インターハイの女子新体操団体で、見事優勝を手に入れた常葉大学付属常葉高等学校。昨年は地元開催という追い風を受けつつも、惜しくも4位という結果に終わりました。その悔しさをどう生かし、自分たちらしい演技につなげたのでしょうか。今回は、2年生でありながらキャプテンとしてチームをまとめた田中唯加さんと、新体操部顧問の末永明日香先生にお話を伺いました。

減点を最小限にする練習と“魅せる演技”が勝因

【田中唯加さんインタビュー】

―― 優勝した感想をお聞かせください。

インターハイでの優勝は初めてだったので、本当にとてもうれしかったです。昨年は地元開催でしたが、4位という結果に終わり悔しい思いをしたので、それを挽回するつもりで挑んだ今大会で優勝できたことは、大きな自信につながりました。反省点はありますが、自分たちがやってきたことは間違いではなかったんだ、と素直に思えます。


―― 優勝できた一番の要因は何だと思いますか?

一番の要因は、目立ったミスなく踊り切れたことです。今年からミスの減点ポイントが大きくなるというルール変更があり、それに合わせた練習を行えたのが勝ちにつながりました。

例えば投げ技では、移動してキャッチすると大きな減点になります。そのため、定位置でしっかり取る練習はもちろん、うまく投げられなくてもミスに見えない動きをする練習も繰り返し行いました。また、新体操は“魅せる競技”。体を大きく動かして表現することも常に意識し、5人全員が一体となって、2分半という演技に集中できました。

観客に伝わる演技の大切さと、キャプテンの役割を実感

―― 一番苦しかった場面はありますか?

正直、インターハイでの演技はベストと言い切れないものでした。減点にはならなかったものの、加点を取り切ることができなかったからです。演技の途中でも練習のほうがうまくできたと思うことが多々あったのですが、演技の最後には4連続技など大きな見せ場があるので、自分たちの演技をやり抜くことに気持ちを集中させました。


―― 勝利のために一番努力したことは何ですか?

先生はよく「練習でできないことは本番でもできない」とおっしゃっています。これは技のことだけではなく、表情も含めてのこと。練習に入ったら表現者であることを意識し、笑顔を忘れないようにしました。
また、選曲した『ボレロ』は壮大な曲なので、そのメロディを生かせるよう最大限に体を動かし、観客に伝わる演技をすることにも注力しました。華やかでのびやかな演技は、私たちの持ち味だと思っています。

キャプテンとしては、チームメイトがミスをした時や、チームが乱れた時の対処の仕方に気を配りました。性格は一人ひとり違うもの。皆を良く観察し、それぞれに合った対応を心がけました。


―― 今回のインターハイ全体に対する感想を教えてください。

今回の大会で、加点の重要性を改めて感じました。技を完璧に決められなかった分、やるべきことが見えたので、来年は今年よりも絶対に良い演技ができるよう練習していきたいです。

また、キャプテンとしても一歩ずつ前へ進んでいる感覚があります。「先輩・後輩で遠慮していたら、本物のチームになれない」という先生の教えから、フロアの上では敬語を使わないのがチームのルールです。キャプテンになりたての頃は、チームメイトに対して厳しいことをなかなか言えませんでした。
でも、それは自分が自分に甘いからなんだと分かってからは、チームのためになることを素直に伝えられるようになりました。人としても少し成長できたかな、と思っています。

“日本一賢い練習”でつかんだ、悲願の優勝

【顧問・末永先生インタビュー】

―― 優勝後、選手たちにどのような言葉をかけられましたか?

「ありがとう!」という気持ちをそのまま伝え、彼女たちと一緒に喜びました。私自身、11年間の顧問歴のなかで今回が初のインターハイ優勝。感動は大きなものでした。そして、決して恵まれた練習環境下にいるわけではない彼女たちにとって、今回の優勝はまぎれもなく自身の手で勝ち取ったもの。大きな自信につながったと思います。


―― 日頃の練習ではどのようなことに注意して指導されていましたか?

新体操は技術の精度はもちろん、にじみ出る優しさや強さなどの人間性が人を感動させる競技です。そのため、新体操だけできればいいということではなく、日常生活を含めて「きちんとやり切ること」を指導の柱に置きました。また、ご両親や補欠としてサポートしている選手など、周りにいる人への感謝の気持ちを持つよう指導しています。


―― 一言で表現するなら、どのようなチームだと思われますか?

「斬新なチーム」といったところでしょうか(笑)。というのも新体操部は、学校のルールと他の部活動との兼ね合いで、平日は16時から18時まで、しかも火・水・木の3日間しか練習ができません。それだけでは足りないので、朝はテニスコートを借りて練習し、昼は演技動画を見てミーティングを行うなど、厳しい状況下で工夫をしています。

そのため、限られた時間をどう使うかは常に課題。指導するに当たっては、「日本一賢い練習をしなさい」と伝えてきました。その成果か、大会当日は彼女たち自身で秒単位のメニューを作り、効率的にウォーミングアップをしていました。自分で考え行動する力と、高い集中力を兼ね備えたチームだと思います。


―― 今後、優勝した経験をどのように生かしてほしいと思われますか?

全てに恵まれた環境でなくても、目標を立て、真剣にやり続けることの大切さを忘れないでほしいですね。乗り越えた先にある喜びや感動は、やった人にしか味わえないもの。今回の大会で証明したように、自分の可能性を引き出しながらまい進してほしいと思います。

そして新体操という競技を通じて、社会に出た時にいろんな人に愛され、信頼される人になってほしい。顧問として、また一人の女性として彼女たちに送りたいメッセージです。



初のインターハイ優勝をつかみ、キャプテンとしてチームを引っ張ってきた田中さん。末永先生が話す通り、限りある時間を最大限に生かす賢い練習は、相当な集中力を要したと想像できます。そんな田中さんですが、「練習がない日は、帰宅すると眠くてすぐ寝てしまいます」と照れながら話す一面も。オンとオフのメリハリをつけることで、さらに演技に磨きがかかり、多くの人を魅了するチームに育っていくことでしょう。

profile】常葉大学付属常葉高等学校 新体操
顧問 末永明日香先生
田中唯加さん(2年)