「子どもが言うことを聞かない」「部下が指示に従わない」。家庭においても職場においても、一向に解決されない悩みの種の一つです。「ゲームばっかりしていないで、本でも読んだら! さもないと、いい学校に入れないよ!」とまくしたてればまくしたてるほど、聞く耳を持たなくなるのが関の山です。「うるさいなあ!」と口答えされればまだよい方で、たいていは右から左へ聞き流されてしまいます。

間を置き、子どもの理解を促す

 子どもに言うことを聞かせることができるようになる、妙案はあるのでしょうか。子どもに「ああ、そうだな」「そうかもしれないな」と思わせたり、そもそも、話を聞こうと思わせたり、話の内容に期待を持たせる気持ちにさせる方法があれば、親子のコミュニケーションは格段にスムーズにいくようになります。

 このような話をすると、「そんなうまい話があるはずがない」「そんな方法があるのなら、親子の断絶はとうの昔に解消している」という声が聞こえてくるのですが、実は、あるのです。それも難しいことを実施したり、言ったりしなくてもよく、長い時間もかからない、たった数秒でできることなのです。この方法はビジネスの場面で、リーダーがメンバーを巻き込むためにも活用されている方法で、効果が実証されています。

 その方法とは、1フレーズ話すたびに数秒「間を置く」という方法です。それだけかと思う読者もいると思いますが、それだけです。言っている内容を変えなくてもよいのかと思う人もいると思いますが、変えなくても効果があります。頭の中で、「こういう言い方をした方がよいだろうか」「ああいう言い方の方がよいだろうか」とあれこれ思い悩む必要もない方法です。話す内容を一言も変える必要はありません。

 先ほどの例で、「ゲームばっかりしていないで、本でも読んだら!」と話したら、そこで話をやめて数秒、間を置くのです。「さもないと、いい学校に入れないよ!」と話したら、そこで話をやめて数秒、間を置くのです。それだけ。これら2つのフレーズを一気にまくしたてるように話をするから、子どもの頭の中に、その内容が入らないのです。数秒、間を置きさえすれば、「そのとおりだ」と思うか「そんなはずはない」と思うか、いずれにせよ、理解することはできるようになるのです。

「子どもが言うことを聞かない」ケースの大半は、そもそも親が次から次へと言いたいことをまくしたてるので、子どもが理解しないうちに次の話になり、いつまでたっても理解できないことに原因があるのです。間を置いて、「本でも読んだら!」と言っているのだな、「いい学校に入れないよ!」と言っているのだなと、少なくとも理解を促すことが、親子のコミュニケーションを改善する第一歩です。

「理解を促す間」「期待を促す間」

「1フレーズ話したら、間を置く」というこの間の置き方を筆者は、そのフレーズの理解を促すという意味で「理解を促す間」と呼んでいます。

「理解を促す間」は、句読点の句点(。)で間を置く方法です。これができるようになったら、今度は、句読点の読点(、)で間を置くことがおすすめです。「ゲームばっかりしていないで、」と話したら、ここで数秒、間を置くのです。数秒、間を置いてから、「本でも読んだら!」とつなげます。「さもないと、」と話したら、次の話をすぐに繰り出さないで数秒沈黙のまま、間をつくるのです。

 そうすることで、「ゲームばっかりしていないで、どうしろと言うんだろう」という気持ちを子ども側に持たせやすくなります。「さもないと、どうなると言うんだろう」というように、次の話に対して、子どもの側に想像させる時間的猶予を与えやすくなるのです。読点(、)で間をつくると、相手に次の話を想像させやすくなり、次の話に対する期待度を高めることができます。この間の置き方を筆者は、次のフレーズに期待を持たせるという意味で「期待を促す間」と呼んでいます。

「理解を促す間」「期待を促す間」は、コミュニケーションを改善する特効薬といえる方法です。ぜひ試してみてください。

モチベーションファクター代表取締役 山口博

子どもに言うことを聞かせるには?