中古マンションを買うにしても、借りるにしても、リノベーションが済んだばかりの部屋に入居できるのは嬉しいものです。
築古マンションの大家・アサクラさんによれば、大家としていちばん大切な仕事は「空室が出た際に古ぼけた内装をいかにリノベーションするか考えること」だといいます。
今回はなんと23年ぶりに空室となったマンションの部屋をフルリノベした様子を紹介してもらいます。どんな苦労があり、どう工夫したのでしょうか。
水まわりは設備一新で狭いながらも清潔に
このお部屋、とにかく水まわりの劣化がすさまじかったのです。この洗面は、まだマシなほう。下は、一昔前の公衆トイレかと思うほど汚れのたまったトイレ。
ホラー映画のセットのような浴室。
とくに浴室の木製ドアは湿気でボロボロに壊れていました。
脱衣所のカーペットはカビだらけでした。
こうして見ると、マンションが建てられた50年前そのままだったのかもしれません。まさに半世紀分の汚れ。
ここまでくると「残すものは残して」というのも難しく、設備は一新しました。費用はかかりますが、家賃アップも見込んで思い切って投資しました。
まずはお風呂。
多くのマンションで採用されているユニットバスに変更。在来工法のお風呂にくらべて漏水のリスクも減り、掃除もラクです。
ユニットバスの設置で洗面はさらに狭くなってしまいましたが、DIYでタイルを貼ったりタオルシェルフを設置したりして、使いやすいように配慮しました。
トイレは脱衣所前にあったドアの向きを変えて、正面から入れるようにしました。
足下のスペースを広くするという狙いに加え、リノベーション後は主に2人暮らしがターゲットになるので、入浴中にトイレが使いづらくなるのを避けました。
キッチンはコンパクトにして洗濯機置場を追加
お次はキッチン。こちらも「ザ・昭和」的な古ぼけたキッチンでした。コンロまわりの汚れがひどく、レンジフードが……
写真で見てもぞっとする汚さです……。当然ながら、キッチンも取り替えることに。
小ぶりながら、おしゃれなガスコンロもついた新型。イケア(IKEA)で購入したキッチン収納ツールを壁面に設置してもらうことで、使いやすくなるよう工夫しました。
キッチンまわりで難しかったのは、洗濯機置き場を新たに設置しなければならなかったこと。
「築古マンションあるある」ですが、うちもかつては洗濯機はベランダに外置きだったので、室内に洗濯機置き場はありませんでした。そこで、今回はキッチンサイズを小さくして冷蔵庫置き場の隣に洗濯パンを設けました。
横幅いっぱいにギリギリではありますが「キッチン、冷蔵庫、洗濯機」がならべて設置できるようになりました。
既存の障子を再利用して和風のリビングに
続いては6畳のリビングです。工事前、キッチンから見るとこんな感じでした。屋上からの雨漏りのせいで、天井の壁紙がベロリと剥がれ落ちたところも。
幸い、障子の枠自体はまったく損傷していなかったので、今回はこれを活かして「和風」なテイストにリノベーションしようと思いつきました。
リノベーション後の様子はこちら。
ナチュラルな木目を基調としたデザインになりました。床はフロアタイル、壁と天井は壁紙なので、高級な素材は一切使っていません。
空間にアクセントをつける狙いで、壁の一部だけを木目にしました。
キッチンからの眺めもだいぶ変わりました。目玉は、きれいに生まれ変わった障子。
汚れを落とし、まっさらな障子紙が貼られ、新品のようなたたずまい。デザイン的な要素だけでなく、断熱効果も期待できそうです。
とはいえ、カーテンを設置したい人もいるはずなので、障子の前にはカーテンレールも設置しました。和室の雰囲気を損なわないようにしたかったので、カーテンボックスに隠すかたちに。
小上がり風の寝室には畳を思わせるフロアタイルを
最後は、リビングに隣接した3畳のサービスルームです。うちのマンションでは、ここを寝室とする人が多いです。
サービスルームにはオーソドックスな押入れが設置されていました。今回は和室のたたずまいを作り出したかったので、この3畳部分だけを一段高くしてもらい、小上がりっぽく変身させてみました。
天井はダークグレーのアクセントカラーで落ち着いた雰囲気に。床に敷いたのは畳ではなく、ビニール繊維で編まれたフロアタイル「ココフロア」(サンゲツ)。
市松貼りにすることで琉球畳のような雰囲気が出ました。畳よりもぐっとお安く、素材がビニールなので掃除も簡単。賃貸にはうってつけの床材だと思いました。
押入れは部屋続きのオープンクローゼットに。建具と中段を取り除き、ロールカーテンにすることで部屋の一部としても使えるようにしました。
うちのマンションでは和室の雰囲気をもった部屋は初めての試みだったので、募集にあたってはやや不安なところもありましたが、時期が良かったこともあり、1週間で入居が決まりました。
マンション経営においては空室が長引くのはもっとも怖い事態なので、すぐに決まったことで家賃のロスが最小限に抑えられてホッとしています。
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