Credit: Rensselaer Polytechnic Institute/YouTube

Point

■血管付きの生きた皮膚を3Dプリントで作る方法が開発された

■内皮細胞や周皮細胞などを動物コラーゲンと組み合わせることで、元の皮膚と人工皮膚が接続し、血流が生まれる

■運ばれてくる血液と栄養分により、人工皮膚は剥がれることなく元来の皮膚と一体化する

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現在普及している医療用バンドエイドは、傷の修復を促す効果がありますが、決して皮膚と一体化することなく、最終的には剥がれます。これは、人工皮膚に血管が無いためです。

そこで今回、米レンセラー工科大学と米イェール大学の共同チームが、血管付きの生きた皮膚を3Dプリントで作る方法を開発しました。論文は、雑誌「Tissue Engineering Part A」に掲載されています。

3D bioprinting of a vascularized and perfusable skin graft using human keratinocytes, (…)
https://www.liebertpub.com/doi/10.1089/ten.TEA.2019.0201

血管同士が接続することで元来の皮膚と一体化

研究を率いたレンセラー工科大学のPankaj Karande氏は、数年前に発表した論文の中で、採取した2種類の生きたヒト細胞を用いて「生物学的インク」を作り、それらを皮膚様構造にプリントできることを示しました。

Karande氏らは今回、血管の内部に存在するヒトの内皮細胞や、それを包み込んでいる周皮細胞といった重要な成分を、皮膚によく見られる動物コラーゲンやその他の細胞と組み合わせることにより、細胞同士のコミュニケーションが生まれ、数週間以内に生物学的に有効な血管を形成することを証明しました。

Credit: Rensselaer Polytechnic Institute/YouTube

イェール大学の研究チームがこの人工皮膚をマウスに移植したところ、人工皮膚の血管はマウス自身の血管とコミュニケーションを取り、接続するようになりました。人工皮膚は、血管を通して運ばれてくる血液と栄養分のお陰で、剥がれることなく元来の皮膚と一体化して生存を続けたのです。

オーダーメイド治療における3Dバイオプリントの可能性

医療現場での実用化には、CRISPRなどの技術を用いてドナー細胞を編集し、血管同士が合体し、患者の身体に受け入れられるものにすることが必要です。Karande氏は、現在はその段階まで到達していないものの、今回の研究がその第一歩であることは間違いないと説明しています。

Credit: Rensselaer Polytechnic Institute/Yale University/YouTube

特定の症状や患者の個性に合わせた治療を行うオーダーメイド医療において、3Dバイオプリントが秘める可能性は無限大とも言えます。

神経や血管の端の損失を伴う火傷の治療に限らず、傷の修復に時間が掛かる糖尿病や、床擦れによる皮膚損傷の治療などへの活用が期待されています。

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reference: medicalxpress / written by まりえってぃ
血管付きの「生きた皮膚」を3Dプリントで作成成功