小学校中学校のうちから、性についてわかりやすく伝えること。これが加害者を生まないことにも繋がっているーー。

11月12日衆議院第一議員会館で開かれた勉強会「子どもたちの健やかな未来を守る包括的性教育」(主催・NPO法人ピルコン)。

少年事件やLGBTの権利問題などに取り組んできた山下敏雅弁護士は、子どもたちに対して、日常的に性について話をすることの大切さについて語った。

性に関する情報は、同級生とAV

男子中学生が、学校の帰り道同級生女の子の胸や股を触り、強制わいせつの疑いで家庭裁判所に送致される事件があった。山下弁護士は、少年の弁護人として事件にかかわった。

少年は、学校で性交や避妊に関する情報を学んでいなかった。唯一知っているのは、同級生からの「胸を触ったら嫌がっているようでも気持ちいいらしい」という話とAVの情報だった。少年が初めてAVを見たのは、自分のスマホでだった。両親はスマホフィルタリングをかけているつもりでいたが、実際にはかかっていなかった。

山下弁護士は受任後真っ先に、性について解説する漫画を手渡した。少年からは「これを(事件の)先に読みたかった」と言われたという。

「彼は性に関する知識を教えてもらっていなかった。やったことは犯罪であり性加害者の立場だけど、性教育を受けていなかったという意味では、被害者の一人でもあると思う」

中学生を妊娠させてしまった」

他にも、月に一度中高生センターを訪れるなかで、しばしば中高生が抱える性の問題に出くわす。

ある時、男子高校生から「中学生を妊娠させてしまった」と相談を受けた。少年はパニック状態。山下弁護士は、養育費や親権、中絶をする際の費用、刑法上の問題などを伝え、「愛おしくて触れたいと思うのは自然なことだけど、相手はまだ中学生で、心と体は大人の仲間入りをしたばかり。まだセックスしないとか、避妊をすることが必要だった」と諭した。

一方で、少年にそうした話をしながら「フェアじゃない」とも感じた。もちろん、してしまったことに対しては責任を取らなければならない。ただ、やはりその少年も、性や避妊について誰からも教わっていなかった。

思春期の子どもたちにとって、「性」というと「いやらしいもの」というイメージが先に浮かびがちだ。山下弁護士は「性というのは、自分の心と体、相手の心と体を大切にすること。セックスは性のうちの一部分でしかない」と話しているという。

義務教育段階で教えるべき」

性知識に関する啓発活動をおこなっているNPO法人「ピルコン」代表の染矢明日香さんは、性に関する不確かな情報がネットなどで氾濫する一方で、現在おこなわれている性教育は不十分なため、大きなギャップが生まれていると指摘する。

小、中、高校での性教育では教科書に「性交」の記載がなく、ピルコンが高校生に対しておこなった性知識に関する調査でも、正答率の平均は3割ほどだ。例えば、「膣外射精は有効な避妊法である」という設問は、正答率が35%にとどまり、半数以上が「分からない」と答えた。

2019年3月には、東京都が「性教育の手引」を改訂した。ただ、学習指導要領の範囲を超える性教育をおこなう場合には、保護者に説明し、その了解を得た生徒のみが対象となるというもので、きわめて限定的だ。

染矢さんは「義務教育段階で、避妊方法や緊急避妊、性感染症の予防、性と生殖に関する健康と権利などについて教育すべき」と主張。幅広い範囲を体系的に学ぶ「包括的性教育」の必要性を訴えた。

「中学生を妊娠させてしまった」男子高校生のケースから考える「性教育」の必要性