アッシュと魔法の筆』は、 “描く楽しさ”と“勇気”をテーマにしたペイントアクションアドベンチャープレイヤー主人公の少年・アッシュとなり、魔法の筆で町中に絵を描きながら、寂れた港町・デンスカを包む暗闇を晴らしていきます。ときには、筆の力で命を吹き込んだ“かいぶつ”の力を借り、仕掛けを解いたりも。しかし、アッシュに目をつけているいじめっ子たちが行く先々で絡んできて……? 本稿ではこれまでにない描画体験、かいぶつたちの愛らしさなどを中心に本作の魅力をたっぷりとお届けします。



文 / 小泉お梅

ひと筆で花が咲き、かいぶつが踊る感動ペインティング
物語は、アッシュいじめっ子たちの嫌がらせで廃墟となった灯台に追いやられるところから始まります。そこで出会ったかいぶつの“ルナ”が、アッシュが持っていた絵筆とスケッチブックに不思議な力を与えてくれたことで、壁に光り輝く絵を描けるようになります。このルナはもともとはアッシュスケッチブックに描いたキャラクターで、アッシュも名前をつけるほどのお気に入りでした。それが命を持って動き出したというのは、どこか日本の“付喪神”を連想させますね。

インティングは思った以上に直感的でした。壁のまえに立ちR2ボタンペイントを開始したら、まずは使いたいデザインを選びます。いわゆるデジタルペイントソフトのブラシを選ぶような感じ(花びらや星などのブラシ、ありますよね)。そして、円形のカーソルを動かして描くわけですが、ここでは両手で持ったコントローラーそのものを動かして操作します。モーションセンサー機能が、コントローラーの軌道や傾きを反映してくれるんですね。この操作は最初こそ驚きましたが、慣れるとすごく楽なんです。スッ、スッと筆を滑らせているような感覚がまた楽しい。

当初はペイントと聞いて、輪郭線を引いたり色塗りするのを想像していました。が、本作はそういったシステムはなく、もっとシンプルデザインを選んで配置、大きさ、形を決めるだけで絵になるのです。絵を描くのって意外と根気がいりますよね? 途中で面倒になって未完成のまま放り投げてしまったり……。でも、本作なら花の一輪でもちょっとした作品に。壁のロゴや落書きと重なるとまたアートな感じもします。

壁に描いたとたん、絵が動くというのも感動もの。スーッと引いた木の幹が伸び、花が開花したり、筆の軌跡をなぞるように蝶が舞ったり。雲からは雨が降り、氷山を描けば冷たい海が広がる……。デンスカの町が薄暗いせいか、さながらプロジェクションマッピングのようでもあります。

魔法の筆で描いた絵には、電球を灯らせるという不思議な力もありました。「電球なんか点けてどうするの?」と思われるかもしれませんが、町中の電球を点灯させて明るくし、闇を払うことこそがルナの願いでもありました。このデンスカの町は廃れてしまっただけでなく、得体の知れない“紫の暗闇”に蝕まれようとしていたのです。

そこでアッシュは町に光を取り戻すため絵を描き、軒先の電球を灯して回ることに。もともとデンスカは港町として賑わっていたようですが、かつて起きた石油タンカーの事故で漁ができなくなり、工場なども閉鎖されていまやほぼ無人。明かりを点ける人もいなければ、壁に絵を描いたところで怒る人もいません。出歩くのは、憂さ晴らししているいじめっ子ぐらいなものです。

いじめっ子を回避しつつ町を進むアッシュ。しかし、シャッターや登れない段差なども彼の行く手を阻みます。そんなときこそ、かいぶつたちの出番です。筆で生み出したかいぶつの能力を借りてギミックを解いていくわけですが、それには彼らのリクエストする絵を描いてゴキゲンになってもらう必要があります。このときのかいぶつたちの喜びようが、とても可愛らしいんです。表情が豊かなうえ、描かれたものに対してリアクションもしてくれます。

かいぶつには炎や雷、風といった属性があり、それにちなんだ能力を発揮してくれます。例えば、風のかいぶつなら重い木箱を吹き飛ばしてくれたり、機械のところへ雷のかいぶつを呼べば電力を供給してくれたり。

彼らかいぶつを呼ぶべき場所は、仕掛けだけじゃありません。町のあちこちにある不思議な落書きのところへ呼び寄せると、かいぶつからリクエストが発生します。壁にモノクロで現れるデザインサンプルのとおりに描いてあげれば、その絵のシーンスケッチブックメニュー)内の“思い出”に記録されるほか、記念のバッジがもらえます。バッジアッシュのバッグに装着。やり込みの証でもありますね。

こうして町の探索を進め、キャンバスとなる建物や、使えるデザインが増えていくにつれ、描くことに夢中になっていきました。かいぶつも増えたことで、暗闇やいじめっ子への不安も薄れたせいか、「このまま描き続けていけば、町が明るくなるんだろうな」と、漠然と思っていました。……そう、あのときまでは。

ネタバレ注意! 急展開のストーリーとまさかのバトルアクション! 
ここからはネタバレが含まれますので、ご注意ください! 重要な部分には触れませんが、驚きを取っておきたい方は、プレイ後にまた読んでいただければと思います。VR対応コンテンツも楽しいのでぜひ!

