米倉涼子主演の人気医療ドラマ「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」第6シリーズ(テレビ朝日系・木曜21時〜)第4話。

AI医療の権化だった潮一摩(ユースケ・サンタマリア)が、AI抜きでの手術に挑むが……。

AIばっかり見ているから治るものも治せない
100m走で今シーズン世界最高となる9秒80(!)を記録した日本陸上界のエース・四日市岡田健史)が東帝大学病院に極秘入院してきた。

検査の結果、膝の関節に滑膜肉腫が発見される。AIは、腫瘍を取り去り人工関節を入れることで命は救えると診断。しかし、アスリートとしての将来は絶望的だ。

その時々の時事ネタを果敢に取り入れてくる「ドクターX」だけに、東京オリンピックを見据えてのアスリートネタなのだろうが、9秒80で走る日本人が選手生命の危機とは一大事! ……しかし今回の本命患者は四日市ではなかった。

四日市主治医である次世代インテリジェンス手術担当外科部長の潮一摩の元に、母・四糸乃(倍賞美津子)が訪ねてきた。

認知機能に不安があるという四糸乃をAI診断にかけたところ、アルツハイマー型認知症の確立85%との結果。AIを盲信している潮は薬で進行を遅らせるしかないと考えるが、大門未知子(米倉涼子)は別の可能性を見抜いていた。

教授室へ行きたいという四糸乃を案内せずに、行き方だけを伝えて行動を観察することに。その結果、歩行障害・認知障害・尿失禁という特徴的な症状が出ているものの、方向感覚は失われていなかったことから、アルツハイマーではなく「特発性正常圧水頭症」だと判断。

過剰に脳脊髄液が溜まることによって脳が圧迫され、様々な症状を引き起こす「特発性正常圧水頭症」。アルツハイマーの治療は難しいが、これならば外科的治療で劇的に改善する可能性がある。

「AIばっかり見ているから治るものも治せないの!」

大門から指摘されてショックを受けた潮は、四日市の治療プランもAIを盲信せず、改めて自分の頭で検討することに。その結果「自家培養軟骨移植」という術式を思いつく。これならばアスリートとしての可能性も残せるのだ。

手術がヘタなヤツは奮起してもヘタ
ハイテク医療機器を過信して人間味のない治療をするクールな医師が、肉親が病気になることによって人間らしい心を取り戻すというのは医療ドラマの定番展開。

しかし「ドクターX」ではそう一筋縄ではいかない。

潮から「自家培養軟骨移植」という案を聞かされた大門は、「そうだね、問題はあとひとつ」との返答(教えてやれよ……)。

結局、手術を開始した潮だったが、難易度の高さに途中で手が止まってしてしまう。

「何やってんだい一摩! お前は子どもの時からどうしようもねえ。いっつも肝心なところでおじけづく! しっかりしないね!」

なぜか手術現場に現れた四糸乃からの叱咤激励。これで一皮むけるというのも感動パターンなのだが……。

四糸乃の言葉に奮起した潮だったが、ミスで大量出血を起こしてしまいボーゼン。そこに大門が登場!

「だから問題があるって言ったでしょう。問題はアンタの腕!」

母親の前で最大級の恥!

大門は、四糸乃から潮の母親であると告げられた時も「ああー、あの手術のヘタな!」と返していた。アンタ、人の心がないのか……。相変わらず医学以外の知能は小学生並だ。

私、失敗しないので」ということでスパーンと完璧に手術を成功させた大門。潮は、母親からも「情けないわねえ……」なんて言われてしまう。

色々あったものの、結局、「手術がヘタなヤツが奮起したところで、ヘタなもんはヘタ」という身も蓋もない結果に。

シリーズ通して見ても「イヤなヤツは改心してもダメ」という方向性が貫かれている。勧善懲悪で分かりやすいものの、今回の場合は、さすがに潮がかわいそうになってくる……。

それでも大門がイヤなヤツに見えないのは、手術以外はダメダメという大門のキャラと、あっけらかんとした米倉涼子の演技のおかげか。

倍賞美津子の自然すぎる群馬弁に感動
今回、群馬県出身者として個人的に注目したポイントは、四糸乃お土産に下仁田ねぎを持ってきていたように、潮は群馬出身だという設定(海なし県の群馬で「潮」という名字って……とは思ったが)。

母子ふたりでの会話では、思わず群馬弁が出てしまうという演出がなされていた。微妙すぎてテレビでフューチャーされることはほぼない群馬弁が!

倍賞美津子は、標準語の中にチョロッと入り込む「そーなん?」「○○なんさ〜」という群馬弁をあまりに自然に使いこなしていて感動した。

一方、ユースケ・サンタマリアの方は違和感ありアリで、中途半端な沖縄方言のようになっており、倍賞美津子の偉大さが際立つ。本人はもちろん、アントニオ猪木も群馬とは縁がないはずなのに……! すごい役者だ。
(イラストと文/北村ヂン

【配信サイト】
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『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』テレビ朝日
脚本:中園ミホ、林誠人、香坂隆史
音楽:沢田完
主題歌:P!NK「ソー・ホワット」
企画協力:古賀誠一(オスカープロモーション
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日
プロデューサー:大江達樹(テレビ朝日)、都築歩(テレビ朝日)、霜田一寿(ザ・ワークス)、大垣一穂(ザ・ワークス)、伊賀宣子(ザ・ワークス)
演出:田村直己(テレビ朝日)、松田秀知、ほか
制作協力:ザ・ワークス
制作著作:テレビ朝日

イラストと文/北村ヂン