なつぞら』が大団円を迎えてから早1ヶ月、今なおロス”を引きずっている人たちも少なくないだろう。そんな『なつぞら』ファンに朗報! 11月2日(土)にBSプレミアムで放送される『なつぞらSP 秋の大収穫祭』にて、後日譚を描いたスピンオフドラマが、お目見えする。

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高畑淳子演じるとよばあちゃんをメインに据えた「とよさんの東京物語」と、山田裕貴&福地桃子扮する雪次郎&夕見子を中心に、十勝の夫婦たちの“愛”を描く「十勝男児、愛を叫ぶ!」の2本立て。後者では、音尾琢真演じる戸村菊介の妻子が初登場。『なつぞら』本編では菊介の家族が存在するという設定のみだったが、満を持してのお披露目とあいなった。その娘・公英(きみえ)を演じるのは、新鋭の川床明日香。現在17歳、福岡の高校に通いながら女優としての足場を固めているさなかの抜擢となった。念願だったという朝ドラの世界の住人になった感想をはじめ、撮影時のエピソードや17歳の“今”感じていることなど、アレコレと語ってもらった。

取材・文 / 平田真人 撮影 / 荻原大志

公英を演じている時は、お父さん=音尾さんに対して、「もう! しっかりしてよ~」と思っていました(笑)
ーー 『なつぞら』の世界観やチームワークが出来上がっているところへ入っていくというのは、なかなか大変だったのではないかと思います。

朝ドラは『なつぞら』はもちろん、その前の作品もずっと観てきたので、憧れでもあり目標でもありました。なので、スピンオフに出演できるというお話をいただいた時は、何よりもうれしかったです。でも、1年に渡ってみなさんが役をつくりあげられてきた状態の中に途中から入っていくということで、私も自分なりにクランクインの日までに役をどれだけつくりあげることができるのかというのを、すごく考えて臨みました。

ーー 『なつぞら』という作品に関しては、どんな印象がありましたか?

北海道のすごくきれいな景色の中で個性的なキャラクターのみなさんがたくさんいる、という設定が好きでした。それを観ているのが楽しいという印象が、私の中では大きいです。その中に実際に入っていってみると、思った通り本当に面白くて…撮影中はずっと笑っていました。こんなに笑う現場は初めてだなと思ったくらい、楽しかったですね。

ーー 『なつぞら』という作品のスピンオフに出演が決まって、周囲の方の反応はいかがでした?

母は「明日香が『なつぞら』に出るの!?」と半信半疑でしたが、今は楽しみにしてくれているみたいです。友達にはまだ言っていないので、どのタイミングで知るのかなと思うと、ちょっと恥ずかしい感じがします(笑)。

ーー 本編では菊介(音尾琢真)さんに家族がいる、という設定だけが事実としてあったので、満を持しての登場になるわけですが、どんなふうにして公英という役をとらえていったのでしょうか?

そうですね…どのようにキャラクターをつくろうかということも悩んで、たくさんスタッフのみなさんと話させていただいたのですが、お父さん(菊介)とお母さん(戸村カナ子=演・中島亜梨沙)をつなげる役目を担っていることを、自分の中でわかっている子なんだろうなというのは、常に意識しながら演じました。何だろう…お父さんとお母さんケンカをしている時に「何とかしなきゃ!」と思う優しさを、ずっと心の中に置いているところを大事にしようかなって、考えていた気がします。

ーー 台本を読む限り、公英ちゃんはところどころで優しいですよね。

その優しさを大事にすることは決めていたのですが、どういう雰囲気でお芝居しようかな、というところで、少し悩んでいたんです。最初の方に撮ったシーンで、お母さんがお父さんにバッとセリフを言うところがあるんですけど、そこで「わかったかもしれない」って思えたというか、「たぶん公英はこうなんだろうな」と感じることができたので、そこで公英像ができあがった感じがしました。

ーー そのお父さん=音尾さんはやっぱり面白かったですか?