さて、町を明るくする計画も仕上げというころで、またしてもいじめっ子たちが現れます。いつにも増してえげつない仕打ちに、アッシュの心に湧いたドス黒い気持ち。それに反応したのか、いままで描いたかいぶつの一部が暴走してしまいます。かいぶつは真っ黒に姿を変え、いじめっ子たちをさらっていきます。暴走しなかったかいぶつもいて、彼らは怯えて潜んでいます。

暴走したかいぶつを止めようにも魔法の筆はいじめっ子に折られてしまい、なす術のないアッシュ。そんな彼を見たルナは……? 

思わぬ経緯で復活した筆には、新たにかいぶつに対抗できる力が備わっていました。アッシュは暴走したかいぶつを探し、筆の攻撃で弱らせて正気に戻すことになります。舞台は再び町中に移りますが、アッシュは筆の恩恵でシューッと高速移動できるようになったため、捜索も快適です。

暴走したかいぶつを救うことで、そのエリアに囚われた子も解放されます。彼らは反省し、仲間となって協力してくれるようになります。最初は複雑だったアッシュも、少しずつ心境が変わってきた様子。そんな背景には、アッシュが筆の影響で偶然にも彼らの辛い過去や家庭事情を知ってしまったことがあるようです。個人的にはあんなにひどいことをされたのにアッシュぐう聖か、とは思います。でも、元を辿れば石油タンカー事故による住民の失業、そして家庭不和という負の連鎖が招いたことなんだと考えれば……。ともかく、改心した彼らは頼もしい働きをしてくれるし、素直にアッシュの絵をいいと言ってくれる。ズルい展開だなーと思いつつも、友だちっていいなーと思ってしまいます。

クライマックスではペイントゲームならではの場面もあって盛り上がると同時に、胸が熱くなりました。ちょっと感極まってしまったほどです。ここは皆さんに実際にプレイで体験していただきたいところです。
本作は、クリアまでの時間はそれほど長くはありませんが、「プレイしてよかったー!」と思えること請け合いです。クリア後も未回収のデザイン集めを続けられますし、気ままにペイントもできます。それと、灯台にもぜひ足を運んでいただきたい! 私は初回プレイでは本編中に灯台に戻らなかったのですが、そのことをあとからずっと悔やんでいたんです。でも、クリア後にまた訪れることができ、心底ホッとしました。灯台には風景デザインの入手タイミングの関係で、クリア後に完成できるかいぶつの“思い出”もありますよ。さらに、地下には秘密の場所があったりして……? 

こういうことがしたかった! 魔法気分を味わえるVRモード
お楽しみ要素として忘れてはならないのが、PlayStation(R)VR用のVRモードです。そのメインとなる“ポタリと不思議なキャンバス”モードでは、3Dでお絵かきできちゃうのが特徴。そのため独立したコンテンツとなっています。ちなみにポタリは、本編でアッシュのバッグに棲み着いた小さなかいぶつです。VRモードでの操作は、PlayStation(R)Moveモーションコントローラーを2本使用。1本は筆、もう1本はスケッチブックを持った状態です。

筆は本編よりも小さく実際の絵筆に近いサイズで、魔法の杖(『ハリー・ポッター』的な)にも思えてきます。筆で指し示したところにポポポッと花が咲いたり、筆の先から蝶が飛び出す光景はまさに魔法! さらに風のデザインクルクルと筆を回せば花びらや綿毛が巻き上がったり、リンゴを実らせればポタリが美味しそうに食べたり……、ささやかな遊びが用意されているのがニクい。同モードはポタリの一連のリクエストに応えればクリアとなり、自由にお絵かきできるVR用のステージが解放されます。

VRモードはポタリの可愛らしい雰囲気からちびっ子向けかと思いきや、大人も夢中にさせるファンタジー空間でした。クリアまでおよそ30分とVRのワンプレイとしては長めかと思いますが、ふだん3D酔いしやすい私でも時間を忘れて没頭してしまいました。前後左右の移動がないのがよかったのかもしれません。酔いにくいけどVRならではの奥行きを感じられて、しかも楽しい本作。もし「VRで遊びたい!」という友人が来たら、真っ先に勧めたい1本になりました。

本作を買う理由はコスパ面にもあります。本編は長編ではないですが十分に手応えのあるボリュームで、VRモードもついて音声も日本語フルボイス。これで税抜き2,900円って……!? 価格を抜きにしても、『アッシュと魔法の筆』は本当に満足度の高い作品でした。絵にせよかいぶつにせよ、描いたあとは充実感というか、豊かな気持ちというのを実感できました。デザインパーツの組み合わせだとしても自分で選んで作り出したというのが、何だかうれしいんです。また、描いた絵でかいぶつたちが楽しそうに遊んでいるのにも頬がゆるんでしまいますね。ストーリーではシリアスな場面もありますが、かいぶつたちの愛嬌ある笑顔のおかげで先に進めた気がします。絵を描いたり物作りが好きという方だけでなく、描くのは苦手だけど絵を見るのが好きという方、そして癒されたいという方はぜひ本作に触れてみてください。きっと、これまでにない体験が待っています。

タイトルアッシュと魔法の筆
メーカーソニー・インタラクティブエンタテインメント
■対応ハードPlayStation(R)4(PlayStation(R)VR 対応)
ジャンルペイントアクションアドベンチャー
■対象年齢:12歳以上
■発売日:発売中(2019年10月10日
■価格:通常パッケージ版・ダウンロード版 各3,190円(税込)

アッシュと魔法の筆』オフィシャルサイト
https://www.jp.playstation.com/games/ash-to-mahou-no-fude/

(c)2019 Sony Interactive Entertainment LLC.

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掲載:M-ON! Press