近年、ディズニーサンリオの人気キャラクターをはじめ、『名探偵コナン』『セーラームーン』『おそ松さん』などさまざまなアニメ・映画の「キャラクターカフェ」が急増。いずれも話題を呼んでいる。なかでも、現在期間限定でオープン中の「天気の子カフェ」など多数の店舗を企画・運営する株式会社レッグスでは、ここ3年で年間の開催店舗数が40件から120件へと3倍増になる見込み。そこで、キャラクターカフェの人気の裏側と今後について、レッグスのライセンスビジネス事業本部長・谷丈太朗氏に聞いてきた。

【画像】『アラジン』ほかディズニー、サンリオコラボなど2019年に開催された16のキャラクターカフェをプレイバック

■ 急激に規模・人気拡大中のキャラクターカフェ、こだわりの“3つの要素”

キャラクターカフェ(コラボカフェ)とは、キャラクターやアニメ・映画の世界観をモチーフとしたメニュー、グッズや装飾が楽しめるカフェのこと。「ポムポムプリンカフェ」「ムーミンカフェ」など常設のものと期間限定のものが存在する。

レッグスは「ハム太郎カフェ」、「うさまる5周年カフェ」、『銀魂』や『ラブライブ!』とサンリオコラボカフェなど、これまで数多くの期間限定キャラクターカフェを企画してきた。始まりとなった2015年に4店舗を手がけて以来、16年には40件、17年には80件、18年には100件、19年には120件以上と、年々その規模は拡大。快進撃の契機となったのは、映画公開に合わせて3年連続で実施している「名探偵コナンカフェ」だ。さらに今年に入り、実現困難といわれていたディズニー作品のカフェもスタートし、今年公開の『アラジン』『トイ・ストーリー4』などのスペシャルカフェを成功させた。

急成長の裏には、“3つの要素”へのこだわりがある。キャラクターカフェに最も期待される、キャラクターや作品の「世界観」の演出、そしてカフェとしての基盤である「場所」の選択、「フード」の質だ。

■ 「天気の子カフェ」がすごい!「世界観」の演出は“ファン目線”大切にここまで進化

キャラクターカフェにおいて「世界観」の演出はキモ。登場初期は、キャラクターや作品ロゴのプリントをフードに入れ、店内にポスターを掲示する程度のものもあったが、人気の拡大とともにそのクオリティは格段に向上してきた。

「メインターゲットの女性にとってカフェに行くことは日常ですが、そこに好きなキャラクターを組み合わせることで非日常になる。気軽に行けるテーマパークのような存在を目指しています。まずはカフェへの導入部分の外観、入口の装飾。欠かせないのは映像です」と谷氏。現在オープン中の「天気の子カフェ」では、入口の小道の右壁面にヒロイン・陽菜、左壁面に主人公・帆高のカットがあり、突き当り正面のカットで2人が手を繋ぐという演出が。店舗に入るといくつものスクリーンで作品の映像が流され、壁面にさまざまな美しい“空模様”のパネルが散りばめられている。

もちろん、フードやドリンクでも1ランク上の「世界観」を演出。担当プロデューサーの鶴田夏実氏いわく「作中に登場した食事を再現したメニューや、てるてる坊主や猫のアメのかわいいイメージを表現したメニュー」を用意。装飾、メニュー、グッズ、そのすべてに「愛とこだわり」が詰まっていた。

演出のために何より大切にしているのは“ファン目線”だ。レッグスには作品への「愛」と知識を持ち、自らが”ファン”ともいえる数多くの社員が集っており、常に「ファンが喜ぶ」ことを念頭に置いてカフェの準備を行っているという。その過程では、キャラクターや作品の版権元との綿密な打ち合わせも。谷氏によれば「メニューもグッズも決まるまでにはかなりの時間と労力をかけています。深くディスカッションできればそれだけいいものができる」とのこと。キャラクターカフェの成功の裏には、これらを突き詰めてきたことで、世界観の表現が進化してきたことがあるのだ。