はい。演じている時はお父さんに対して「もう〜しっかりしてよ〜」と思っていました(笑)。でも、ドラマの中で音尾さんが歌を歌われるシーンがあるんですけど、リハーサルからジーンときてしまって…。あと、音尾さんの娘さんのお写真を空き時間に見せていただいて…本当にすっごくかわいいんです! そういうところも素敵でした。

ーー 台本にも歌詞が乗っていたんですけど、どストレートな愛の唄なので、純愛なのか笑いに振れるのかが、ちょっとわからなかったりもして…(笑)。

どちらかというと純愛なのかな…と思います(笑)。その曲は音尾さんが実際にギターを弾いて音源をつくったそうなんです。なので、リハーサルで初めて聴いた時、「すごい!」と思いました。歌も楽しみにしていただけると嬉しいです。

ーー その歌をバックに、十勝男子たちが愛を叫ぶわけですよね。そんなふうに、いい大人たちが奧さんに対してアレコレと言っている図は、川床さんにはどう映ったのでしょう?

何というか、温かいなと思いました。それぞれに思っていることを伝える場面というのは、やっぱり日常ではなかなかないと思うので、ほかの家庭の感謝の言葉を聞けるというのは、素敵だな〜と。ただ、何でしょう…公英からの視点だと、まだ“十勝女子”になりきれていないと感じていた部分もあったので、お母さんたち十勝女子に賛同するだけではなくて、十勝男子たちのことも気にかける優しさを持っているのかなと思いました。

ーー 川床さん自身も、十勝女子のような強さには憧れますか?

そうですね、強くはなりたいです(笑)。でも、それまで私が知っていたカタチの強さではなかったので、新鮮に感じました。

ーー では、現場でご一緒した共演者の方々とのエピソードで、何か印象的なことを挙げるならば?

みなさんにはすごく優しくしていただきました。撮影1日目は(門倉良子役の)富田望生さんに「はじめまして」とご挨拶してから10分後くらいに、「お腹、空いてません…?」って声を掛けてくださって、一緒にNHKの中の食堂に行って、海鮮丼を食べました(笑)。その後にも「ケーキ食べよう」って言ってくださって、ケーキを買っていただいて一緒に食べました。でも、そうしていただいたことがきっかけで緊張がほぐれたというか、ホッとしました。また別の日に、音尾さんと戸次(重幸=山田正治 役)さんともご飯を食べました。

ーー ちなみに、その時は何を?

NHKの食堂だったのですが、その日は「しめじご飯」を食べました。ケーキは行かなかったです(笑)。私は今、高校2年生なのですが、学校の話をはじめ、色々とお話しさせていただきました。本当にみなさんが優しくて、福地桃子(小畑夕見子 役)さんや北乃(きい=柴田砂良 役)さんともお話できて、すごく恵まれていたなと思います。

ーー ドラマや映画に出演し始めて間もないとのことですが、朝ドラ連続テレビ小説の現場に入られてみて、どんなことを感じられたのでしょうか?

一番最初に現場に入って感動したのは、やっぱりセットですね。それまでテレビで観てきたというのもありますが、あんなにリアルに組まれたセットに入ってお芝居するのが初めてだったので、感動しました。

ーー 公英ちゃんのセリフも十勝弁が入っていたりしますが、その辺りのご苦労はありましたか?

音尾さん演じる菊介さんの訛りが強かったので、お母さんと公英ちゃんも強めの十勝弁で行こうということになって。それで方言指導の先生に教えていただいたのですが、難しかったです。

ーー 音尾さんが教えてくださったりは…?

基本的にはイントネーションを録音した音源を聞いて、方言指導の助川(嘉隆)さんに教わっていました。

ーー 「なまら」とか「〜だべさ」とか、十勝弁にもいろいろと印象的な言い回しがありますが、川床さん的には何が残っていますか?

一番練習したのが、「お母さん」のイントネーションだったんです。アクセントの置き方が少し違っていて、そこに苦戦したというか。「お母さん」って言いながら、アクセントの場所で首が無意識に動いてしまったりしました(笑)。

ーー マルチアングルで複数のカメラがいっぺんに撮るというシステムはどうでした。しかも、朝ドラはワンカットで長めに回すじゃないですか。

何台もカメラがある分、何回も同じシーンを撮るわけではなかったので、自分の中で新鮮な気持ちでいられた気がしています。今まで経験した映像の作品は、同じシーンでアングルを変えて何回かお芝居をしていたのですが、どことなく慣れみたいなものが出てきてしまって…。同じことをするのが得意ではないタイプなので、毎回集中力との戦いなんですけど、今回の『なつぞら』の現場では、重ねるテイクの数が少なかったので、集中を切らさずに楽しめたんじゃないかなと思っています。

ーー 今回のスピンオフも『なつぞら』本編の撮影と並行して行われたということで、“朝ドラ”の現場そのものの雰囲気も味わえたのではないかと想像します。そのあたりは、いかがでしょう?

