「♪きっと あきらめるわ 今なら 何も なくしたものは ひとつないし」

三浦貴大、夏帆主演のドラマ25「ひとりキャンプで食って寝る」テレビ東京・深夜0時52分~)。ひとりでキャンプを楽しむ「ソロキャンプ」をテーマにした趣味ドラマだ。

「趣味ドラマ」とは筆者の造語で、趣味が「主」、ストーリーが「従」の新しいドラマジャンルのこと。同じドラマ25だった「サ道」もそうだった。今後、恋愛ドラマが減っていく代わりに、この種のドラマが増える予感がする。

夏帆と朝倉あきの不思議な相棒感
先週放送された第2話は、夏帆がメインの回だった。主演は2人だが、なにせ「ひとりキャンプ」なので、三浦貴大は奇数回、夏帆は偶数回に主演するという変則的なスタイルをとっている。今後、2人が交わることはないらしい。

奇数話の主人公・健人(三浦)は缶詰のアレンジ料理を愛する男だったが、偶数話の主人公・七子(夏帆)は山や川に分け入って獲物をゲットし、自ら調理して食べる女だ。オープニングでは、唐揚げにしたカサゴにカシュッとかじりついていた。う、うまそう。

七子は最初からひとりキャンプが好きだったわけではない。そもそも最初は、友人の宏美(朝倉あき)と2人でキャンプにやってきていた。ぶっきらぼうにタメ口で会話する七子と宏美。どんな関係かはわからないが、なんだかルパンと次元のような相棒感がある。

最初は肉を猛烈に食べまくる予定だった2人だが、トラブルに見舞われて肉が食べられなくなり、宏美はあっさりと荷物をまとめて帰ってしまう。これが不思議なことに、空気が悪くなったとか、ケンカになったとか、そういう感じがしない。

宏美は自分の主義と主張を貫いて帰り、七子はそれほど慌てもせずにそのまま残ることになる。人間関係がベタベタしていなくて心地よい。

野生に目覚めた夏帆
いきがかり上、ひとりキャンプをすることになった七子。夜はそのままテントで眠り、朝になるとペットボトルの水をゴクゴクと飲み、「ウェッ」と声をあげながら、そのまま水をかぶって洗顔代わりにする。なんというか、根がワイルドだ。

七子は、なんとなく知り合った近くで釣りをしていた男女(田中隆三、竹村叙子)の手ほどきを受け、釣りにチャレンジ。見事にカサゴを釣り上げる(そのほかにもけっこうな量の魚をわけてもらっていた)。魚を調理する七子に男がかけた言葉がふるっている。

「こういうのはさ、ひとりがいいんだって。ひとりでさ、自分の釣った魚、海見ながら食ってみなよ。酒うめえぞ?」

言葉とは裏腹に、妻らしき女と仲睦まじい男。いろいろ紆余曲折あって、ひとりのわびしさと楽しさを味わいつくした後、今の伴侶とめぐり合ったのだろうか。

七子はカサゴを唐揚げにして、ワイルドにかじりつく。表情になんとも言えない充実感が漂う

その後、迎えに来た宏美とともに地引き網に混じり、網にかかった海の恵みを手にしてテンションが上がりまくる七子。ひとりキャンプの楽しさと、狩猟の興奮に目覚めてしまったようだ。

大貫妙子「いつも通り」の歌詞を読み解く
印象的だったのは、ラジオでかかったシュガー・ベイブの「いつも通り」という曲。2話では、この曲が3回も流れる。

最初はラジオから流れ、キャンプで火の後始末をしているときに七子が一人で口ずさみ、さらにカサゴを食べて楽しそうにしているときに演出として流れる。

シュガー・ベイブはソロデビュー前の山下達郎大貫妙子らが在籍した伝説のポップバンド1973年に結成し、アルバムを1枚残してわずか3年で解散した。「いつも通り」は大貫妙子の作詞作曲で、彼女がボーカルも務めている。

みんなのうた」の「メトロポリタン美術館」などで知られる大貫妙子だが、昨今は世界的に流行しているシティポップの送り手としても注目を集めている。「YOUは何しに日本へ?」に大貫のアナログ盤を探しに来たアメリカ人の熱狂的なファンが登場したこともあった。

東京生まれ東京育ちで「都会」や「街」モチーフにした曲を作ってきた大貫だが、都会的な生活には批判的な目を向けてきた。その名も「都会」という曲では、「その日暮らしはやめて 家に帰ろう 一緒に」と繰り返し歌っている。

「街はいつも通り きっといつも通り にぎやかな人波があふれてる だからひとりで飛び出す」

ここは、にぎやかな街「へ」ひとりで飛び出すのではなく、にぎやかな街「から」ひとりで飛び出す、と解釈したほうが正しいだろう。大貫は次のように語っている。

「どこにいても人は孤独を思うものだと思うし。特に東京のように人が多ければ多いほど、孤独感は増すものです。だから歌に助けられたりもするのでは?」(SINRA 2016年7月1日

大勢の人たちの中にまぎれていたって孤独になることはある。だったら、そこから背を向け、ひとりになることを厭わない。とはいえ、何かをなくした痛みに耐えているわけでもなく、ひとりでいること、孤独でいることだって楽しむことができる。七子はそんな女性のようだ。

今夜放送の第3話は、健人が倒れていた金髪女性(北香那)と出会う。
(大山くまお

作品情報
ドラマ25「ひとりキャンプで食って寝る」
監督:横浜聡子(奇数話)、冨永昌敬(偶数話)
脚本:冨永昌敬、保坂大輔、飯塚花笑
音楽:荘子it(Dos Monos)
出演:三浦貴大、夏帆
主題歌:Yogee New Waves「to the moon
プロデューサー:大和健太郎、滝山直史、横山蘭平
制作:テレビ東京、東京テアトル
※動画配信サービスひかりTV、Paraviで放送1週間前から先行配信
※放送後にTVerで配信中

イラスト/まつもとりえこ