日韓貿易対立が勃発して4か月。日韓双方の企業が共倒れになりそうな消耗戦になっている。

そんななか、韓国政府と与党・共に民主党シンクタンクが、相次いで「韓日貿易葛藤100日の総括」なる報告書を発表した。

両者とも「韓国も多少被害はあったが、日本のほうが被害甚大で、韓国の勝ち」という自画自賛の内容だった。いったい、どういうことか。韓国紙で読み解く。

新車を「20%超割引出血セール」したホンダと日産

不買運動がいっこうに収まらず、韓国への日本車の輸出は泥沼状態が続いている。ハンギョレ(2019年11月6日付)「『不買運動の影響』日本車4か月連続急減、10月の販売58%ダウン」がこう伝えている。

「日本の輸出規制措置に抗議する市民不買運動が続き、日本車の販売量は4か月連続で急減している。11月5日に韓国輸入自動車協会が発表した10月輸入乗用車登録の現状によると、10月の日本車の新規登録は1977台で、前年同期に比べて58.4%減少した。8月(56.9%減)と9月(59.8%減)と急減傾向が続いている。これにより10月の輸入車市場における日本車のシェアは8.9%に落ちた。1年前の半分の水準だ」

専門家らは、両国の対立が長期化した場合、日本車メーカーの打撃はもっと拡大し続けると見ている。ブランド別では、レクサス(編集部注:トヨタの高級車だが、韓国では別ブランド)の販売量(456台)が1年前に比べて77.0%急減した。トヨタ(408台)と日産(139台)もそれぞれ69.6%と65.7%減少したが、ホンダ(806台)は8.4%減少にとどまり、インフィニティ(編集部注:日産の高級ブランド)は逆に12.0%増加した。ホンダの落ち込み幅が少なく、インフィニティが伸びたのは、両ブランドとも新車を20%以上値引きする破格の「大出血プロモーション・セール」を行ったからだった。

特に、不買運動の集中攻撃を受けているカジュアル衣料品ユニクロも苦戦が続いている。新店舗のオープンが延期に追い込まれたのだ。

聯合ニュース11月5日付)「韓国・釜山(プサン)のユニクロ新店舗がオープン延期、不買運動など影響」が、こう伝える。

日本製品不買運動のターゲットとなったユニクロが、釜山での新店舗オープンをめぐり戦々恐々としている。10月末に釜山市東区にオープン予定だった店舗が同12月に開店を延期した。釜山14店舗目となる同店は2階建てで、ユニクロの単独店舗だった。

延期に最も大きな影響を与えたのは、商売への打撃を懸念する近隣在来市場の商業者の反発と相変わらず続く「ユニクロ不買運動」だ。10月1日に世界中に公開した人気商品フリースの25周年をアピールするCM動画が「慰安婦をからかっている」と批判され、いまだに主軸店舗の前では不買を呼び掛ける「1人デモ」が続いているのだ=メイン画像参照オープンを強行すれば、火に油を注ぐ結果になりかねない。

「日本旅行ボイコット」した人々は他国に旅行しない

しかし、日本企業側だけが一方的に被害を受けているわけではない。韓国企業も影響を受けている。特に打撃が大きいのが、日本への旅行客が激減したあおりを受けた旅行会社と航空会社だ。

朝鮮日報(11月5日付)「他地域へ吸収されない日本旅行需要、韓国旅行会社の業績が急激に悪化」が悲惨な状況をこう伝えている。

「韓国で『日本旅行ボイコット運動』が3か月以上続いている。大手旅行会社ハナツアー10月日本旅行需要は前年同月を82.3%下回った。減少幅は8月(76.9%減)、9月(75.4%減)よりも拡大した。時間がたっても回復の兆しがなかなか見えない。モドゥツアーの日本商品の販売も10月は91.9%も落ち込んだ」

状況が深刻なのは、単純に日本への旅行客が減少したのにとどまらないことだ。その減少分を中国や台湾、ベトナム、タイなどのほかの地域の旅行需要に振り替えればいいのだが、日本への旅行需要が他地域に吸収することができず、旅行会社の業績が急激に破たんに向かっている。日本旅行を楽しんでいた人々は、ほかの国に行かず、旅行そのものをやめてしまったのだ。朝鮮日報はこう続ける。

「業界関係者は『日本旅行の代替旅行先はないという業界内での話が証明された。飛行時間が短く、口に合う食べ物、快適な環境を理由に日本を選ぶ旅行客は、現在のムードのせいで旅行を断念しても、他地域への旅行には出かけない』と話した。別の関係者は『旅行業界では、日本旅行ボイコット運動で最悪の状況を迎えた。通貨危機、2008年の世界的な金融危機に続き、3番目の危機が訪れた』と指摘した」

