『天使にラブ・ソングを~シスターアクト~』が2019年11月15日(金)、東京・東急シアターオーブにて初日を迎える。前日には森公美子バージョンのゲネプロ(通し稽古)が披露されたが、明けて初日直前の日中に朝夏まなとバージョンのゲネプロが披露された。
この模様をレポートしよう。

【あらすじ】
破天荒な黒人クラブ歌手のデロリスは、殺人事件を目撃したことでギャングのボス・カーティスに命を狙われる。重要証人であるデロリスは、学生時代からの知り合いでもあるエディら警察の指示でカトリック修道院に匿ってもらう事に。規律厳しい修道女たちから天真爛漫なデロリスは煙たがられてしまう事もたびたびだが、ある日、修道院の聖歌隊の歌があまりに下手なのを耳にしたデロリスは、修道院長の勧めもあって、クラブ歌手として鍛えた歌声と持ち前の明るいキャラクターを活かして聖歌隊の特訓に励むことになる。やがて、デロリスに触発された修道女たちは、今まで気づかなかった「自分を信じる」というシンプルで大切なことを発見し、デロリスもまた修道女たちから「他人を信頼する」ことを教わる中で、互いに信頼関係が芽生え、聖歌隊のコーラスも見る見る上達する。が、噂を聞きつけた修道院にギャングの手が伸びるのも時間の問題であった……。果たしてデロリスは無事に切り抜けることが出来るのか?



朝夏が演じるデロリスはオープニングから太陽のような輝きを放ち、一瞬にして観客を魅了する。持ち前の長い手脚を存分に使って、大勢のシスターたちをリードしながら歌い踊る姿はまるで宝塚のトップスター時代を彷彿とさせる。手脚を完全に隠した修道女スタイルの衣裳を身にまとっているが、一度歌い踊り出すと拳を振り上げ、時にはハイキックのように大きく脚を振り上げるやんちゃなデロリスに思わず笑顔がこぼれてしまった。
また、前日の会見でも話が出ていたように朝夏本人がこれまで接する機会がなかったソウルやゴスペル歌唱もきっちりと仕上げており、“レジェンド森公美子のような声量溢れるたくましい歌声に肉薄するものとなっていた。
森のデロリスシスターたちに対してどこか母性のような質感を感じさせると言うならば、朝夏のデロリスシスターたちの姉貴(兄貴?)のような存在となっていたように見受けられた。

写真提供/東宝演劇部

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ロリスを取り巻くシスターにも注目したい。春風ひとみ演じるどこかすっとぼけた老シスター未来優希演じる好奇心旺盛な中堅シスター、そして屋比久知奈演じる純粋培養の見習いシスターがデロリスと出会う事でそれぞれ自我に目覚めていく様は観ているだけでエールを送りたくなる。
また、数多くのミュージカル作品に出演している田中利花がさりげなくシスターの一人として加わっている点も見逃せない。劇中後半で披露される田中のソウルフルなオンステージを是非楽しみにしていただきたい。

写真提供/東宝演劇部

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シスターアクト』だけに女性に目がいってしまいがちだが、女性たちを輝かせる男性の存在にも注目だ。“汗っかき”エディ巡査役の石井一孝は、デロリスとは高校時代からの友人かつデロリスに惚れている役どころ。いろいろな意味合いの“弱さ”を上手に表現していた。一方、小野武彦が演じるオハラ神父は神父という割には俗っぽく、非常に人間味溢れるキャラクターとなっていた。

写真提供/東宝演劇部

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ロリスを狙うギャングたちの存在もご注目。大澄賢也今拓哉がWキャストで演じるギャングのリーダー・カーティスは冷酷さとコミカルさのバランスが絶妙。TJ役の泉見洋平はちょっとおバカなカーティスの甥っ子を愛嬌たっぷりで演じ、カーティスの手下であるジョーイ役のKENTAROパブロ役の林翔太ジャニーズJr.)は得意の歌とキレッキレのダンスで魅了する。

写真提供/東宝演劇部

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余談だが、本作のお楽しみの一つであるカーテンコールではジョーイパブロがステージの上手と下手に別れ、観客にダンスを指導する。最後の最後まで物販のペンライトを手に楽しんで欲しい。

写真提供/東宝演劇部

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主役からアンサンブルまで、どこを切り取っても贅沢なキャストがくりひろげるミュージカルコメディ。笑って笑ってちょっとほろっとして最後はまた笑顔になれる事請け合い! 多幸感溢れる作品を是非楽しんでいただきたい。

『天使にラブ・ソングを~シスターアクト~』スポット映像

取材・文=こむらさき