就活生はどのような基準で企業を選んでいるだろうか。年収、やりがい、将来性……さまざまな基準はあるだろうが、入社前に聞いていた話が全然違った! と、後悔する人は毎年多い。

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全日空 © David Econopouly
 大学生大学院生、転職希望者が企業のホワイトブラック度を見分けるにはどうしたらいいのか。「ブラック企業アラート」運営者の當瀬(とうせ)ななみさん(@blackc_alert)が解説する。

ANAのホワイト/ブラック度を調査

 はじめまして!「ブラック企業アラート」運営者の當瀬ななみと申します。本業でwebサービスアプリのプロダクトマネージャーに従事する傍ら、ご依頼いただいた会社の公開情報を調べてコメントをするサービスを運営しています。

■記事の前提について

 基本的に「インターネット上に公開されている情報」のみを使って書いています。インサイダー情報の類は一切含めていません。今回連載の機会をいただいたので、初回はこんな前提で記事を書きます。

・文系就活生の方向けに
・「就活ランキング上位の企業」を調査

 今回は就活ランキングでも人気が高い、ANA全日本空輸について書いていきます。文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所が実施した「就職ブランドランキング調査」では、2020年卒の就活生が選んだ人気企業トップANAでした。なんと、3年連続の結果だそうです。

 また、就職情報を取り扱う学情が発表した「2020年卒 就職人気企業ランキング」でも総合で5位、文系の4位にランクインしていて人気の高さがうかがえます。

調査観点について

 企業調査をするにあたって、私の場合は下記3点について調査をして判断をしています。それぞれ理由と合わせて紹介します。

ビジネスモデル…その会社の将来的な成長可能性、潰れにくさを見るため

・社長の人物/キャラトラブルが多い人物だと会社もトラブルに巻き込まれやすいため

・社風…実際に働いてみた時の雰囲気が合うかを把握する必要があるため

1)ビジネスモデルについて

 手っ取り早くビジネスモデルの概要をつかむには「就活サイトの業界説明ページ」が手軽かつ、大体の業界を網羅しているので、それを探します。

資料1:参考にするページの検索結果(PC版
 検索結果のドメイン名(緑色の文字)を参考にしつつ、どのページをまず読むか判断します。今回は2番目のリクナビのページを使います。

 最上位結果(01intern.com)のページを使わなかったのは、「2番目のリクナビはリクルートが運営していて、リクルートは転職市場で圧倒的に老舗で、情報の網羅力が高いことも経験的に知っている」からです。リクルートエージェント社の古いコラムページとか結構情報価値高いんですよね。読み物としても面白いのでおすすめです。

リクルートの就職準備ガイドを読み込む

 余談は置いておいて、続けます。「就職準備ガイド 航空・空港業界」のページアクセスして、内容を読み込みます。

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資料2:業界研究ページを読み込み始める
 まず、目次にざっと目を通します。やっぱり「業界の仕組み~他の業界とのつながり」まで端的にまとめてくれていますね。狙い通りです。

 実際に私が作業するときはここから「高速スクロールで拾い読みする」→「脳内で整理する」→「結論を出す」という荒業を1ページあたり、1~2分で行うのですが、可能な限り説明を試みます。

 高速スクロールで拾い読みする時は、「上記の目次に出ていない小見出しの構造」を掴むように読んでいます。私自身は航空業界の基本的な仕組み(メガ・キャリアとLCCの違いなど)はある程度把握しているものの、業界の売上規模・数値の変動は専門外でよくわかっていないので、(2)(3)を中心に拾い読みをするべき、というのをざっとした1スクロールの間に判断しています。

 このページの小見出しを構造化して抜き出すと下記のようになります。

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(1)航空・空港業界の仕組み
メガ・キャリアとLCC
LCCの成長
メガ・キャリアの取り組み
空港の取り組み

(2)航空・空港業界の概況
旅客分野
貨物分野

成田国際空港東京国際空港羽田空港)の動き
那覇空港(沖縄) のハブ空港化に注目
パイロット不足の懸念

(3)航空・空港業界のトピック
訪日外国人の増加
共同運航便の運航
世界的なアライアンスの存在
東京都心上空を通過する飛行ルートの解禁

(4)ほかの業界とのつながり
地方自治体
旅行ホテル
重工メーカー
=====

 まず、(2)航空・空港業界の概況について、「旅客(人間を乗せる)」と「貨物(荷物を乗せる)」の2つがあることを明確に理解する必要があります。航空業界が注目されるときは前者の旅客ばかり注目されがちですが、荷物を運ぶ貨物も非常に重要な役割を果たしているからです(これは鉄道も同様です)。

 一番ざくっとした結論を書くと、

・旅客分野…前年比1.4%増加で好調
・貨物分野…国内貨物は安定、国際貨物(海外からの輸送)は前年比3.2%増で好調

 ということなので、航空業界は拡大基調であると判断できます。ただし、注意も必要です。就職情報サイトクライアントである企業の悪口や悪評判は書きません。なぜならこのページもある種、企業の広告だからです。 そのため、業界の概況やトレンドとして参考にする分にはよいですが、それをANAJAL日本航空)などの業績・評判と直接、結びつけるのは避けるべきでしょう。