そうですね…先ほどお話したことと重複してしまうかもしれないのですが、セットに入ると『なつぞら』の世界に入っていくことができたので、そういうスイッチのようなものが切り替わる感覚を味わえた気がします。

ーー 菊介さんたちの「秘密基地」のセットというのは、スピンオフで初登場ですよね?

はい。でも、どこかで見たことがあるような気持ちでいれたので、あまり気にせずにお芝居できたんじゃないかなと思います。

ーー ちなみに、広瀬すずさんとはお会いできたのでしょうか…?

一緒のシーンはなかったのですが、ご挨拶はさせていただくことができました。本当にご挨拶だけだったので、おこがましいですが「なっちゃんだ!」と思いました。

ーー 今回の『なつぞら』スピンオフに出演したことは、川床さんにとって、どんな経験になったんでしょうか?

公英は本当に優しい子ですが、今まで演じてきた役の中で一番気の強い子だったと思います。気の強い役は演じたことがなかったので、新しい体験でもありました。最初はなかなか思い切ることができなかったのですが、テレビで観てきた世界の中に自分も入って、公英として過ごすことが楽しいなと、撮影のたびに毎回感じることができて、すごくよかったなと思います。

ーー いつか、“朝ドラ”本編の方に出演したいという気持ちが強くなったりも…?

はい、朝ドラに出演することは目標ですし、今回のスピンオフというカタチで『なつぞら』の世界に入れて本当に素敵なお仕事に恵まれたな、という思いが強いので、今度は本編に出演できるように頑張っていきたいです。

リアルに高校生役を演じられるというのは、確かに強みだなと思っています。もっと今のうちに演じておきたいですね。
ーー ここからは少し川床さんご自身のお話を聞いていければと思います。福岡出身とのことですが、九州の女性も芯が強いとよく聞きます。そういう自覚はあったりするのでしょうか?

自覚はないです(笑)。すごく周りに流されるタイプだと思っているので、自分で芯が強いと感じたことはないです。だからこそ、強くなりたいなと思うのかなと思います。

ーー これからも女優さんとしてやっていく中で、「こういう役を演じてみたい」といった願望や希望はありますか?

今は自分に近い役を演じさせていただくことが多いので、自分とかけ離れている役どころにも挑戦してみたいなと思います。非日常的な設定の役だったり…心に闇を抱えているキャラクターにも挑戦してみたいです。少しサイコパスっぽいというか。

ーー ひょっとして、SFとか好きですか?

あまり観ないですね…。好きなジャンルは…それこそ“朝ドラ”もそうですが、何気ない日常を描いている作品を多く観ているような気がします。あと、BSプレミアムで放送している昔の朝ドラもよく観ます。今は『おしん』を放送しているのですが、それを観るのが好きです。

ーー では、なぜにサイコパスな役を演じたいんでしょう?

何でしょう…私の年代だと、基本的には明るい性格の役が多いのかなと思うので、心に闇を抱えていたり、サイコパスなキャラクターに少し憧れを抱くのかもしれないですね。

ーー なるほど。でも、10代の今しか演じられない役もたくさんありますよね。

そうなんです。私は地元の福岡の高校に通っているので、リアルに高校生役を演じられるというのは、確かに強みだなと思っています。なので、もっと今のうちに演じておきたいという気持ちもあります。

ーー それこそ、キラキラした青春モノだったり。

そうですね。でも、どんな作品でも出演させていただけるのであれば、どんどん出演したいです(笑)。

ーー ちなみに、同年代にはたくさん才気あふれる女優さんがいますが、気になる存在っていたりしますか?

う〜ん…同年代の女優さんは素敵な方々ばかりなので、誰か1人を挙げるのは難しいですね。憧れの女優さんは芳根京子さんです。大好きなので、一度お会いしたいというか…いつかご一緒したいです。

ーー 芳根さんは幅広い役を演じられる方ですけど、川床さんも…?

はいっ!

