インターハイのハンドボール女子で優勝した、福岡県・明光学園高等学校。春の選抜大会とインターハイ後の国体でも優勝し、見事三冠を勝ち獲った強豪校ですが、インターハイでの優勝は実は今回が初めて。そんな彼女たちが、どのようにチームをつくり、優勝を成し遂げたのか。主将の柿添まどかさん(3年)、副キャプテンの長谷川真子さん(3年)と村上楓さん(3年)、西窪将志監督にお話を伺いました。

努力と周囲の応援に支えられたインターハイ

【選手インタビュー】

―― 優勝した感想をお聞かせください。

柿添:私たちは、春の選抜大会・インターハイ・国体の3大会で優勝するという「高校三冠」を目標に掲げていたので、インターハイでの優勝は欠かせませんでした。選抜で優勝した後もすぐに気持ちを切り替えてみんなで頑張ったので、優勝した時は本当にうれしかったですね。

長谷川:インターハイ前、九州大会で一度負けていたので、私は多少不安を感じていたんです。優勝した時はうれしくもあり、ホッとした気持ちもありました。ただ、その負けを機に、気持ちを新たに一丸となって取り組めたので、負けたことにも大きな意味があったと思っています。

村上:自分たちの良さがなかなか出せない試合が続いたのですが、負けている時でも柿添さんや長谷川さんがよく声をかけてくれたので「頑張らないと」と思ったし、試合をしながらチームが成長していくのも感じました。また、大会の開催地・熊本出身のメンバーが多いので、地元で優勝できて本当にうれしかったです。

―― 優勝できた一番の要因は何だと思いますか?

柿添:厳しい試合もあった中で、「粘り強いディフェンスと、そこからの速攻」という自分たちの持ち味を出せたことでしょうか。3対3に分かれて攻防するかなりハードな練習を重ねてきたので、それが生きたと感じています。

長谷川:勝つ難しさも感じましたが、多くの応援に支えられた大会でした。負けていて焦っている時でもベンチや会場から声援が聞こえてきて、「ここで諦めるわけにはいかないな」と思いました。また、柿添さんや村上さんが「つらい時こそ笑顔だよ!」「勝ちたい気持ちは負けてないよ!」と常に声を掛けてくれたので、あまり緊張せずに戦えたのだと思います。

村上:私も、応援には本当に支えられました。練習で言うと、県大会後に走り込みばかりしていた時期があって、本当にきつかったです。インターハイをずっと戦えたのは、その練習があったからだと思います。

チームを優勝へ導いた、徹底した基礎固め

―― 一番苦しかった試合はありますか?

柿添:2戦目の埼玉栄高校との試合です。高身長・左利きの選手に押されて、自分たちの持ち味が全然出せず、ラスト10分までずっと4点差をつけられていました。相手も3年生で、最後の舞台なので必死に戦っていました。なんとか勝ちましたが、何度追いついても離されて、非常に苦しい試合でした。

長谷川:私は、その次の3戦目も印象に残っています。スタメンの1人がケガで試合に出られなくなってしまったんです。軸となる選手だったので焦りました。でも、代わりに入った2年生と3年生のメンバーが穴を感じさせないプレーをしてくれて、普段通りに戦うことができました。

村上:私も、2戦目の埼玉栄高校戦です。どう攻撃してもうまくいかないし、点差は縮まらないし……。でも、自分たちの持ち味はディフェンスからの速攻。「まずはディフェンス!」とチームみんなでまとまることで、追いつけました。「3冠を獲るには、ここで負けるわけにはいかない」と、強い気持ちを出せた試合でした。


―― 勝利のために一番努力したことは何ですか?

