様々なメディアで、住まいは「賃貸がいいのか、購入がいいのか」ということがよく論じられています。

ファイナンシャルプランナーの吉井希宥美さんによれば「賃貸VS購入」どちらに軍配があがるかは、人によって異なるといいます。
それぞれに住まいの利点があり、好みが分かれます。ただし、「令和になった現在、老後に介護施設に入りたいのか、ローン完済を何歳までにするか、貯金額はどのくらいあるかなどにより、どちらがベターなのかが決まってきます」と吉井さん。
詳しく解説してもらいましょう。

<令和版>住まいは「賃貸VS購入」どっちが得?

1.費用の面ではどっちが得?

通帳

Naoaki / PIXTA(ピクスタ)

「賃貸か購入か」を、まずはお金の面で考えてみましょう。
都内の3LDKの中古マンションを2500万円、全額ローンで購入した場合と、同じ条件の賃貸物件を10万円/月で借りた場合ではどちらが有利なのでしょうか。

1-1 20年目までは賃貸が有利

購入の場合

住宅ローンの条件が
・返済期間20年
・金利2.0%
・毎月均等返済
である場合は次のような試算 となります。

→月額支払額=12万6470 円(年間支払額151万7640円、20年間の総返済額3035万2892円)

これに、諸費用の金額を加えます。

・マンションの管理費他=月2万5000円(年間30万円、20年で600万円)
・固定資産税年間支払い額=月1万円(年間12万円、20年で240万円)とします。

→20年の総支払額は3875万2892円となります。

賃貸の場合

同程度のマンションを賃貸した場合はどうなのか、不動産ポータルサイトで検索してみました。
都内であれば練馬や足立の物件あたりが該当し、家賃10万程度のようです。

その場合
・月額支払賃料=月10万円(年間120万円、20年で2400万円)
2年に1度の更新料(1カ月分)を加えると、
・10回の更新なので120万円

→20年間の総支払額は2520万円となり、賃貸のほうが約1480万円支払いが少なくなります。

老夫婦

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1-2 21年目からは購入が有利

21年目以降の場合、購入した場合はローンが完済しますので、管理費と固定資産税のみの年間42万円の支出のみになります。
いっぽう賃貸は毎年120万円の支出は変わりありません。その差額は年間で80万円となるので、ローン完済時の差額1480万円は19年で逆転します。

つまりローン完済後、何年住むのかによってどちらが得か決まってきます。

厚生労働省が発表した2018年の平均寿命は、男性81.25年、女87.32年(簡易生命表より)。
このケースの場合は完済後19年で総支払額が逆転するので、男性は62歳、女性は68歳までにローンを完済できる、つまり男性は42歳、女性は48歳までにマンション購入をするのなら、購入するほうが優位となります。

2.賃貸のほうが得な家庭もある

LDK

hap / PIXTA(ピクスタ)

前半では、住まうことをお金の面から考えましたが、多面的に考えると、賃貸が得である場合も少なくありません。

2-1 メンテナンス費用がかからない

マンションを購入した場合、風呂やトイレなど、専有部分の設備が壊れてしまった場合は、自費で修理を行わなくてはなりません。
賃貸マンションの場合、正しい使い方をしていたのに故障が起こった場合は、大半の設備は大家さんが修理費用を負担してくれます。

外壁のメンテナンスも購入の場合は自分たちが積み立てた「修繕積立金」から拠出して修理費を支払いますが、賃貸の場合は大家さん負担で外壁補修を行います。
また、2020年に施行が予定されている民法の改正により、設備故障時の賃料減額が明記されるなど、さらに入居者が有利になります。

2-2 環境の変化に応じて、住む場所を変えられる

家族の構成人数はライフステージによって変わってきます。子どもが生まれれば広い家が欲しくなり、子どもが大学進学や就職、結婚などで独立し、夫婦だけになれば広い家は必要なくなります。

住み替えをしたくても購入した場合は売却に時間がかかったり、思うように売れなかったりしますが、賃貸住宅ならば、家族構成が変わるごとに住み替えるのが簡単になります。

介護施設

8×10 / PIXTA(ピクスタ)

2-3 年を取ると自宅が不要になる人も

厚生労働省が発表した「介護保険事業状況報告の概要(令和元年8月暫定版・結果の概要)」 によると、施設サービス受給者数は94.7万人。
内訳は「介護老人福祉施設」が54.8万人、「介護老人保健施設」が35.3万人、「介護療養型医療施設」が3.4万人、「介護医療院」が1.4万人となっています(※注)

このことからも、住宅を購入しても最期のときを自宅で迎えられない人が多くなる可能性が考えられます。

また、介護施設に入ることによって空き家になったときに賃貸に出そうとしても、借り手がつかない可能性も少なくありません。
購入した住まいは空室でも固定資産税はかかり、介護施設利用料も必要になるので費用がかさみ、持ち家である住まいが「お荷物」になってしまうこともあります。

これらをメリットと感じられ、かつ貯金が十分にある、または子や孫とずっと同居できるならば、自分が年を取った時の資金の確保ができるので、ずっと賃貸住宅に住んだほうが快適に過ごせるかもしれません。

3.まとめ

マンションへ続く道

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「賃貸と購入」どちらがよいかは、一概には言えません。

購入の場合はローンの支払いが終われば毎月の支払いが少なくなるので、老後に収入が少なくなっても比較的安心ですが、空室になったときの対応を考えておくことが必要です。
生涯賃貸物件に住むのは住居形態を自由に変えやすいですが、資金確保ができないと実現しにくくなります。

これらのことを考慮し、メリットが感じられるほうを選ぶのが賢い住まい選びといえるでしょう。

宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー(AFP)/家族信託コーディネーター® 吉井希宥美

※注 同一月に2施設以上でサービスを受けた場合、施設ごとにそれぞれ受給者数を1人と計上、合計には1人と計上しているため、4施設の合算と合計が一致しません

【参考】
※ 厚生労働省平成 30 年簡易生命表の概況
※ 厚生労働省介護保険事業状況報告の概要(令和元年8月暫定版・結果の概要)

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