アラスカ州の州都ジュノーの北約120kmに位置するヘインズは、人口2500人にも満たない小さな海沿いの町である。その町で今年1月、一軒家から火災が発生し飼い犬アーチャーArcher)が瀕死の重傷を負った。それから約10か月、アーチャーは魚の皮を使った火傷の治療により元気に回復した。

今年1月に起こったアラスカ州ヘインズにある家の火災により、身体全体が炎に包まれたまま逃げ出した飼い犬アーチャー。海の近くで倒れているのを発見されたものの、かかりつけの獣医は留守で、町から車で約7時間離れた動物病院に搬送された。容態は深刻だった。

応急処置を受け容態が安定した後、再びヘインズに戻ったアーチャーは、野生動物ドキュメンタリー番組『ナショジオ ワイルド(NAT GEO WILD)』でもお馴染みのミシェルオークリー獣医(Michelle Oakley)のもとで本格的な治療を受けることになった。ミシェルさんはカナダ北西部のユーコン準州をベースに仕事をしているが、毎週1回、自宅から約238キロ離れたヘインズで診療している。

ミシェルさんはアーチャーの治療について、『PEOPLE.com』に次のように語っている。

「まずはアーチャーのために、町のオフィスに火傷治療専用室を設け、身体に巻かれた包帯を交換することから始めました。しかしアーチャーの火傷は酷く思うように治療が進まず、カリフォルニア大学デービス校の火傷専門医に助言を求めたのです。専門医から提案されたのはブラジルで開発された治療法で、包帯の代わりにティラピアという魚の皮を使って皮膚の再生を促すという画期的なものでした。」

「デービス校の専門医はわざわざヘインズにやってきて、私たちに治療法を伝授してくれました。治療が始まり、ティラピアの皮を患部に直接貼り付けられたアーチャーの姿は怖いくらいで、映画『ドラゴンスレイヤー』に出てくるドラゴンにそっくりでしたが、効果はてきめんでした。特に時間を要すると見込まれていた顔の皮膚の修復は見事で、今では顔に25セントコインの大きさの禿げが残っているだけになりました。火事から10か月が経ちますが、体を覆っていた毛を全て失い、ピンク色の皮膚が剥き出しになっていたアーチャーが見違えるように元気になったのです。」

「火傷の治療にはティラピアの皮の交換だけでなく、数度の手術やレーザーセラピーなども行いましたが、アーチャーはどんなにつらくてもいつも尻尾を振って私たちを迎えてくれました。アーチャーがここまで回復したことを心から嬉しく思っています。」

アーチャーを通し、非常に効果的な火傷の治療法について多くのことを学びました。この成功が今後、火傷を負った動物たちの治療の助けとなるのは間違いないでしょう。」

なお『Stat News』によると、ティラピアの皮には皮膚の修復に必要なタイプ1コラーゲンとタイプ3コラーゲンが豊富に含まれているだけでなく、張力や抵抗力も人間の皮膚より優れており、水分がたっぷり含まれているそうだ。また患部を包帯で巻くよりも痛みが少なく低コストであるため、火傷治療への活用が期待されているとのことだ。

画像は『The Sun 2019年11月11日付「OFF THE SCALE Dog badly burned in house fire has face rebuilt with FISH SKIN」(Credit: Dr. Michelle Oakley)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)

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