、個人情報の取り扱いに問題があると法的な処罰を受けることになります。くれぐれも注意してくださいね。
■ 秘書業務
<報酬の目安>
顧客への未入金時の電話対応:時給1000円程度~
講座運営時のメールの送受信:時給1000円程度~
懇親会会場の予約:時給1000円程度~
経費精算書の作成:時給1000円程度~
社内カレンダーへのスケジュール登録:時給1000円程度~
コンサルティング予約受付システムの設定:時給1000円程度~
<まとめ>
① 在宅秘書の働き方が増えている
② 秘書業務とは地味な起業を総合した働き方
③ 社会人の基本的なスキルが最も役立つ
「小さな仕事」ほど大きく育つ
ここまで地味な起業の実例を紹介してきました。どうでしょう。文字通り「地味」な作業が多いですよね。
ひとつひとつ、数千円から請け負えるお小遣い稼ぎのような作業ばかりと思うかもしれません。ですが、小さな仕事が積み上がっていくと、徐々に信頼されて大きな仕事を任されるようになります。集客から動画制作、顧客管理から販売まで一手に引き受ける、参謀のような立ち位置に立てるわけです。僕はこの立場を「プロデューサー」と呼んでいます。
「プロデューサーになるなんてハードルが高い」と思われそうですが、要するに相手のビジネスを成功させたいと思い、どんどんアイデアを提案していけばよいのです。つまり、ステップバイステップでサポーターからプロデューサーに成長していくイメージです。
人は自分自身を売り込もうとすると思考停止しがちですが、他人のビジネスとなると「あれもやったほうがいいんじゃないか」「これもやったほうがいいんじゃないか」など、意外にアイデアが出てくるものです。
そのアイデアを実践していけば、確実に信頼を獲得して、地味な起業から本物の起業に自然と変わっていきます。千里の道も一歩から。着実に成長していきましょう。読者の皆さんには、このように小さな仕事から始めて、ぜひステップアップを目指して頂きたいと思います。地味な起業を本物の起業へと育てましょう。
<TEXT/田中祐一>
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