ーー 今は学業との両立が大変だろうとは思いますが…。

そうですね、ただ、今は地元で生活する時間も大切にしたいと思っています。オン/オフと言いますか、そういう切り替えも自分の中では大事なものになってきているなと、すごく感じるので、プライベートとお仕事の両立も考えながら、1つずつ丁寧に取り組んでいけたらなと考えています。

ーー じゃあ、来年…高校3年生になってから、進学するのか女優さんに専念するのかを考えるという感じですか?

まだまだ勉強もしたいなという気持ちもあるので、そこに関してはまだ何とも言えなくて。悩んでいるわけではないのですが、考え中です(笑)。

ーー では、川床さん自身のPRもお願いします。珍しい苗字ですけど、本名なんですよね?

本名です。「かわどこ」ではなくて「かわとこ」なので、まず名前を覚えていただいて、存在を知っていただけるように頑張ります。自分の中では自然体でまっすぐなところを強みにしていきたいなと思っているので、そういうところをみなさんに見ていただけるよう、成長していければと思います。

ーー ちなみに公英ちゃんは川床さん自身に近いキャラクターと言えるんでしょうか?

近いと言えば近いと思います。でも、すごく近いというわけでもなくて。お父さんとお母さん、両方のことを心配するのは私自身もたまにあるので、そういうところは共通しているのかもしれないです。

ーー やっぱり、川床さん自身も優しい人なんですね。

そんな…(照れ笑い)。でも、公英ちゃんをきっかけに私のことを知っていただけたら、すごくうれしいです!

スペシャル番組『なつぞら SP 秋の大収穫祭』
11月2日(土)NHK BSプレミアム 19:00~20:59

【進行役】広瀬すず草刈正雄

『とよさんの東京物語』(50分)

【出演】高畑淳子広瀬すず 中川大志 岡田将生 比嘉愛未 貫地谷しほり 安田 顕 仙道敦子 ほか

【あらすじ】90歳のとよ(高畑淳子)は坂場(中川大志)にアニメの老婆の声を頼まれて、単身上京。アニメの録音現場を訪れ、人気声優・土間レミ子(藤本沙紀)に感動し、“声優になりたい”という夢を持つ。だがその裏には「雪月」を後継に任せたい、という理由があった。時に喜び、時にくじけながらもレッスンを重ねていくとよ。チャレンジに年齢は関係ない、幅広い世代にエールと感動を送る物語。『なつぞら』アニメ・声優チームも総出演。

『十勝男児、愛を叫ぶ!』(50分)

【出演】山田裕貴 福地桃子/広瀬すず 松嶋菜々子 藤木直人 清原 翔 北乃きい 音尾琢真 戸次重幸 富田望生 板橋駿谷 中島亜梨沙 川床明日香 坂井真紀 ほか

【あらすじ】「雪月」の若夫婦・夕見子(福地桃子)と雪次郎(山田裕貴)のささいな夫婦ゲンカ。それをきっかけに十勝の男子と女子が大分裂、結局、日頃より妻に頭が上がらない十勝男子が、妻のために愛を語るコンテストを開くことに…。夕見子の父・剛男(藤木直人)が語る妻・富士子(松嶋菜々子)への秘めた思いが明らかになる。
人気が高い十勝の個性派キャラ総出演、FFJ大合唱、笑って泣ける感動必至のハートウォーミングドラマ。

【脚本】池谷雅夫、奥山雄太
【原案】大森寿美男
【音楽】橋本由香利
【主題歌】スピッツ「優しいあの子」
【語り】仙道敦子、音尾琢真
【制作統括】磯 智明、福岡利武
【演出】三室すみれ、土井啓太郎

オフィシャルサイト
https://www.nhk.or.jp/natsuzora/
オフィシャルTwitter
@asadora_nhk
オフィシャルInstagram
@natsuzora_nhk

(c)NHK

川床 明日香
生年月日:2002年7月10日
出身地:福岡県
身長:159.5cm
趣味:読書・ドラマ鑑賞・写真を撮ること
特技:けん玉
2014年、雑誌『ニコラ』(新潮社)第18回ニコラモデルオーディションにてグランプリを受賞後、専属モデルとなり活躍。2019年3月、ニコラモデルを卒業後、本格的に女優活動を開始。
映画『ピア〜まちをつなぐもの〜』(2019年/綾部真弥監督)で長編実写映画へ初出演を飾る。現在放送中のテレビドラマ『俺の話は長い』に凛菜役としてレギュラー出演中。

オフィシャルInstagram
@asuka_tokotoko

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掲載:M-ON! Press