柿添:基礎の徹底です。監督やコーチからも、ルーズボール(こぼれ球)に飛び込むことや、シュートを打った後の戻りを早くすることなど、基礎が大事だと言われていました。みんなで指摘し合いながら取り組めたのが良かったですね。

また、キャプテンとしては、自分の気持ちを伝える努力をしてきました。厳しいこともモヤモヤすることも、言わないことが原因で負けたくなかったんです。

長谷川:基礎を徹底する中で、できていない人には学年を問わず厳しく指摘しましたし、言うからには自分ができていないといけないので、自分にもプレッシャーをかけていました。

村上:インターハイのメンバーに入れなかった3年生が3人いたことは大きかったです。今まできつい練習をずっと一緒にやってきたメンバーなので、みんな「3人の分まで頑張ろう」と考えたと思います。


―― 今回のインターハイ全体に対する感想を教えてください。

柿添:インターハイは厳しい試合を乗り越えて手にした優勝でした。だからこそ、応援の力もすごく感じました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。きつい場面があっても勝ち切った自分たちの成長も、周りの支えも、両方実感した大会でした。

長谷川:去年の経験から、インターハイは3年生の意地と意地のぶつかり合いになるのは分かっていたのですが、思っていた以上でした。一戦一戦簡単に勝てなくて、苦しくもありました。でも、本当にたくさんの方々に応援してもらって、「自分たちだけの優勝じゃないんだな」と感じました。

村上:私も、応援して支えてもらっていることが、本当にありがたいと感じた大会でした。会場の応援やベンチの声を聞いて、「こんなに応援してくれているのに負けられない、負けたくない」とすごく思いました。勝った時も支えてくれたみんながとても喜んでくれて、感謝の気持ちでいっぱいです。

気持ちの強さが、インターハイ優勝につながった

【西窪将志監督 インタビュー】

―― 優勝後、選手たちにどのような言葉をかけられましたか?

「高校三冠」を目標にしていたので、2つ目のタイトルが獲れたということで、「お疲れさま」「よく頑張ったね」と声を掛けました。中学生の頃から全国大会に出場したり、その中で優勝したりした選手ばかりなので、メンバーとしては充実していました。指導としては「どうやって勝たせたらいいか」という部分だけでした。


―― 日頃の練習ではどのようなことに注意して指導されていましたか?

「練習の練習」にならないように、注意しています。単純な練習でも、どのような意図があるのか、試合のどこにつながるのかを意識するように言ってきました。

また、基本的な動きの練習も徹底しました。例えば、ルーズボールに飛び込むこと。転がっているボールをコートの外に出してしまうと相手ボールになるので、飛び込んでマイボールにすることが大切です。試合中の具体的な場面を想定した上で練習するようには伝えました。

―― 一言で表現するなら、どのようなチームだと思われますか?

気持ちが強いチームだと思います。スタメンの選手たちだけでなく、ベンチも含めて気持ちが折れない、諦めない選手が多かったですね。

「高校三冠」という目標を自分たちで決めたのは、新チームになってすぐでした。最初は、それぞれの思いの強さにバラバラな部分もあったと思います。試合が近づき、メンバーが絞られてくる中で、最終的に全員の気持ちが一つに向かうことができたのではないかと思います。


―― 今後、優勝した経験をどのように生かしてほしいと思われますか?

社会に出てからもいろいろな場面があると思うので、もし壁に当たった場合でも、この3年間で得た経験を生かして、しっかり乗り越えられる人になってほしいですね。もちろんハンドボールを続ける子には、大学でも選手として輝いてほしいなと思います。



「高校三冠」という大きな目標のため、初のインターハイ優勝を目指してまい進した明光学園高校。厳しい試合が多い中、最後まで諦めずに勝ち抜くことができた理由は、徹底した基礎練習と周囲からの応援でした。インターハイを通して、「積み重ねた努力が気持ちを強くすること」「多くの人に支えられていること」を知った選手たち。この経験は、これからも彼女たちを支え続けることでしょう。


profile】明光学園高等学校 女子ハンドボール
西窪将志監督
柿添まどか(3年)、長谷川真子(3年)、村上楓(3年)