ここまで盛り上がらない侍ジャパンがらみの国際大会も珍しい。野球の国際大会「プレミア12」だ。

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 4年に1度行われる同大会は2回目の開催。WBSC(世界野球ソフトボール連盟)ランキング上位12の国と地域が世界一を目指す戦いに臨んでいる。開催国として参加できる日本を除いては東京五輪出場権のかかる大会でもあり、限りなく本気モードだ。もちろん日本代表・侍ジャパンも「プレ東京五輪」の意味合いを兼ねる今大会にかける思いは強い。スーパーラウンドと決勝戦の開催国として日本のファンの前で優勝を果たし、来年の金メダル奪取に弾みをつけたいところ。しかしながら多くの見どころがあるようでも世の中からの関心はそれほど得られていない。

「客席は映すな!」

 13日のスーパーラウンド・日本対メキシコ戦(東京ドーム)中継の視聴率は平均14.1%(以下数字は関東地区、ビデオリサーチ調べ)。瞬間最高視聴率は20.1%で数字的にはだいぶ健闘しているように見える。だが、それまで台湾で行われていた1次リーグB組の3試合、スーパーラウンド2試合の中継平均視聴率については、いずれも10%越えでまずまずの数字だったとはいえ「キラーコンテンツ」とはお世辞にも言い切れない。テレビ朝日とTBSがそれぞれ数億円単位の放映権料をWBSC側に支払っていることを考えれば、両局関係者が「費用対効果は得られていない」と口をそろえるのも頷ける。

 極めつけは、日本で行われているスーパーラウンドで侍ジャパンの試合が不入り続きとなっている点だ。13日のメキシコ戦の観客数は3万1776人。代表戦にもかかわらず、東京ドームが満員にならないのだから何とも寂し過ぎる数字だ。しかも実はこの一戦が13日現在でのスーパーラウンド最多観客数。黒星となった12日の米国戦は好カードだったものの、2万7827人しか入らなかった。

 強化試合を除く2015年以降の国際大会では東京ドーム開催の日本戦で初めて3万人に届かず、侍ジャパンを運営するNPBエンタープライズの関係者をがく然とさせたのは言うまでもない。

 さらに日本でのスーパーラウンド初戦となった11日の豪州戦(ZOZOマリンスタジアム)では1万7819人と入場者数が何と2万人を割り込む〝異常事態〟。内外野ともスタンドには空席が目立ち、中継用のテレビカメラを回すスタッフの間からは「客席は映すな!」との怒声が飛び交うなど現場は緊迫したムードに包まれていた。

不人気ぶりに眉をひそめはじめたスポンサー

 NPBエンタープライズの母体・NPB日本野球機構)の関係者も青ざめながらこう嘆く。

「この日は屋外球場で悪天候だったとはいえ、日本の試合会場で侍ジャパンの試合がここまでガラガラになるとは想像もしなかった。正直に言って、これは侍ジャパンチームの存続そのものについて危機的状況と言わざるを得ない」

 だが〝時すでに遅し〟の感は否めない。このように言いながらもプレミア12が開催される直前まで、NPBエンタープライズ側には今大会の成功を明らかに楽観視しているフシがあった。ちょうど先月まで日本でラグビーW杯が開催され、予想以上の盛り上がりを見せていたからだ。前出のNPB関係者は先月上旬の時点で、このようにのん気にも鼻息を荒げていた。

ラグビーの日本代表が初の決勝トーナメント進出を果たし、日本中がひとつになって代表チームを応援しようという雰囲気になった。『次は野球だ』となって、いい形でバトンを引き継げると思うし、今度のプレミア12は過去最高の盛り上がりになるはずだ」

 ところがフタを開けてみると「過去最高」どころか「過去最低」の注目度に成り下がろうとしている。天国から地獄の現実を突きつけられ、今では侍ジャパンNPB側の関係者たちは人気低迷に顔面蒼白となっているのだ。その中からは、次のように警鐘を鳴らす厳しい意見も出ている。

「次は16日土曜日の東京ドームでライバル対決の韓国戦が組まれているのでまず間違いなく今まで以上、それなりの観客動員数を見込めるだろう。視聴率も大幅アップが見込める。そして翌日の決勝にもコマを進め、この第2回大会で初優勝を決めればそれなりのインパクトを与えられるだろう。