日本旅行ボイコット運動は、韓国の航空会社にも大打撃を与えている。格安航空券の日韓往復便がたった1000円という衝撃的な値崩れ現象を起こしているのだ。格安旅行サイトの「ena(イーナ)」や「エアトリ」を見ると、今年11月から来年2月にかけて、大阪―ソウル間の往復便チケットが「最安1000円」の空席が目白押しだ=下の写真参照。ただし、利用する際はチケット代とは別に燃料代や空港利用料などが必要だから、もちろん1000札1枚だけで往復できるわけではない。

「実質的な被害は日本のほうが大きいから、判定負けだ」

「日韓経済戦争」が始まってから100日の節目を超えたということで、最近、文在寅ムン・ジェイン)政権と与党・共に民主党側は、相次いで「韓日貿易葛藤100日を総括する報告書」を発表した。これほど、韓国企業側にも被害を与えているのに、両方とも「韓国が勝った」という自画自賛の内容に終始している。

まず、与党・共に民主党の報告書は――。中央日報(10月23日付)「韓国民主研究院『韓日の貿易葛藤100日...事実上日本の判定負け』」がこう伝える。

「共に民主党シンクタンクである民主研究院は10月23日、韓日の貿易葛藤100日目を迎え、これまでの状況を点検した結果、『事実上、日本の判定負け』と評価した。チェ・ファンソク民主研究院研究委員は記者会見で『両国の貿易紛争の中間評価は事実上、韓国の判定勝ち』とし、『主要海外機関は韓国経済が深刻な水準の打撃は受けていないと評価した』と明らかにした」

チェ研究委員によると、輸出・生産・観光関連統計の主要な経済指標は「輸出規制が日本経済にブーメランとして作用したことを示唆している」という。最初は韓国の中小企業への影響を心配したが、対日本輸出実績は化粧品、電子応用機器品目などを中心に、この3カ月連続で上昇し、緩やかな増加傾向を維持しているという。

また、日本の輸出規制3品目についても、チェ研究委員は「国内企業の実質的な生産に支障が発生した事例は皆無だ。国内企業は早々と米国、シンガポール、台湾などに部品調達のめどをつけたため、必要な在庫を確保している。サムスン電子、SKハイニックス、LGディスプレーの3大企業の売上高の予測値は輸出規制以前と同じか、むしろ増加している」と胸を張った。

威勢のいい報告書の行間には......

中央日報はこう結んでいる。

「一方、輸出規制により、これまで韓国に部品を輸出していた日本企業の業績悪化の憂慮が徐々に浮き彫りになった。実際、ほとんどの素材・部品・機器品目で、日本の輸出減少幅は韓国に比べて3~4倍以上大きかった」

だから、「韓国の判定勝ち」というのだが、「判定」する審判は誰なのだろうか。

一方、韓国政府機関の報告も似たような結論を出している。聯合ニュース10月30日付)「日本の輸出規制強化『経済への影響は限定的』=韓国政府系機関」がこう伝える。

「韓国政府系シンクタンクの対外経済政策研究院(KIEP)は10月30日、日本の対韓輸出規制強化による影響と今後の対応をまとめた報告書を公表した。当初は、韓国経済に大きな打撃を与えるとの懸念が強かったが、100日以上が過ぎた現在も、経済への影響は限定的だと分析。逆に、韓国で起きた不買運動などで日本の関連業種が大きな打撃を受けたと指摘した」

影響が大きいと見込まれていた高純度のフッ化水素は、韓国企業が確保した在庫、国産化を含めた仕入れ先の多角化により、まだ輸出規制の大きな影響は出ていない。フッ化ポリイミドも、日本企業が生産するのは素材そのものではなく素材の材料となる物質であるため、やはり影響はわずかだ。レジストは日本企業の海外工場、台湾などから調達しているから影響はない。

「こうしたことから、現段階で韓国企業の生産や株価に与える影響は限定的で、むしろ不買運動などで日本側が打撃を受けている。とりわけ衣料品、ビール自動車などの業種で日本企業の売上高が急減しており、韓国事業からの撤退を決めた企業もある。また、韓国から日本へ旅行客が急減したため、沖縄など日本の自治体は、観光関連業者への緊急資金支援といった対策に追われている」

報告書はあわせて、仮に日本による輸出規制で韓国の半導体生産が1割減少した場合でも、国内総生産は約0.32~0.38%減少し、輸出は約0.35~0.5%減るだけだという試算も示した。「たいした影響ではない」というわけだが、念のためだろうか、こう結んでいる。

「韓日のあつれきが長期化すれば、東アジア全体の経済にマイナス影響を与えるため、あつれき解消に向けた方策を整える必要がある。また、政府は日本の措置が長期化する場合に備え、素材・部品・装備産業の国産化と供給網の安定を通じた一層の経済体質改善を図るべきだ」

威勢のいい報告書の行間に危機感があふれている気がしないでもないが......。

(福田和郎)

大阪―ソウル往復便1000円のチケット(格安旅行サイト「エアトリ」より)