インターハイのソフトボール女子で連覇を達成した兵庫大学附属須磨ノ浦高校。春の選抜大会でも優勝しましたが、直前の近畿大会でエースピッチャーが故障するなどアクシデントもありました。ピンチの中で、どのようにチームとして一体となり、優勝を成し遂げたのでしょうか。主将の花浦ひかり選手(3年)、ピッチャーの田村真央選手(3年)、新主将の小笠原里桜選手(2年)と、池田紀子監督にお話を伺いました。

チームメイト全員で一丸となって掴み取った優勝

【選手インタビュー】

―― 優勝した感想をお聞かせください。

花浦:決勝戦は、タイブレークの末9回裏にサヨナラ勝ちでした。最後、私がヒットを打って優勝を決めたのですが、打球が抜けた瞬間も、これで優勝だという実感がなく、無我夢中で走っていました。ふとチームメイトを見るとみんなが喜んでいて、少しずつ実感が湧いてきました。

田村:優勝した喜びよりも、終わってしまったという寂しさの方が大きかったのが本音です。終わってほしくないと思うくらい、インターハイは楽しかったです。

小笠原:優勝が決まった瞬間はすごくうれしかった一方で、もう3年生と一緒にソフトボールができないという寂しさもありました。3年生が引っ張ってくれたからこそ、優勝できるチームに成長できたと思います。


―― 優勝できた一番の要因は何だと思いますか?

花浦:チームの一体感だと思います。ベンチ入りできなかったメンバーも一生懸命声を出してくれて、その声援が力になりました。故障したエースピッチャーが思うように投げられず苦しんでいる姿を見て、「彼女のために頑張ろう」と気持ちを一つにできたと思います。目標にしてきた「全員で戦うソフト」を実現できました。

田村:チームの総合力です。監督からも「個々の力は小さいチームだから、このままじゃインターハイに出られないよ」と叱咤激励されてきました。チームメイトとぶつかることもあったけれど、その度に話し合い、お互いの意見を理解して、気持ちを一つにして練習した成果が実ったのだと思います。

小笠原:学年関係なく仲が良く、全員で一つになって戦えたことだと思います。チームメイトのほとんどが尞生なので、一日のうちの多くの時間を一緒に過ごします。生活を共にする中で、信頼関係を築くことができました。

「守備のチーム」と言えるまでやり切った守備練習

―― 一番苦しかった場面はありますか?

花浦:3回戦と準々決勝が開催された日はとても暑く、しかも準々決勝が延長になったこともあり、体力的に苦しかったです。次の準決勝は、対戦校のピッチャーがすごく球の速い好投手で、全然打てなかったので焦りました。なんとか耐えて勝ち、決勝に進出することができてよかったです。

田村:先発した3回戦は、6点リードしている場面にもかかわらず、不安でいっぱいいっぱいになってしまい、4点を失いました。監督に喝を入れられ、我に返って、「チームのために投げるんだ」と気持ちを強く持って立ち直ることができました。そこから意識が変わり、決勝戦では投げる楽しみを感じながら投げることができました。

小笠原:私は3番を任せてもらっていて、打たなければいけない立場だったので、準決勝でとても良いピッチャーと対戦することになり、なかなか打てなかったときは苦しかったです。けれど、あの試合があったことで、気を引き締めて決勝戦に臨むことができたのかもしれません。

―― 勝利のために一番努力したことは何ですか?

花浦:守備のチームという伝統があり、練習時間のほとんどを守備練習にあてていました。ただノックを受けるのではなく、実戦を想定した動き・連携・捕球・送球を意識して行ったり、ミスしたときはその原因を考えて次のノックに臨んでいました。「守備は自分たちが一番だ」という自信を持って試合に臨めたと思います。

田村:チームとしては守備練習です。バックがしっかり守ってくれるので、投げていて心強かったです。個人では、体力が無くては重いボールを投げることができませんし、スタミナも付けなければいけないので、たくさん走り込んで下半身を強化し、誰よりもよく食べました。