 だが侍ジャパンとしては『終わり良ければ、すべて良し』ではない。今大会直前に行った宮崎、沖縄合宿にはファンがほとんど集まらず連日の閑古鳥。肝心の大会開幕後も視聴率、観客数ともになかなか数字が伸びなかった現状を考えれば、侍ジャパンの人気と注目度はかなり怪しい。プレミア12の大会協賛スポンサー、もしくは侍ジャパンの公式スポンサーとなっている複数の国内クライアント側が『侍ジャパン』もとい稲葉篤紀監督率いる『稲葉ジャパン』の不人気ぶりに段々と眉をひそめ始めている。プレミア12の放映権を持っているテレビ朝日とTBSも今大会で費用対効果がないと最終的な断を下して見切りをつけることも十分に考えられ、4年後の第3回大会放映は本当にどうなるか分からない」

 そして、このタイミングに気を乗じるかのごとく〝横ヤリ〟を入れてきているのが韓国だ。11日のスーパーラウンド・米国戦(東京ドーム)では5―1で白星を飾ったが、試合途中の本塁憤死を巡る「誤審騒動」によって韓国国内がヒートアップ。かなり微妙ながら韓国側の走者が本塁アウトを宣告され、リクエスト判定でも覆らなかったことで韓国ファンからの怒りのブーイングは今も一向に沈静化していない。

 それを煽っているのが、韓国メディアだ。その多くの論調は「KBO(韓国野球員会)は断固として抗議すべき」としており、どちらかと言えば標的はWBSCよりもスーパーラウンド開催地の日本に対して向けられている。

 反日むき出しの韓国メディアの報道を要約すると「開催地の日本が〝地の利〟を生かして米国戦の球審および三塁塁審を日本人に任せ、我々韓国の代表チームを貶めた。リクエストによるビデオ判定でも判読官が誰なのか明らかにされず、そこに日本人が加わっていた可能性は否定できない。韓国国内で行われていた1次リーグC組ではそのビデオ判読官の名前と国籍がすべて明らかにされていたにもかかわらず、日本開催のスーパーラウンドから突然ヴェールに包まれてしまったのは明らかにおかしい」という過激な内容だ。

 それでも〝そう突っ込まれても仕方がないな〟と思わざるを得ないところもある。とにかく今回はプレミア12の主催者・WBSC、そしてサポートするNPBの「杜撰」としか思えないような大会運営に首を傾げたくなる点が多々見られるからだ。

プレミア12、WBCの強奪狙い始めた韓国球界

 来日中のKBO関係者からは「匿名」を条件に、こんな物騒な言葉も飛び出している。

「スーパーラウンドで大会協賛スポンサーの大半を抱える日本が有利になるような疑念が生まれるならば、次回以降は韓国の企業がスポンサーとしてもっと名乗りを上げるべき。そういう機運は確実に高まっている。

 韓国の経済界は失速気味とはいえ、体力は十分ある。しかも我が国内で野球の代表チームへの関心度は比較的高い。先日のプレミア12・1次リーグC組の韓国国内での試合は不入りだったが、入場料が高過ぎたことが原因とされており、改善点は分かっている。そうした反省も踏まえながら次の第3回プレミア12、そして今後のWBCワールドベースボールクラシック)は我が韓国のテレビ局と企業が出資し、基本線として国内開催に踏み切れる道筋を作るのがベスト。いつまでも日本ばかりが国際大会で〝ホームアドバンテージ〟を生かして野球大国を気取られるような形にさせておくわけにはいかない」

 稲葉ジャパンの人気がこのままパッとしなければ、国内のスポンサーにソッポを向かれてしまう危険性はなきにしもあらず。そのスキを狙い、国際大会の大口スポンサーとして韓国側の大企業が雪崩れ込んで来ればWBSCやWBCを主宰するMLBもグラつくかもしれない。

 いずれにせよ、これで東京五輪での金メダルを獲れなかったら稲葉ジャパン、いや日本の野球人気は文字通り「アウトを迎える日」が近付くことになってしまう。もっとNPB側は危機感を覚え、改善策を早急に立て直す必要性がある。

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