■ キャラクターに会えるなら「味は仕方ない」? カフェの要「フード」と「場所」

「キャラクターに会えるなら味は仕方ない」と諦められるような料理では“カフェ”としては成り立たない。そのため、レッグスではフードのプロがプロデュースを行っているそう。「トランジットジェネラルオフィスなど、食のトレンドに強く、女性が今どんなものを好むかを熟知している企業と一緒に取り組んでいます」と谷氏。「食に満足できなければ、残念だという印象が残ります。おいしいことは大前提で、その上で世界観の表現が楽しめるということが大切だと思っています」と語る。

特にディズニーでは、作品をテーマにしたフードのクオリティや安全性について厳しいルールが設定されており、メニューにはかなりの試行錯誤を重ねたという。またそれ以外でも、例えば「天気の子カフェ」の「てるてるオムライス」では、可愛いビジュアルを表現しながら、フェイス部分にマッシュポテトやチーズを詰め、たっぷりかけられた濃いめのソースでおいしさを倍増。カフェの要といえるフードの充実のためには全力を注いでいる。

さらに谷氏は「コアなファンだけが集うのではなく、ライトなファン層にも気軽に足を運んでもらえる空間づくりを意識しています」と話す。そのために重要なものは「場所」だという。「最初にコラボカフェ専用の建物を作ったのは原宿でした。原宿は街そのものがテーマパークのような、日常とは違う“ハレ”の場。行くだけでもワクワクする場所です。これは非日常を求めるキャラクターカフェには大切な要素です。ほかにも表参道SHIBUYA109、ソラマチといったスポットを選択しています」と谷氏。そのキャラクターを好む層とそのエリアを訪れる客層をマッチさせることも、成功の秘訣だと語る。

■ キャラクターカフェのヒットに不可欠な“SNS”のファンコミュニティと拡散力

キャラクターカフェが飛躍的に人気上昇し、社会に浸透してきたカギは“SNS”にあるという。谷氏は「ファンのコミュニティに情報が入ると、あっという間に拡散される。ターゲット層に確実に伝わり、しかも早い。SNSは昨今のキャラクターカフェの成功には必要不可欠となっています」と語る。なかでも期間限定の店舗には相性ピッタリだそう。

さらに、谷氏は「SNSの反応を見て学ぶことはたくさんある」と話す。「私たちはカスタマーセンターを設置してお客様の意見を集め、運営会社とこまめにミーティングをしながら改善を行っていますが、SNSも定期的にチェックしています。どんなことに喜んでもらえるのか、逆にネガティブな意見はどんなことがあるのか、反応を探っています」。SNSがここまで生活に密着してきたことは、人気だけでなくクオリティの向上にもひと役買っているのだ。

■ 「時代を映す鏡」カフェとして人気の“キャラクターもの” 今後目指す姿は

カフェ、飲食店は、テレビドラマや雑誌などのメディア同様「時代を映す鏡」であり続けてきた。そんな“カフェ”として現在、今回扱ったようなキャラクターカフェが人気に。『場所』を選び、『フード』に力を入れ、『世界観』を演出することで、SNSが定着した現代社会のなかで身近なものになってきている。このことは、ディズニーサンリオはもちろん、さまざまなジャンルのキャラクターやアニメ・映画作品が社会のなかでより存在感を増し、誰もが認める人気者として定着してきたことを示しているといえる。

レッグスは2018年、サンリオキャラクター「ぐでたま」の5周年にあわせて「ぐでたまフェス」を開催。キャラクターコラボの次なる可能性を追求したフードフェスだったが、今後はこうしたカフェ以外の形式での展開も考えていくという。

「ただ、どんな形であれ絶対に守らなければならないのは、常に“ファン目線”でいること。“ファンが喜ぶ”ことを第一に考えてつくっていきたいです」と谷氏。キャラクターカフェの根底には、「カフェを訪れた体験によって、キャラクターや作品をもっと好きになってもらいたい」という思いがあるそう。「常にお客様に満足していただけるように、もっと作品を好きになってもらうためのものであり続けたい。そのために、まだまだ我々がやるべきことがあると思っています」。

レッグスでは今後、11月22日(金)の映画公開に先駆け『アナと雪の女王2』のスペシャルカフェの開催を予定。キャラクターカフェは今後もさらなる飛躍が期待できそうだ。(東京ウォーカー(全国版)・岡部礼子)

大ヒット映画『天気の子』をテーマにした「天気の子カフェ」のフードメニュー