0_e

Far Eastern Federal University

 自然災害が頻発し、テロが横行する世の中では、建物に使われるコンクリートは強くなければならない。

 しかし強さとは、必ずしも力任せに抵抗する硬さを意味しているわけではなく、しなやかな柔軟さであることだってある。

 ロシア、極東連邦大学軍事研究センターの研究グループが、そんなゴムのような柔軟性を持つコンクリートを開発したそうだ。

 それは従来のコンクリートよりも6~9倍もヒビ割れに強いのだという。

―あわせて読みたい―

銃弾が当たった瞬間、ダイヤモンドより硬くなる。驚異の素材「グラフェン」を2枚重ねた「ジアメン」で高い防弾効果
自律的に代謝しながら成長する。「生きる機械」となるDNA生体素材がついに誕生(米研究)
弾丸が木っ端微塵に砕け散る。軽量の発泡素材が開発される(米研究)
「なお、この素材は自動的に消滅する」任務終了直後に蒸発するスパイ大作戦みたいな新素材が開発される(米研究)
「ベンタブラック」よりもさらに黒い。世界一真っ黒の記録を更新した素材が偶然の発見により生み出される(米研究)

衝撃を反発するゴムみたいなコンクリート

 新型コンクリートは「ゴム・エフェクト」というダイナミックな粘性を備えており、ゴムのようにぐんにゃりと縮み、バネのように反発することで、衝撃が加わってもひび割れることがない。

 その秘訣はコンクリートの4割まで混ぜられるもみ殻の灰や粉砕した珪砂といった廃棄物だ。

 廃棄物を混ぜることで獲得された優れた耐衝撃性能のおかげで、テロリストなどに銃弾を撃ち込まれたとしても簡単に砕け散ったりはしない。それだけなく、地震や津波のような災害に対しても有効である。

 また自己密閉する性質があるので、自らの反発力で高い接着性を発揮してくれる。このことは、地下建築といった複雑な構造物にも使うことができるということだ。

 これだけの性能を発揮しながらも、4割まで廃棄物を混ぜるために、使うセメントが少なくて済む。そのため、ロシアの標準規格であるGOST規格のものに比べてコスト面でも有利であるという。

1_e0

Far Eastern Federal University

ヒビ割れに強く低コスト。テロや災害対策に有用


 「コンクリートは最初のヒビ割れが入るまでできるだけ長く持ち堪えられることが重要です。コンクリート製の構造はヒビが入ると劣化が急速に進みますからね」とローマン・フェディウク教授は話す。

 「今日、世界は銃弾や飛行機の衝突から構造を守れる、対テロを念頭においた安全性を備えた施設の開発に取り組んでいます。私たちは独自の視点からこの問題に取り組み、耐衝突素材を開発しました。」

 地震や津波、洪水、干ばつなど、自然災害の多い国でもコンクリートのヒビ割れは問題になっている。柔軟性の高く、コストも抑えられるこの新素材コンクリートに期待が寄せられている。

 フェディウク教授の次の目標は、防放射線効果のあるコンクリートを開発することだそうだ。

 この研究は『Inorganic Materials: Applied Research』(10月4日付)に掲載された。

References:Concrete with improved impact endurance for defense structures developed at FEFU | EurekAlert! Science News/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52284383.html
 

こちらもオススメ!

サイエンステクノロジーについての記事―

動物でも光合成ができる可能性が。血管に藻類を注入することで細胞に酸素を供給できることが判明(ドイツ研究)
植物の光合成をモデルにした「人工葉」 太陽の光で二酸化炭素を酸素に変える技術
血管を備えた「生きた皮膚」を3Dプリンターで作成することに成功(米研究)
うんちっちの写真を撮って科学に貢献。健康状態を簡単に把握できるAI(人工知能)開発プロジェクト
ついに嗅覚までも!分子構造を解析してニオイを嗅ぎ分けてしまう人工知能(AI)をGoogleが開発

―知るの紹介記事―

日本独特のユニークさって何?海外旅行者が投稿した22枚の写真
動物でも光合成ができる可能性が。血管に藻類を注入することで細胞に酸素を供給できることが判明(ドイツ研究)
「魔法使いの岩」と名付けられたアリゾナの巨岩、魔法のように消え、魔法のように現れるミステリー(アメリカ)
人生最悪の記憶を本のページをめくるように消し去る薬剤の開発に取り組んでいる研究者たち(カナダ)
植物の光合成をモデルにした「人工葉」 太陽の光で二酸化炭素を酸素に変える技術
銃弾で撃たれても砕けない、ゴムのようなコンクリートが開発される(ロシア研究)