Credit:S. ÖZUGUR, H. STRAKA

Point
■オタマジャクシの血中に藻類を注入し光合成させることで、神経細胞に酸素を送ることに成功した

■この技術は脳卒中を含む低酸素脳症の治療に活用できる可能性がある

■血中で藻類がどの程度生存できるか、また藻類を注入することによる身体への影響はまだ明らかとはなっていない

水と光を浴びるだけで生活できる植物を羨ましいと思ったことはないでしょうか。

もしかしたら、そうした生活を人間も送れるようになるかもしれません。

新しい研究では、オタマジャクシの血中に藻類を注入することで、切断された細胞に酸素を送ることに成功したと報告されています。

こうした試みは、脳卒中のような血管が詰まることで脳へ正常に酸素が送られなくなる低酸素脳症の治療に応用できる可能性があるといいます。

この研究は、ミュンヘン大学の研究者たちによって、シカゴで開催された米国神経科学会にて10月21日に発表されています。

Oxygen producing algae permit functional recovery of neuronal activity in Xenopus laevis under hypoxia
https://www.abstractsonline.com/pp8/index.html#!/7883/presentation/68926

藻類が酸素をお届け

Credit:S. ÖZUGUR, H. STRAKA

研究者たちは、植物学者との話し合いの中で藻類を使うことを思いつき、オタマジャクシの血中に緑藻(シアノバクテリアの一種)を注入しました。

これによりオタマジャクシの身体は不気味な緑色に染まってしまいましたが、藻類は半透明なオタマジャクシの身体を通して光に反応し酸素を作ることに成功したのです。

次に研究者たちはオタマジャクシの頭部だけを切断し、脳細胞への酸素の供給を停止させました。神経細胞の活動は停止し、発信される信号も検出できなくなりました。しかし、この状態のオタマジャクシへ光を当てて血中の藻類を活性化させたところ、数分後に停止していた神経細胞が再び信号を発信し始めたのです。

これには研究者たちも驚き「Wow」と興奮の声をあげたと言います。

血中の藻類が、見事に酸素不足に陥っていた細胞へ酸素を届けたのです。

人間への応用も可能?

この研究は、まだ「試しにやってみた」というレベルに近いものになります。

藻類が血中の環境でどれだけ生存できるかも不明です。また人間を含む動物についても、異物を血中へ迎え入れるにあたってどのような影響があるか、どの程度なら耐えられるのかといった点が明らかとはなっていません。

臨床実験を行うのは尚早というもので、その可能性は低いだろうと報告を聞いた神経学者は語っています。

しかし、オタマジャクシの切断された神経細胞が藻類の光合成で息を吹き返したという点は、驚くべき発見です。同じ神経学者はこの成果が、脳卒中を含めた低酸素脳症の治療法に新たな可能性を与えてくれるかもしれない、と期待を寄せています。

研究チームは今後、藻類が脳内で他にどのような仕事を行えるかを調査していくことを計画しています。光合成は酸素の他に、グルコースブドウ糖)も生成します。こうした栄養自体も供給することが可能になるかもしれないのです。

Credit: depositphotos

そうなると、人間は光を浴びることで身体に栄養と酸素を豊富に与えることができるようになり、食糧問題の解決にも繋がるかもしれません。

「食事に行こうか」とパートナーを誘う代わりに、日当たりのいい場所へ「一緒に光合成しに行こうか」 と誘う日が来るのかもしれません。

「透明マント」の誕生は近い。背景に溶け込む「透過パネル」が開発される

reference:sciencenews/ written by KAIN
人間も光合成できるかも?血中に藻類を注入して細胞に酸素を与える実験が成功!