 次は、「今後伸びる可能性が高いか」についての判断が必要です。上記で注目した項目を抜き出します。まとめると、

・訪日外国人数…著しく増加傾向(2011年2015年の4年間で約3.17倍増えている)

羽田空港の国際便本数…上限が引き上げられたので本数も増える


 ということが読み取れます。旅客分野における売上は、

1台あたりの最大乗客数
×
運行本数
×
1人あたりの価格
航空機を運用したことでの売上

 の3要素に分解できます。

・1台あたりの最大乗客数…航空機メーカーの設計次第
・運行本数…国土交通省との取り決め
・1人あたりの価格…航空会社が決められる


 となり、この中で増やすのが一番難しいのが「国との取り決め」です。一番難しい要素の上限が近々上がるのは大きなプラス要素と判断できます。

検索結果で政府系のサイトを見てみた

 念のため、運行本数の上限増加について、より公式な情報源にあたっておく必要があるので、国交省が作った周知サイトを探してみました。

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資料3:ちゃんと公式サイドGoogle広告運用されていて感動した…これが広告の正しい使い方や…
 検索結果の最上部に「羽田空港のこれから」というサイトが出てきます。go.jpドメインがあるので問答無用でクリックします。なんだかんだ政府系のサイトは情報面ですごく信頼できるのです。

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資料4:「羽田空港のこれから」サイトトップ
 可愛いサイトなだけじゃなくて、いちばん重要な情報がしっかりファーストビューに入っていました。いい仕事するよ、まったく……。

 ここで読み取るべきは「羽田空港2020年3月29日から都心ルートの運用を始める」ことです。つまり、上記の日付以降、羽田空港の国際便の増発が期待できるということです。めっちゃ目の前の現実だ!

2)社長のキャラ

 今回は非常にあっさりとしか調べていません。というのも、上場企業・有名企業の社長は不祥事があると即日経のトップ記事になっちゃうので、そんな危ない日経記事がないかくらいの確認でよいです(ほら、日産とか関電とか……)。

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資料5:ほら、何もなくて平和ではないか

3)社風

 口コミサイトが便利です。「社名 評判」で探すといくつかヒットします。今回はOpenwork中心にチェックします。1つのサイトの口コミ件数が少ない時は複数サイトを見ます。「enジャパン」の口コミサイト「カイシャの評判」も見やすくて便利です。

 ログインしないと見られない量が多いので最終手段ですが、転職会議を利用することもあります。

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資料6:OpenworkのANAトップ
※参照:「Openwork」「カイシャの評判(enの口コミサイト)」「転職会議」

 口コミについては、件数が多いのでポイントになる部分を筆者にて抜粋しました。良いところは……。

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・年収は456~516万円の範囲と、比較的高い
有給休暇は非常に取りやすい
・残業時間が8~10時間/月と、少ない
・日本を支える大事な公共交通機関のひとつとして、責任感を持ちやすい
・安全・法令遵守意識が高い
・時代の変化や要請に応える風土がある
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 一方で、デメリットになるところは……。

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・総合職の給料は知名度の割には少なめ(パイロット確保が最優先のため)
・福利厚生自体はあるものの、入社してから詳しい使用方法などは特に知らされない。使う時には自発的に調べたり先輩や同期に聞く必要がある
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 また、社員インタビューも良い情報源です。

 事業規模が大きい企業は採用コストもかけられるので、社員インタビューをしっかり取り揃えています。社内の写真から様子が読み取れたりするので、探せる場合は目を通します。今回は「採用公式サイト」の社員インタビューを見ます。もちろん、こちらも企業の悪い情報は載っていないことをご留意ください。

 何名かをピックアップして読んでいきます。可能な限り、部署・性別がバラけるように読みます。読んでいくと、

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・突出した人(100点)が1人いるより、まんべんなくいい人(70点)が多くいるチームが好ましいと考えられる
体育会系の人がかならずいる
・「洗練されたイメージ」を持ちやすいが、実際は泥臭い面もある
=====

 ということが伺えます。「100点よりまんべんなく70点が好ましい」といったコメントを見る限り、個人プレーが得意な人や、“出る杭”になりたい人には不向きな職場かもしれません。また、航空会社というと、ついパイロットや客室乗務員をイメージしがちですが、思った以上にいろいろな職種があることもわかります

 好き嫌いは分かれそうですが、社内の雰囲気はつかみやすいインタビューでした。あと皆さん「着実・誠実」というキーワードが似合う感じですね。

以上を踏まえた分析結果は…

ホワイト度判定】
★★★★☆(ホワイトである)

 ビジネスモデル・企業風土共に問題ありませんでした。有名企業ゆえに選考倍率は高いですが、面接を突破して入社できれば、既存の社員とも協力して働ける可能性が高いですし、そこそこハッピーだと思います。

 ただし、スタンドプレー好きには絶対向かない会社なので、その点だけは注意してください。なお、実務経験重視の中途入社であっても「TOEICスコア730点以上」を求められます。私は書類通りません(※筆者のTOEICスコア510点)!

TEXT/當瀬ななみ(「ブラック企業アラート」運営者)>

【ブラック企業アラート】

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全日空 © David Econopouly