航空自衛隊唯一の偵察機RF-4E/EJ、通称「レコンファントム」は、2019年度で運用が終了します。世界的にも数を減らしている希少なファントム派生型にとって最後の「百里基地航空祭」には特別塗装機が登場、海外からも注目を集めています。

さらば「レコンファントム」!

茨城県小美玉市にある航空自衛隊百里基地は、2019年12月1日(日)に「百里基地航空祭」を開催します。基地を一般開放し、各種航空機の展示を行う予定で、今回は特に「ファントムII」戦闘機の偵察型、RF-4E/EJ偵察機が見納めということで注目を集めそうです。

百里基地は戦闘機部隊のほか、航空自衛隊唯一の偵察機専門飛行隊である第501飛行隊が配置されており、同隊が運用するRF-4E/EJ偵察機の展示飛行は「百里基地航空祭」の名物となっています。しかしこの第501飛行隊は、2019年度末で廃止されることが決まっており、同時にRF-4E/EJも退役になります。そのため同機が百里基地航空祭で展示されるのは、これが最後になる予定です。

RF-4E/EJは上述のように、アメリカ製F-4「ファントムII」戦闘機の偵察型で、そこから非公式に「レコン(偵察の意)ファントム」と呼ばれることもあります。また航空自衛隊の公式WEBサイトを含めてRF-4E/EJと記されるのをしばしば目にしますが、これはRF-4EとRF-4EJという別々の機体をひとくくりにしたものです。

RF-4EとRF-4EJの2機種、なにが違うかというと、前者は最初から偵察機としてアメリカで生産されたものであるのに対し、後者は当初、戦闘機として三菱重工でライセンス生産されたF-4EJ「ファントムII」のうち、余剰化した機体を後年、偵察機に転用したものであるという点です。

そのため、アメリカ製のRF-4Eは非武装なのに対し、元々戦闘機だった日本製のRF-4EJは機首に20mmバルカン砲を装備し、サイドワインダー空対空ミサイルも運用できます。つまり、前者は敵に会ったら逃げるしかありませんが、後者は実弾を積んでいれば自衛戦闘が可能というわけです。この機首に設けられたバルカン砲の有無で、両者は容易に見分けられます。

任務の増加に合わせて誕生したRF-4EJと青色迷彩

この「レコンファントム」、最初に日本が導入したのはアメリカ製のRF-4Eでした。14機が輸入され、やがて墜落や任務増加などで機数が足りなくなり、余剰のF-4EJを転用したRF-4EJが15機作られます。

最初から偵察機として製造されたRF-4Eは、各種カメラや偵察装置を機内に収めるため、燃料タンクを機体下部と左右両翼下に最大3本吊り下げられます。一方、戦闘機転用のRF-4EJは、各種カメラや電子装置を「ポッド」と呼ばれる細長い筒状の容器に入れ、これを機体に吊り下げて任務に就きます。その際、燃料タンクは左右の翼下のみとなり、当然ながらRF-4Eよりも飛行距離や飛行時間は短くなります。

こうした差異のため、両者は任務に応じて使い分けされています。迷彩塗装も、かつては陸地の上を飛ぶことを想定して緑色主体の迷彩のみが施されていましたが、領海警備や離島防衛などでの洋上飛行も想定し、近年、RF-4Eには青色主体の迷彩塗装が登場しました。ちなみに、緑色主体の迷彩もRF-4EとRF-4EJでは配色に違いがあるため、見比べが可能です。

間近で見られる、世界的激レアな現役ファントム

実は現役のRF-4Eは世界的に見て非常にレアです。なぜなら、RF-4Eというタイプは輸出専用機でアメリカ本国では採用されておらず、輸出国もドイツイランイスラエル、日本、ギリシャトルコの5か国だけです。

このうち、2019年現在もRF-4Eを運用するのはイラン、日本、トルコの3か国のみですが、イラントルコは軍事基地にカメラを向けることが事実上無理です。そのため、航空自衛隊のRF-4Eが離着陸する様子を撮影するために、世界各国から航空カメラマンが航空祭以外にも日常的に来日し、百里基地の外周部にいることが多くなりました。

2019年の「百里基地航空祭」は、基地の一般公開でRF-4E/EJを見られる最後のチャンスです。当日は外国のカメラマンやファンがいつも以上にいるかもしれません。

なお、第501飛行隊はファイナルイヤーを飾るために幾つかの機体にスペシャルマーキング(特別塗装)を施して航空祭に臨みます。スペシャルマーキング機を含めてRF-4Eの最後の雄姿が青空の下で見られるよう、晴天を祈念しましょう。

※誤字を修正しました(11月12日5時50分)。

緑色迷彩のRF-4EJ偵察機。三菱製のF-4EJ「ファントムII」戦闘機の改造機である(画像:航空自衛隊)。