ウィーン・フィルベルリン・フィルというオーケストラの世界における東西の横綱が来日公演を行った直後にやってくるのがロイヤル・コンセルトヘボウだなんて、この秋は財布の紐をいくら締めても締めきれないどころか、緩みっぱなしのクラシックファン続出ではないだろうか。まさにこの3つのオーケストラを称して「世界3大オーケストラ」というのがクラシック界の常套句。日本に居ながらにして世界の最高峰を体験できることは本当に凄いことだ。

中でも「ビロードのよう」な弦楽器と、「黄金」のような金管楽器に、「際立った個性」を持つ木管楽器と優れた打楽器群の組み合わせは、ロイヤル・コンセルトヘボウの真骨頂。まさに、彼らが本拠地としているオランダはアムステルダムの名ホール「コンセルトヘボウ」の素晴らしい響きの中で育まれた絶品の音色と言えそうだ。過去にはマーラーR.シュトラウスといった作曲家たちをも魅了した伝統の響きがいよいよ日本に上陸する。しかもこの素晴らしいオーケストラを指揮するのが、飛ぶ鳥を落とす勢いのマエストロ、パーヴォ・ヤルヴィなのだから楽しみだ。ソリストにはこれまた世界で最も多忙なピアニストの1人ラン・ランが随行(プログラムBに出演)し、ドイツ音楽の真髄が披露される。

●公演概要
11月18日(月)、19日(火)サントリーホール 大ホール
11月20日(水)愛知県芸術劇場コンサートホール
11月22日(金)ミューザ川崎シンフォニーホール
11月23日(土)堺市民芸術文化ホール(フェニーチェ堺) 大ホール

●パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)

1962年エストニア生まれ。渡米してカーティス音楽院で学び、バーンスタインにも師事した。北欧の楽団やシンシナティ響、hr響、パリ管の音楽監督や首席指揮者を歴任し、現在はドイツカンマフィルの芸術監督とN響の首席指揮者を務めている。2019/20年シーズンからはチューリヒ・トーンハレ管の首席指揮者に就任する。ベルリン・フィルやコンセルトヘボウ管、ドレスデン・シュターツカペレ、シカゴ響などに定期的に客演し、ソニーをはじめとするレーベルから注目の録音も多い。2010年には故国エストニアのペルヌで音楽祭を創設した。シャープで新鮮な指揮によりレパートリーも古典から現代音楽に及び、世界でも最も活躍している指揮者の一人である。

●ラン・ラン(ピアノ)

1982年、中国・瀋陽生まれ。ノーベル賞コンサート(07年)、オバマ大統領ノーベル平和賞受賞コンサート(09年)、北京五輪開会式(08年)などで演奏するほか、10年には上海万博公式国際親善大使を務め、同年世界経済フォーラムから“若手グローバルリーダー250人”に選出される。07年グラミー最優秀クラシック器楽部門賞に中国人初ノミネート、全米レコード芸術科学アカデミー会長功労賞も受賞している。音楽教育にも熱心で、08年グラミーとUNICEFの援助の下ニューヨークにラン・ラン国際音楽財団を設立。また、ベルリン・フィルレジデント・ピアニストに最年少で選ばれた。10年ソニー・ミュージックエンタテインメントと専属契約を結び、『ライヴ・イン・ウィーン』を発売。最近では、映画「のだめカンタービレ最終楽章前・後編」のサウンドトラックの参加が大きな話題を集めた。最新盤はラトル指揮ベルリン・フィルとの共演による「プロコフィエフ3&バルトーク2」(2013年11月)。

ロイヤル・コンセルトヘボウ

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)は、世界屈指のオーケストラである。その類い稀な響きを、批評家たちは昔から褒めたたえてきた。RCOの弦楽器セクションは「ビロードのよう」、金管楽器セクションは「黄金の響き」、木管楽器の音質は「際だって個性的」と賞され、打楽器セクションには国際的な定評がある。この名声には本拠地コンセルトヘボウの類例のない音響も大いに寄与するところだが、そのメインホールでRCOのように響くオーケストラは、他にはない。1888年以来、オーケストラに多大な影響を与えてきた6人の首席指揮者の存在もまた欠くことができない。マリス・ヤンソンスは、2004年9月に6代目首席指揮者として迎えられた。歴代の首席指揮者は、ウィレム・ケス(1888年~1895年)、ウィレム・メンゲルベルク(1895年~1945年)、エドゥアルト・ファン・ベイヌム(1945年1959年)、ベルナルト・ハイティンク1963年1988年)、リッカルド・シャイー(1988年~2004年)である。2016年秋からダニエレ・ガッティが首席指揮者を務めている。