
大阪市天王寺区にある清風高等学校は、世界で活躍する体操選手を数多く輩出してきた体操競技の名門校です。2019年に開催されたインターハイでは、団体では惜しくも2位となったものの、同校の北園丈流君(2年)が個人総合で見事優勝を果たしました。今回は監督の梅本英貴先生とともに、インターハイについてのお話はもちろん、来年開催される国際大会への熱い思いも伺いました。
インターハイは個人ではなく、仲間たちとのチーム戦
――【北園丈流選手インタビュー】
―― 優勝した感想をお聞かせください。
個人総合では優勝することができましたが、一番の目標は団体優勝だったので、うれしいけれど少し悔しいという思いがあります。チームのみんなも悔しがっていましたが、インターハイの後には全日本ジュニアが控えていたので、そこでリベンジしようとみんなに声をかけました。
―― 優勝できた一番の要因は何だと思いますか?
まずは6種目、ノーミスでやれたことが一番です。さらに着地など細かいところまで意識して、練習の成果がしっかり出せたので、それが優勝につながったのではないかと思います。また、6月に個人で出場した世界ジュニアでは勝ちきれなかったのですが、その直後のインターハイに向けて気持ちを切り替えられたのは、チームメイトみんなのおかげだと思っています。インターハイは僕個人の大会ではなく、あくまでもチーム戦。みんなと一緒にこれまで練習してきたから、辛いことも乗り越えられたし、チームメイトには感謝しています。
東京大会出場という目標に向かって一直線!

―― 一番苦しかった場面はありますか?
決勝はあん馬からのスタートで、最初は緊張やプレッシャーもありましたが、そこをうまく乗り越えられたので、その後の種目は流れよくいけたと思います。でも5種目の鉄棒の前は、やはり怖さも感じました。鉄棒は離れ技もたくさんありますし、絶対に決めなければならないと思うと緊張して……。でも、これまでに何回も繰り返してきた練習を思い出して、「今は緊張しているけど大丈夫!」と自分を信じてやり抜くことができました。
―― 勝利のために一番努力したことは何ですか?
去年のインターハイではあん馬で落下してしまったのですが、そこからの1年間は、「絶対に最後までやりきる。そして、どんなことがあっても諦めない」という強い気持ちでやってきました。そうした去年の反省を生かして、今年はしっかりできたと思います。ただ団体では負けて悔しい思いをしたので、これからもっとチームで高め合って、みんなで強くなっていきたいと思います。
―― 今回のインターハイ全体に関する感想を教えてください。
今回のインターハイは、船橋市立船橋高校(以下、市船)の橋本大輝くんと自分との勝負だと周りから言われていて、「市船と清風のエース対決」と見られていました。そんな状況のなかで予選・決勝ともに勝てたことは、自分の自信になりましたし、もっと上を目指そうと思えるきっかけにもなりました。自分の中で一つ吹っ切れたというか、壁を登れた試合になったと思います。
そして、来年の国際大会まであと少し。その舞台に立つことは自分が体操をはじめたときからの夢であり、小学5年生の時に東京招致が決定してからは、より一層はっきりとした目標となりました。子どもの頃からずっと抱いてきた夢を叶えて、さらに個人総合・団体で優勝するという目標を実現できるよう、まずはしっかり自分の力を出し切って代表入りを目指したいと思います。
北園選手には、夢を追いかける純粋なエネルギーがある

【梅本英貴監督インタビュー】
―― 優勝後、選手にどのような言葉をかけられましたか?
北園は個人総合で優勝しましたが、インターハイは団体優勝に全精力を注いできたので、正直なところ本人も負けたという悔しさが大きいのではないかと思います。北園を含む22名の部員たちに対しては、ここまでやってきた思いや練習量を考えると、本当にかける言葉もなく、監督としては悔しさと申し訳なさしかありませんでした。
―― 日頃の練習では、どのようなことに注意して指導されていましたか?
昨年のインターハイは市船と清風が同点での団体優勝となりましたが、その次に行われた全日本ジュニアでは、0.05の極僅差で負けています。体操競技の点数における0.1は「着地一歩分の差」と言われますから、0.05の差というのは、もう本当にちょっとした印象や細かい点になります。だからこの1年間は「0.05が何で変わるのか」ということを部員たちに言い続けてきました。
また北園に関しては来年の東京大会を見据えているので、インターハイもその過程の一つとなりますが、これに関しては「個人ではなく仲間と一緒にやる」ということに重きをおいて、本人もチームの優勝に貢献するという気持ちで取り組んでいたと思います。
―― 一言で表現するなら、どのような選手だと思われますか?
北園は、来年の国際大会に向けて心から純粋に夢を追いかけています。その思いが周りの環境を動かしているところがあって、ユース大会や世界ジュニア、ナショナル合宿の特別強化選手になれたこともそうですし、学校も最大限の支援をしてくださっていて、それはある種、彼自身が「もっている」ところだと思います。その目標に向けて、当然ながら周囲の要求は高くなりますが、本人は苦しみながらも一歩一歩、着実に進んでいます。とはいえまだ高校2年生ですから、心の成長や体の成長、さまざまなバランスを崩してはまた立て直しての繰り返しです。これまで培ってきたことやその結果と、17歳というギャップ。その差を埋めたり、気持ちをコントロールしたりというのが私の為すべきことであり、正直に言えば一番難しいところでもあります。
―― 今後、優勝した経験をどのように生かしてほしいと思われますか?
去年は全日本ジュニアとユース大会で立て続けに優勝し、今年6月に開催された世界ジュニアでは、誰もが「北園が優勝するだろう」という状況のなか、残念ながら負けてしまいました。その直後に挑んだ大会がインターハイだったわけですが、そこで気持ちを立て直して勝ちきれたということは、北園にとってまた一つの糧になったと思います。目標とする来年に向けて、モチベーションを高めて最大値でその時を迎えられるよう願っています。
17歳の高校生ながら、日本のみならず国際大会でも活躍してきた北園選手。しかしインターハイでは「自分個人ではなく、チームの一員として仲間のみんなと戦う」という一貫した姿勢に胸を打たれました。来年の東京という夢の舞台は、もうすぐそこ。小学生の頃から一途に思い続けてきた夢が叶うよう、そして世界の舞台でその実力を存分に発揮できるよう、私たちも心から応援しています!
【profile】清風高等学校 体操部
梅本英貴 監督
北園丈流(2年)

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