小笠原:3番・サードを任せてもらっていたので、守備も打撃もしっかり結果を出さなければと思っていました。守備は、先輩たちに教えてもらいながら練習するうちに自信がつきました。打撃は、選抜大会で全然打てずにチームに迷惑を掛けてしまったので、ロングティーバッティング練習に力を入れました。


―― 今回のインターハイ全体に対する感想を教えてください。

花浦:主将としてチームをまとめられる自信を持てない時期もありましたが、チームメイトが最後まで私を信じてついてきてくれたことに、とても感謝しています。個々の力が大きくないからこそ、チームが一つになって全国制覇できたと思います。今後は実業団に進みますが、高校3年間で学んだ気配りや気遣いを大切にして、頑張りたいです。

田村:チームメイトと一緒にソフトボールをできたことが、本当にかけがえのない時間でした。新チームの練習を見ていても、「もう一度みんなとソフトボールをしたいな」と思えるほどです。今後もソフトボールを続けますが、ピンチの場面でもバックが付いていることを忘れずに、チームメイトを信じて投げたいです。

小笠原:優勝できてとてもうれしかったですが、次は自分が主将としてチームを引っ張っていかなければいけないという責任を感じています。今年のチームは、タイブレークで負けたことがない粘り強いチームだったので、次も自分が中心となってそのような強いチームを作っていきたいです。

全員で戦い、つなぐ気持ちが連覇の原動力に

【池田紀子先生インタビュー】

―― 優勝後、選手たちにどのような言葉をかけられましたか?

正直、優勝できると思っていなかったので、「やったな!」と声を掛けました。一方で、とても暑い中の試合でしたし、故障者もいる中で迎えたインターハイだったので、勝ててとてもほっとしました。決勝戦ではノーアウト満塁のピンチを無失点で乗り切るなど、しっかり守り切って、自分たちのソフトボールができたと思います。


―― 日頃の練習ではどのようなことに注意して指導されていましたか?

生徒たちには、失敗したときやできないことにぶつかったとき、「なぜ失敗してしまったのか」「なぜできないか」を考えてもらうようにしています。自分で考え、原因に気付くことができたら、同じ失敗を繰り返さずに成長できるからです。

また、日頃の練習ではとにかく守備練習に力を入れています。打撃は相手投手の能力や調子によって左右されますが、守備は絶対に裏切らないからです。

―― 一言で表現するなら、どのようなチームだと思われますか?

同じくインターハイで優勝した昨年のチームに比べて、個々の力は小さかったです。その分、全員で戦う気持ちやつなぐ気持ちを大事にしてきたので、優勝できたのではないかと思います。主将を中心によくまとまって戦えたし、選手一人ひとりがインターハイの中で成長する姿を見せてくれました。


―― 今後、優勝した経験をどのように生かしてほしいと思われますか?

3年生11人のうち10人は、大学や実業団でこれからもソフトボールを続けます。今年は最高学年でしたが、次はまた「1年目の選手」になるので、練習などでも周りに目を配って、気付いたことがあれば自分から動ける選手になってもらいたいです。

今回のインターハイ優勝は、ベンチに入れたメンバーも入れなかったメンバーも、みんなで力を合わせて勝ち取れたもの。だからこそ、これからも謙虚な気持ちや周りへの感謝の気持ちを忘れずにいてほしいですし、「あなたがいてくれてよかった、助かった」と周りから思ってもらえるような選手や人間に成長してほしいと思います。



昨年の優勝校でありながら、チャレンジャーのような姿勢で臨んだインターハイ。「どこにも負けない」と自信を持っていえるほど守備練習を徹底し、守りからリズムを作ることで、自分たちのソフトボールをやり切ろうと意識したそうです。インターハイの中でまた一回り成長した選手たち。チーム一丸となって勝利を勝ち取った夏の記憶は、それぞれの道に進む3年生と、新チームを作っていく1、2年生の背中を押してくれることでしょう。


profile】兵庫大学附属須磨ノ浦高等学校 ソフトボール
池田紀子先生
花浦ひかり選手(3年)、田村真央選手(3年)、小笠原里桜選手(2年)