韓国が開発に取り組んでいる新型戦闘機KF-Xが、ようやく形になりそうな模様です。その紆余曲折の経緯は、他国との共同開発も視野に入った空自F-2後継機の今後にとって、いろいろな意味で参考になるかもしれません。

実物大模型もお目見えのKF-Xは次のステップへ

韓国の航空機メーカーKAIKorea Aerospace Industrie)と韓国空軍、韓国で防衛装備品の開発を手がける防衛事業庁が、10月15日(火)から20日(日)までの6日間、韓国のソウル空軍基地で開催された防衛装備展示会「ADEX2019」に、韓国が国内開発を進めている新戦闘機KF-X」の実大モックアップ(模型)を出展しました。

KF-Xの開発は2019年現在も韓国空軍が運用している、1970年代に導入した「F-5E/F」「F-4E」両戦闘機の後継機として2001(平成13)年にスタートしました。当時の韓国空軍とKAIは、開発と導入に必要な経費を少しでも抑えるため、KAIロッキード・マーチンの協力を得て開発した超音速ジェット練習機「T-50」の戦闘攻撃機型である「FA-50」をベースに、ステルス性能を向上させ、捜索距離の長いAESAレーダーなどの高度な電子装置を搭載する、エンジン1基の小型単発戦闘機を考えていました。

しかし、小型戦闘機では日中両国の新戦闘機に対抗できないという声が、防衛事業庁の諮問委員会やメディアから上がります。また2010(平成22)年12月に発生した北朝鮮による延坪(ヨンビョン)島砲撃事件を受けて、北朝鮮に対する抑止力を強化するためには、KF-Xは高いステルス性能を持つ多用途戦闘機とする必要があると空軍が方針転換をします。こうした事態を受け、小型単発戦闘機案は見送られ、より大型のエンジンを2基搭載する双発戦闘機として開発されることになりました。

「ADEX2019」で発表されたKF-Xサイズは、全長16.9m、翼幅11.2m、最大離陸重量は2万5582ポンド(約11.6t)で、F-15などに比べれば小さいものの、イギリスなど4か国が共同開発したユーロファイタータイフーン」などよりも大きな戦闘機となっています。

必要な技術を他国に求めると…?

韓国はKF-Xを本格的な戦闘機として開発するにあたって、アメリカ政府と各メーカーに対して、ステルス技術を含む25項目の技術移転を要望していました。しかしアメリカ国務省は2015年に、「ステルス技術」に加えて「AESAレーダー」、ステルス性能の高い目標の捜索と攻撃でも威力を発揮する「電子光学照準システム」、敵の攻撃に対して電波妨害などを行なう「自己防御装置」の4項目に関しては、韓国に技術移転を行なわないことを決定。残る21項目の技術移転にも難色を示したことから、韓国国内ではパク・クネ大統領(当時)の責任を問う政治問題にまで発展しました。

最終的にアメリカは21項目の技術移転に関しては同意しましたが、前に述べた4項目の技術移転は認めませんでした。このため韓国は、ヨーロッパイスラエルなどの企業の協力を得ながら、国内企業を総動員してステルス技術やAESAレーダーなどの開発に取り組みます。そして2019年9月26日、空軍の要求する条件をすべて設計に反映することが可能であるとの結論に達したことから、試作段階へと移行することを決定しました。

防衛事業庁はKF-Xの試作1号機を2021年上半期に完成させ、2022年上半期から飛行試験を開始。2026年までに開発を完了し、同年中に空軍へ数機を納入するという最新目標を発表しています。

こうして、韓国は紆余曲折を経て、KF-X試作機の製造へと駒を進めましたが、韓国がKF-Xで経験した紆余曲折は、日本にとって決して他人事ではありません。

ひるがえって空自F-2戦闘機の後継機開発を考えると…?

防衛省2018年12月に発表した中期防衛力整備計画で、2019年現在も航空自衛隊が運用しているF-2戦闘機に関し、これを後継する将来戦闘機について「国際協力を視野に、わが国主導の開発に早期に着手する」という方針を発表しています。

「国際協力」には、F-2のような外国および外国企業との「共同開発」から、KF-Xのように開発期間の短縮と開発費の低減を狙って、必要とする技術を外国および外国企業から移転してもらうという手法まで、様々な選択肢が存在しています。もし日本がKF-Xのように、必要とする技術だけを外国および外国企業から移転してもらうという手法を選択した場合、日本側の希望が技術移転元の政府から拒否されれば、KF-Xと同様、開発期間の延長と開発コストの増大を余儀なくされる可能性もあります。

KF-Xの正式な開発は2016年から開始されており、前にも述べた通り韓国防衛事業庁は、2026年に開発を完了する目標を掲げていますが、韓国国内には約10年間という開発期間について、短すぎるのではないかとの懸念の声があります。日本政府・防衛省2020年度予算の概算要求に、金額を定めず事業の実施のみを要求する「事項要求」の形で、将来戦闘機の開発費を計上していますが、仮に2020年度から開発が開始されたとしても、F-2の退役が開始される2030年代前半までには10年強しか時間がありません。

自衛隊向け将来戦闘機の開発には、1兆円を超える経費が必要となると見込まれています。それだけの経費を投入する以上は、ただF-2の退役時期に間に合わせるという拙速さは不要でしょう。それよりも、外国からの技術支援を受けるのであれば、途中で方針を変更されないよう明確なスキームを構築することや、将来戦闘機の実用化が見込まれている2030年以降、長期にわたって運用する戦闘機にはどんな能力が求められるのかを、他国の戦闘機開発の状況もにらみながら慎重に見極めることの方が大切なのではないかと、筆者(竹内修:軍事ジャーナリスト)は思います。

「ADEX2019」の会場に展示された新型戦闘機「KF-X」の実大モックアップ(竹内 修撮影)。