世界一周の旅……。言葉だけ聞くと実現不可能に思える壮大な旅だが、かたや車椅子、かたやサラリーマンでありながら、それを実現させた男たちがいる。

◆知らない国に行くことに価値がある

 そんな世界一ライフを続けているのは、近著の『ただいま、日本』でもその様子を描いている乙武洋匡氏。そして、「リーマントラベラー」として知られる東松寛文氏だ。

 前回に引き続き、彼らが世界一周にかける思い、そしてその裏側を語り合う。

乙武洋匡氏(以下、乙武):「東松さんはこれまで何か国ぐらい回ってるんですか?」

東松寛文氏(以下、東松):社会人3年目から旅行を初めて、7年間で67か国ですね」

乙武:「そこもあまり理解されないんですけど、僕は今100か国目指しているんです。それで、周りからは『それだけ行ったら気に入った国あるでしょう?』と言われる。僕はこれまで86か国に行ったんですけど、だったら気に入ったところに行ったほうが楽しいんじゃないの?と。

 たしかに、おいしいものとか綺麗な景色といった、いわゆる『観光』にこだわるならそうだと思うんですよ。でも、知らないところに行く、知らない文化に触れるのが旅の醍醐味なので、まだ一回も行ったことのない国に行くほうに価値を感じるんです」

東松:「すごくわかります

◆同じ地域でも国によって文化は大違い

乙武:「行ったら意外と楽しかったりするんですよ。今年の3月には、カザフスタンキルギスウズベキスタンに行ってきたんです。

東松:「いいですね、いいですね」

乙武:「正直、僕も行く前は『そろそろ俺、スタンプラリー的な旅になっていないか?』と思ったんです」

東松:わかります、めっちゃわかります」

乙武:「それこそ大好きなバルセロナとかイスタンブールに行ったほうがいいんじゃない? 俺こだわっちゃってない?って思ったんですけど、行ったら楽しいんですよ」

東松:「よかった! 同じ仲間がいた!」

乙武:「行くまでは3か国の違いもよくわからなかったし、同じような感じかなって思ったけど、実際に行くとまるで違う。ご飯も何を食べているのか想像すらつかなかったけど、遊牧民の羊を多用した料理に、中華と中東が混ざり合ってて、驚くほどおいしかった。

 カザフスタンロシア系が多くて顔立ちもクッキリしてる。キルギスモンゴルまでいかないけど、日本人にちょっと似てる。そこもわからなかった。そういうのを経験しちゃうとマイナーな国に行きたくなっちゃうんですよね」

インド人とパキスタン人が熱い握手

東松:「最高っすね。僕はモルドバのなかに、沿ドニエストル共和国ってのがあって、そこに今年行きました。そこの国境を越えるドキドキ感。未承認国家に入るのが、めっちゃ楽しかったですね」

乙武:「僕は9月に、ラトビアリトアニアベラルーシウクライナモルドバルーマニアブルガリアセルビアと回った。最初モルドバに何しに行くんだろうって思ったけど、僕ワインが好きで。モルドバにはギネス認定されている世界一広いワイナリーがあって、そこを予約しちゃいました」

東松:「いいですね。僕も乙武さんと一緒で、『点数稼いでるだけじゃん』って言われるんですよ。違うと。何もしらないゼロの国と、50ぐらい知ってる国だと、ゼロのほうが知らないことたくさんある。それを目で見てたしかめたいだけなんですよ」

乙武:「いやあ、まったく同じですね」

東松:「今年のゴールデンウィークにはインドパキスタンに行ったんですけど、国境で毎日国境閉門のパレードをやっていて、両軍が集まってくるんです。門の周りに数千人のインド人とパキスタン人が集まるけど、喧嘩するわけじゃなくて応援合戦をするんですよ。それで最後に両国ともすごく仲が悪いのに、がっちり握手して終わるっていう。

 ニュースだけ見てると、インドが空爆するぐらい仲悪いけど、そこだけ見るとハッピーな感じ。それも行って見て空気を味わわないとわからない」

アジア人と同じようにアフリカ人も全然違う

乙武:アフリカでは、これまで行ったことあったのが、モロッコチュニジアというイスラム教圏、あとは南アフリカの3か国だけだったんです。いわゆる僕らがアフリカイメージするアフリカには行ったことなかった。『ただいま、日本』で書いている旅では、東はケニアとルワンダ、西はナイジェリアとガーナに行ったんです。これも行ってみると全然違うんですよね。

 東は顔立ちがほっそりしていて、考え方も慎重で知的な印象。西はとにかくエネルギッシュで、肌の色も東に比べると濃い印象。ヨーロッパの人が日本人韓国人中国人の見わけがつかないって言うのに対して、全然違うよと思うのと同じか、それ以上に違いがあった。行ってみないと口で言われてもわかんないですよね」

東松:「僕も’17年の年末年始に、西から始めてモロッコ、シエラレオネ、ガーナ、コートジボワール、ベナン、ケニア、ルワンダに行ったけど、西のほうは民族衣装を着ていたりする。ルワンダすごい発展していて、かつ、治安もとてもいいので天国みたいでしたね」

乙武:「ルワンダは25年前に大虐殺があって多くの日本人イメージがそこで止まっているけど、行ってみるともう女性が夜歩いていても大丈夫なぐらい安全で発展している。大げさに言えば日本人がまだちょんまげしていると思われるのと一緒ですよね。それぐらい、実際に行ってたしかめることは大事だなと」

<取材・文/日刊SPA!編集部 撮影/荒熊流星>

乙武洋匡
‘76年、東京都生まれ。大学在学中に出版した『五体不満足』がベストセラーに。卒業後はスポーツライターや、小学校教諭としても幅広く活躍。『ただいま、日本 世界一周、放浪の旅へ。37か国を回って見えたこと』が発売中

【東松寛文】
‘87年、岐阜県生まれ。平日は広告代理店に勤務、週末は世界を旅する「リーマントラベラー」。主な著書に『サラリーマン2.0 週末だけで世界一周』『人生の中心が仕事から自分に変わる! 休み方改革』など

―[乙武洋匡×東松寛文対談]―


乙武洋匡氏(左)と東松憲文氏(右) <撮影/荒熊流星>