2019年のインターハイ。なぎなた競技の個人・団体ともに優勝という素晴らしい結果を残したのは、大会開催地である沖縄県の首里高等学校でした。しかしその裏には地元開催だからこそのプレッシャーや感動など、さまざまな思いがあったようです。個人でも優勝し、団体メンバーの大将としても活躍した、キャプテンで3年の山城り子さんと、顧問の大城エリカ先生にお話を伺いました。

1年生の頃から沖縄で行われるインターハイへの思いを高めてきた

【山城選手インタビュー】

―― 優勝した感想をお聞かせください。

地元開催ということもあって、結果を意識するあまり、プレッシャーを感じて気持ちが不安定になることもありました。でも両親やチームメイト・先生方に気持ちを盛り上げてもらって、優勝することができました。

今回の大会を通して、周囲の方にたくさん支えてもらっているんだなと改めて実感することができました。

―― 優勝できた一番の要因は何だと思いますか?

一番は、沖縄開催のインターハイにかける気持ちが誰よりも強かったことだと思います。1年生・2年生で参加したインターハイで結果を残した時も、「これで沖縄開催のインターハイにつながる結果になったね」とよく話していました。

苦しくも乗り越えられたからこそ、喜びが倍増した優勝

―― 一番苦しかった試合はありますか?

インターハイで当たった選手は強い人ばかりでした。特に2回戦では、春の選抜大会で優勝した近畿大学附属豊岡高校の阿部選手と当たったり、「山場はぶっちゃけ全員」という強豪ぞろいのトーナメントでした。
阿部選手が優勝した春の選抜大会で、自分は1回戦敗退でした。その分強いという先入観を持ってしまって、戦う前から不安な気持ちになったりもしました。でもこれまで「勝つための練習」をしてきたんだと思い出し、絶対勝てると自信を持って試合に臨みました。


―― 勝利のために一番努力したことは何ですか?

技術面では、確実に一本を取れる「打突」方法を練習しました。なぎなたは、打つだけではダメで、3人の審判全員に「一本」と判定してもらう必要があります。誰が見ても一本だと判定してもらえる打突になるよう、何百本・何千本と打ち込み練習をしてきました。

日頃の生活面では、キャプテンとして周囲が見えていないといけないので、周囲に気を配ったり、部員のみんなに声をかけたり、ゴミを拾ったりと細かな部分にも意識するようにしました。


―― 今回のインターハイ全体に対する感想を教えてください。

全国のみんなに「首里高校・なぎなた部」という名前を記憶に残せたことが、すごくうれしかったです。そのために、自分はもちろん、チーム全体でも頑張ってこられたと思います。3年生になって悩む時期もたくさんあって、「部活をやめたい」と言い出す人もいました。でも「チームで同じ目標に向かって頑張ってきたんだから」と声を掛け合って、続けてきました。インターハイの結果はもちろんうれしいですが、そこに至る過程を、苦しくも乗り越えられたという達成感が大きかったです。

また今回は個人・団体で首里高校、演技は沖縄県の知念高校と全ての種目で沖縄県が優勝できました。高校1年生の時から沖縄県全体で一緒に強化してきたので、全体で優勝できたことはうれしかったし、安心しました。

地元開催だからこそ大きかった、プレッシャーと喜び

【顧問・大城エリカ先生 インタビュー】

―― 優勝後、選手にどのような言葉をかけられましたか?

地元開催で注目されている部分もあり、気持ちが動揺してしまう部分もあったと思います。最後まで自分の試合に集中して、優勝したときは、「おめでとう」と声を掛けました。本人が抱えていたいろいろな思いを知っているからこそ、達成感のようなものを感じましたね。

大会中に不安そうにしている場面もありましたが、「自分の持ち味を出せれば優勝できる力はあるし、弱気になる必要はない」と声を掛けました。注目が集まって気が散ってしまう部分もあったかなと思うので、「一切気にせず、のびのび自分らしく戦えばいいんだよ」と話したと思います。

地元開催に対するプレッシャーは他の大会とは比べものにならないほどでした。負けるわけにはいかないし、周囲の期待にも応えたい……。いろいろな思いを背負って試合するという状態だったので、とても苦しかったと思いますが、その分喜びも大きかったと思います。良い大会を経験させてもらいました。

―― 日頃の練習ではどのようなことに注意して指導されていましたか?

試合の中では、一瞬のチャンスをいかにものにするかが大事だと思っていますし、そうそうチャンスがあるものでもありません。そういう場面で出す打突の確実性が大切になってくるので、打突の質を上げるための練習はかなり時間をかけてやってきたと思います。
道場を4つの部活で交代して使っていることもあり、平日の練習で道場を使えるのは大体75分程度。短い時間の中で集中して練習してきました。


―― 一言で表現するなら、山城さんはどのような選手だと思われますか?

負けん気が強くて、ストイックな選手。練習も力を抜かず、自分が納得するまでやり切る力は十分持っています。「負ける」「弱い」「弱虫」と言われるのが嫌いで、試合を見ていても、決して自分から引いたりすることはありません。相手にも自分にもひるまず挑戦していく選手だと思います。

キャプテンとしてもいいリーダーで、私もすごく助けてもらいました。自分が嫌な立場になるかもしれなくても、部員に対して自分の言葉で積極的に発言していく。チームをまとめる力がすごくあって、とても頼れるキャプテンですね。

団体戦では最初、彼女が持っているモチベーションと、周りのモチベーションに温度差がありました。でも時間をかけてギリギリまで引き上げることができたからこそ、団体戦でも優勝できたんだと思います。


―― 今後、優勝した経験をどのように生かしてほしいと思われますか?

なぎなたを通じて得た達成感や、学んだ努力の大切さなどは自信につながると思います。そしてそれらは新たな目標に変わっていくときにも、きっと力になるはずです。これからもいろいろなことに挑戦するときにも、なぎなたを通じて培ったことを大切に、新しい目標や困難を乗り越えて、新たな達成感を得てもらいたいですね。



山城さんがなぎなたを知ったのは、小学生の頃に読んだ本がきっかけ。その本の主人公はインターハイで優勝を勝ち取ったそうですが、ご自身はそれ以上に、個人・団体共に優勝という快挙を成し遂げました。
地元開催というプレッシャーに打ち勝ち、家族やチームメイト・友人らと最大限の喜びを分かち合ったその経験は、これからの将来にも必ず生きてくることでしょう。


profile沖縄県立首里高等学校 なぎなた部
顧問 大城エリカ先生
キャプテン 山城り子(3年)