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  • 哺乳類には、妊娠してできた胚の発育を良きタイミングまで停止させられる種がいる
  • 発育を一時停止させることで、夏や冬時期の過酷な出産を回避する

妊娠しても希望タイミングまで発育を止め、来るべき時に出産する…

まるでSFのような話ですが、実際にこの離れ業をやってのける動物たちが存在します。

これは「胎生休止(embryonic diapause)」と呼ばれており、哺乳類にのみ見られる習性です。ちなみに胎生休止のできる哺乳動物は130種類ほど。

人間から見ると羨ましいこの習性ですが、実はここに母親が子供を安全に産むための秘密が隠されています。

なぜ妊娠を止めるの?

胎生休止をする主な動物は、シカやアルマジロアリクイワラビー、クマ、アザラシ、げっ歯類など数多く存在します。休止期間は動物によって異なり、数日〜11ヶ月と幅があります。

胎生休止は、安全に子孫を繁殖させるための効果的な方法で、パターンは主に2つあります。

1つは、出産後すぐに交尾すること。これは、新生児に何かあった場合に備えて予備の妊娠をしておくためです。予備の胚は、授乳のストレスにより発育がストップして、子供が乳離れすると再開します。

ミンク/Credit:ja.wikipedia

もう1つは、季節に合わせて適切な時期まで妊娠を止めるというもの。

例えば、イタチ科の哺乳動物であるミンクは、交尾をして妊娠するのは3月初めですが、暖かくなる春分を過ぎるまでは発育を止め、出産するのは5月頃です。

ミンクの平均的な妊娠期間は40日ほどなので、胎生休止をすることで冬ではなく暖かい季節に出産をずらしているのです。

人間も胎生休止できる?

ポーランドで行われた実験では、羊(胎生休止をしない動物)から胚を取り出し、マウスに移植して胎生休止させることに成功しています。その後、親である羊に戻した胚は、何の悪影響もなく正常に発育したそうです。

これは、人間を含むすべての哺乳類の胚が胎生休止できることを示しています。ただ、医療機関も充実し、体温調節もできる人間は、そもそも胎生休止する必要はないかもしれません。

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それでも、胎生休止の理解が人の役に立つ可能性は十分にあります。休止中の胚は、分化して血液や皮膚、臓器などを作る「幹細胞」と似ているため、細胞レベルで胎生休止を理解することは、医療分野にとって大きな利益となりえます。

専門家によると、細胞分裂を止める新たな治療法やがん転移に関わる「がん幹細胞」の特定にも繋がるといいます。今後、胎生休止が人間社会とどのように関わるのか要注目です。

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