詳細画像はこちら

399台の限定で英国価格は約2億円

text:James Attwood(ジェームス・アトウッド
translationKenji Nakajima(中嶋健治)

 
マクラーレンは最新のアルティメット・シリーズとして、815psを誇る2シーターロードスターエルバ」を発表した。

2019年の夏にAUTOCARはその一報を伝えているが、フロントガラスは備わらず、399台の限定。マクラーレンP1やセナ、スピードテールなどに並ぶトップモデルに位置し、英国での価格は142万5000ポンド(1億9950万円・税込)とアナウンスされている。

詳細画像はこちら
マクラーレンエルバ

後輪駆動となるエルバは、マクラーレンが生み出してきた公道モデルの中で最も軽量だという。4.0LのV8ツインターボエンジンを搭載し、0-100km/h加速は3秒以下。0-200km/h加速ですら6.7秒でこなすとし、サーキット前提のセナより加速は鋭い。

エルバという名称は、英国イースト・サセックスを拠点にしていたレーシング・コンストラクターから来ている。1960年代のマクラーレンM1AやM1B、M1Cなど、2シータースポーツカーのベースにもなったシャシーを作っていた。

公道向けモデルの精神的なつながりを持つといえるだろう。マクラーレンエルバという名称の利用権を取得済みだ。

マクラーレン・オートモーティブで最高経営責任者を務めるマイク・フルーウィットは、「(エルバは)、ドライバーとクルマ、構成するすべてを強固に結びつける、他に類を見ないクルマです」 と話す。

シャシーは専用設計の軽量なカーボンファイバー製。ルーフはなく、フロントガラスもサイドガラスも備わらない。

風圧から乗員を守る「AAMS」を新開発

エルバの乗員を気象条件から保護するため、マクラーレンはアクティブ・エアマネージメント・システム「AAMS」を開発し、特許も取得。フロントスプリッター内に穿たれた巨大なエアインテークから空気を吸い出し、コクピット直前のクラムシェル・ボンネットから気流を生み出す仕組み。

吐き出された空気はドライバーの上部を高速で流れ、コクピット周辺には気流の落ち着いた「バブル」のような状態が生まれるという。「AAMS」は、カーボンファイバー製のディフレクターで作動。吸い込まれた空気は、ボンネット内の多数のカーボンファイバー製の偏向板によって自動的にコントロールされる。

詳細画像はこちら
マクラーレンエルバ

低速での走行時はAAMSは機能せず、気流は2基の低温ラジエターへ流され、効率を高める。マクラーレンによれば、このラジエターで7速トランスミッションのフルードを冷却することで、最高出力を高めるとしている。

AAMSにより走行時のヘルメット装着は基本的に不要。もちろん希望すればかぶることもできるし、工場オプションとしてフロントガラスも選択できるという。

マクラーレンはフロントだけでなく、コクピットの側面も可能な限り開口部の高さを下げている。横転時などに自動的に展開するロールオーバー保護システムにより、1対のバットレスのサイズも最小化され、開放感も高い。

俊敏性やドライバーとの一体感を最大化

ほかにも、バットレス上部に備わるエアインテークやアクティブスポイラーなど、先進的な空力設計が施されている。リアのアクティブスポイラーは、リアデュフューザーと連動して機能。フラットな底面から空気を加速させながら排出する、垂直フィンが備わる。

V8エンジンはマクラーレンが従来から採用するユニットだが、エグゾーストシステムを改良することで815psまでパワーアップ。電動油圧ステアリングや専用のソフトウエア、スプリングなどを採用し、「俊敏性やドライバーとの一体感、フィードバックを最大化」させたシャシーを得ている。

詳細画像はこちら
マクラーレンエルバとM1A

マクラーレンエルバの車重はまだ明らかではないが、ルーフのない構造に加えてカーボンファイバーを多用することで、可能な限り軽量に仕上げたとマクラーレンは主張している。フロントのクラムシェル・ボンネットの厚みは1.2mmしかない。

ガルウイング・ドアもカーボンファイバー製となり、支えるヒンジは1カ所のみ。ボディサイドのパネルも大きな1枚もののカーボンファイバー製だ。

カーボン・セラミック製となるディスクブレーキの直径は390mm。ブレーキの冷却気流も配慮され、優れた熱伝導率を実現しているということで、公道用モデルのブレーキとしては最も先進的なシステムだという。

耐候性にも配慮されたカーボン製のインテリア

インテリアは「曖昧な境界線」と呼ぶデザインテーマを採用。リアデッキから流れるように車内へ導かれ、センターコンソールへと変化する処理が特徴的だ。そのまま滑らかに運転席と助手席とを仕切るアームレストになっている。

ダッシュボードクリーンなデザインにまとめられている。インスツルメント・クラスターはステアリングホイールとともに、視認性を保つために可動する。アクティブ・ダイナミクスコントロールのスイッチは、マクラーレンとしては初めてインスツルメント・クラスターに配置された。

詳細画像はこちら
マクラーレンエルバ

ダッシュボード中央の8インチタッチモニターは、サーキットでの走行データやタイムを表示するトラック・テレメトリーシステムなど、様々な機能の操作を行うことができる。シートも軽量なカーボンファイバー製。オーディオは標準では装備されない。

車内のフロアにはカーボンファイバーが露出し、軽量な滑り止めマットが用意される。ルーフが備わらないため、雨や日光、砂など、耐候性のあるインテリアに仕立ててあるという。ヘルメットを収容できる小さな荷室が、リアカバーの下に用意されている。

マクラーレンエルバは既に注文が可能となっている。スピードテールの生産が完了した後、2020年後半からオーナーへのデリバリーが始まるという。


マクラーレンの記事
マクラーレン・エルバ 815psのハイパーカーを発表 約2億円のロードスター
107台のマクラーレン集結 特別な3台も マクラーレン・トラックデイ・ジャパン2019
マクラーレンGT
マクラーレンF1/マクラーレンP1/マクラーレン・セナ

マクラーレン・エルバ 815psのハイパーカーを発表 約2億円のロードスター