セコムの警備員が顧客宅で窃盗。そんな耳を疑うような事件が兵庫県尼崎市で起きた。警報機が誤作動した留守の医師宅に合鍵を使って侵入し、カルティエの高級腕時計など計125万円相当の貴金属を盗んだとしてセコム社員の坂上直希容疑者(24)が11月1日、逮捕された。

「事件は9月28日朝に発生。坂上容疑者は盗んだ貴金属を転売しており、県警は余罪も捜査中です。この事件は産経新聞11月1日付夕刊でスクープ。同記事内でセコムは『逮捕の事実を把握していない』とコメントしました」(社会部記者)

 本来なら産経の報道で初めて明るみに出るはずだった本件。ところが――。

「実は、セコムは全国の都道府県警の本部長・署長経験者など約60人が在籍するなど、警察OBの大型の天下り先です。今回の事件では、極秘の捜査情報が事前にセコム側に漏れており、逮捕日時まで共有されていたのです。兵庫本部が社内の警察OBを通じ、県警から逮捕日程を含む捜査情報を入手していました。現在セコム顧問である大物OBの指揮の下、県警の捜査に圧力をかけていたのではないかという疑惑まで浮上しています」(セコム関係者)

 この大物OBは、2007~09年に第21代警察庁長官を務めた吉村博人氏だ。大阪府警警視庁の刑事部長、警察庁の刑事局長、官房長を歴任している。

 吉村氏を直撃した。

「そんな馬鹿なことするわけない」

――事件について当局側にもみ消しを依頼したのか。

「天地神明に誓って、そんな馬鹿なことするわけない。兵庫県警の加藤(晃久本部長)は知っているけれど、連絡していません」

――セコム側が逮捕日程を把握していたのはなぜか。

「知りません。兵庫のなんとかっていう県警のOBが今回の案件に入っていたのは知っていますが、セコムの立場で(事件を)なんとかしようとかそんなことは考えられない。県警からOBに『これを捕まえます』と直前に言うことはあるかもしれないけど、今回は知らない。会社の人間を捕まえるときに、その会社に連絡するのはありえるでしょ。でも、それ以上の動きをやっても何の得にもならないですよ」

――逮捕はいつ知ったのか。

「産経の大阪版が『抜く』らしいと会社の法務部から聞きました。でも、『しょうがないよ』と伝えた。私が噛むなんてありえないよ」

 セコムの広報は「逮捕後に警察からの連絡で知り、1日午前時点では把握していなかった」と回答。

 いずれにせよ今回の事件で「セコムしてますか」の意味が大きく変わったことは事実である。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年11月14日号)

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