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Image by aldegonde/iStock

 物置や蔵の片付けなんかをしていると、年季の入ったを不思議なもの発見することがあるが、さすがにこれは背筋がぞっとするだろう。

 イギリスワトフォードにある元宿屋兼パブの煙突を解体していた建築業者が、奇妙な瓶を発見した。

 それは19世紀ごろに作られたと推測される瓶で、中には人間の歯や釣り針、ガラスの破片、そして謎の液体が入っていたらしい。

 これは「魔女のボトル」と言われるもののようだ。呪いから身を守るためのお守りで、わざと見つかりにくいところに隠されていたのだという。

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「サラトガの魔女」の生誕地で発見された魔女のボトル

 イギリスではこれまで、各地の古い建物、教会の境内、川岸などから100以上もの魔女のボトルが回収されているそうだ。

 これらのほとんどがヨーロッパ大陸で大規模な魔女騒動が起こっていた1600年代に起源をもつもので、ビンの中身はだいたいピン、釘、棘、尿、切り取られた指の爪、毛髪が多い。

 今回、魔女のボトルが発見されたのは、現在は個人宅になっている建物。以前は「スター・アンド・ガーター・イン」の名で知られる宿屋兼パブだったという。

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元宿屋の煙突を解体していた建設業者が、この写真とよく似た魔女のボトルを見つけた
image credit:Wikimedia commons

 ワトフォードはのちに「サラトガの魔女」と言われた半伝説的な人物、アンジェリーナ・タブスの生まれた場所であることがよく知られている。

 1761年生まれのタブスは十代の頃にアメリカに渡り、ニューヨークサラトガスプリングスに移住して占い師として生計をたてていた。

 新たに見つかった魚雷型のビンは1830年代に作られたと推測され、タブスとは直接の関係はないようだ。

 だがこうしたビンが見つかったことから、この建物に住んでいた住人がずっと魔除けの習慣を行っていたことがうかがえる。

 ハートフォードシア大学の歴史・民俗学者のセリ・ホールブルック氏は、「魔女のボトルのほとんとは後の時代のもので、タブスと同時代のものではない。それでも、とても面白い発見だ」と語る。

 一方、建物の現在の持ち主は、「我が家にあった魔女のボトルを公開するつもりはない。再び隠しておけば100年くらいたってからまた別の誰かが見つけるだろう」とコメントしている。

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イギリスではこれまでに100以上の魔女のボトルが発見されている。写真はリンカンシャー州で見つかったもの
image credit:Wikimedia commons

家に忍び込んできた魔女を暖炉や煙突に隠したビンの中に封印


 ところで、魔女のボトルは実際どのような効力があったのだろう?

 ビンの中にはいろいろなものを詰めるが、通常、尿や曲げたピンなどがほとんどだ。

 尿は超自然の異世界から魔女をビンの中におびき寄せ、中に入った魔女はピンの鋭い先端に捕えられるとされている。呪いを怖れる者は、このビンを暖炉の下や煙突の中に隠す。

 人類学者のクリストファー・C・フェンネル氏は、当時の人々が魔女は煙突などを通り道にして家に忍び込んでくると信じていたと説明する。

 また、魔女のボトルには単なる好奇の対象以上の意味がある。

 ホールブルック氏らロンドン考古学博物館(MORA)の研究者たちは現在、3年プロジェクト「封印された魔女ボトルの発見」に取り組んでいる最中だ。

 公的あるいは個人でコレクションされている魔女ボトルの分析を進めており、この伝説の起源や魔術、近代初期医療に関する信念との関係についてもっと学ぶことを目的としている。

 陶器の専門家は「魔女のボトルは最初は医療目的で作られたのではないか」と指摘しており、家族に長寿や健康をもたらすための医療行為と考えられていた可能性もあるようだ。

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image credit:Pixabay

不気味な存在だった魔女を寄せ付けないためのおまじない


 セーラムの魔女裁判はアメリカでもっとも有名なヒステリックな魔女騒動の例だが、こうした恐慌騒ぎはほかの多くの場所でも根強くあった。

 例えば建設業者や考古学者によって、1600年代にさかのぼる魔女のボトルや不気味なシンボル、その他の魔除けが発見されたハドソンバレーもそうだ。

 タブスがアメリカにやってきた頃は、魔女は犯罪者というより不気味で奇異な存在という扱いだった。

 タブスはアメリカの独立戦争中にイギリスの将校と一緒にニューヨークにやって来たが、戦争が終わってひとり取り残された。

 結局、タブスは山の近くの小屋に移り住み、物乞いや占い師をしながら生活した。

 彼女は単に孤独を好んだだけだったのかもしれないが、魔女のボトルが町中に住むのを防いだのかもしれない。

ReferencesBoing boing / written by konohazuku / edited by usagi

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52284532.html
 

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