01_e

 2019年、ボイジャー2号宇宙の旅は次の段階へと突入した。

 NASA1977年太陽系の外惑星系を探査するために打ち上げられた無人宇宙探査機、ボイジャー2号が、太陽圏を離脱したことを確認した。

 同時期に打ち上げられたボイジャー1号は2013年に太陽系を脱出しており、1号と2号から送られてくるデータを照らし合わせることで、星間空間についての研究が進むものと期待されていたが、実際にはますます謎が広がったようだ。

 最近、ボイジャー2号から送られてきた通信によって、私たちが暮らす太陽系とそこから広がる外宇宙との間にはヘリオポーズなる謎めいた境界があることが確認された。

―あわせて読みたい―

ついに太陽系を脱出!ボイジャー1号、35年を経て無限の彼方へ
わくわく天体観測!探査機から送られてきた太陽系の星を観察しよう!「太陽系ツアー」
ボイジャー打ち上げ40周年記念で、NASAがダウンロードフリーのポスターを公開
おやすみ、ケプラー!太陽系外惑星を観測し続けていたケプラーがスリープモードに突入。燃料が底をつき最後の眠りへ
太陽系内で最も遠いピンク色の天体「ファーアウト」が発見される(日本・すばる望遠鏡)
太陽系の最果てに予測されていなかった圧力が存在することが明らかに(NASA、惑星探査機ボイジャー)

徐々に明らかになりつつある太陽圏の姿


宇宙探査の重大な分岐点です。私たちは初めて”故郷”から離れ、一時的ではあってもついに星間空間に足を踏み入れる瞬間に立ち会っています

NASAの天体物理学ジェフリー・ヘイズ氏は説明する。

 ボイジャー2号は42年の太陽圏の旅を終え、星間空間へ進入したことが確認された。7年前に世界で初めて星間空間へ進入したボイジャー1号に続く2番目の人工物となった。

 その観測データからは5つの研究論文が発表されており、そのいずれもが太陽圏と呼ばれる領域が終わり、広大な星間空間が始まる領域の理解をうながしてくれる。

 太陽圏は太陽系を包み込む荷電粒子の泡で、風に吹かれてたなびく吹き流しのような形状をしている。太陽から生じる太陽風は、やがて星間物質の圧力を受けることで減速し、太陽風の圧力と星間物質の圧力が釣り合う領域「ヘリオポーズ(太陽境界面)」が形成されている。

0_e

ボイジャー2号のデータによって、太陽圏の構造がさらにはっきりと特徴づけられた。太陽から生じた太陽風が境界へと届くことで、吹き流しのような形が形成されている
image credit:NASA/JPL-Caltech

 我々が暮らす宇宙の内側は、太陽とそこから生じる太陽風のきわめて広範な影響力が及ぶ。その外側は、同じような影響がない領域だ。ボイジャーの両機はそのことを確かめてくれた。

 太陽風が徐々に弱まり、やがて星間媒質へいたると予測する宇宙モデルもあったが、そうではないことがはっきりしたのだ。

ヘリオポーズの磁気バリアから漏れる粒子

 ヘリオポーズという磁気バリアの存在は、理論的に予測され、ボイジャー1号によって確認されていたが、2号もまたこれを確認。ここまでは予想どおりだ。

 しかしボイジャー2号はまた、ヘリオポーズの外側にある磁場が1号から伝えられた数値よりも若干強いことをも観測した。

 これは、そこにある磁場が少しの距離でかなり変化するらしいということを意味している。意外にも、太陽風に運ばれてきた電荷粒子が星間空間へと”漏れ出している”ようなのだ。

 ヘイズ氏によれば、まるで境界が多孔質であるかのように機能しており、一部の粒子を通過させるのだという。


How Far Away Is It - 04 - Comets and the Heliosphere (4K)

謎を解決するごとに新たな謎が

 こうしたことは専門家にとってもまったく新しい知見であって、完全に理解するにはもう少し時間がかかるらしい。

 先に太陽圏を離脱したボイジャー1号が送信してくるデータと2号のものを比較することで、さまざまな謎が解明されると期待されていたが、実際には答えよりも、新しく浮かび上がった謎の方が多かったようだ。

 「宇宙探査という観点からは、私たちは星間空間というものについてその表面をほんの少し引っ掻いた程度に過ぎないということです。」

 ボイジャー2号は42年かけて143天文単位――すなわち地球と太陽の距離の143倍の長さを旅して、ようやく星間空間が始まるところまでたどり着いた。

 もし、私たちがもっと宇宙を探索したいと願うのならば、忍耐強さを身につけるか、もっと速い移動方法を考案しなければならない、とヘイズ氏は話す。

ボイジャーのさらにその先へ

 NASA太陽物理学部門は、2024年までにボイジャーの発見をフォローアップする探査機「IMAP(Interstellar Mapping and Acceleration Probe)」の打ち上げを予定している。

3_e

IMAPのアーティストコンセプト NASA

 2030年代中には、現在のボイジャーがいるところより10倍も遠く離れた宇宙へと旅をしているだろうとのことだ。

 それまではボイジャー1号・2号の両機が私たちに星間空間の様子を伝えてくれる。両ボイジャーの活動限界は、原子力電池の出力が低下し、完全に稼働を停止する2025年頃になるそうだ。

References:iflscience / spaceなど/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52284645.html
 

こちらもオススメ!

―知るの紹介記事―

犯人は鳩。慰霊碑から花を盗んでゴージャスな巣を作っていた件(オーストラリア)
おまえら全員逃がしてやる。特殊スキルを持つ保護施設の猫、仲間を脱走させた罪で独房に監禁される(アメリカ)
人の視線が怖い「スコポフォビア」とは何か?それを克服する方法は?
アップルのiOSが女性の月経を現す絵文字を追加。SNSやメッセージでさりげなく伝えられるように
米軍が新型の陸軍分隊マークスマンライフル(SDM-R)を公開(アメリカ)

―自然・廃墟・宇宙についての記事―

今日は満月、ビーバームーン!気分をリセットしたいなら夜10時半頃に夜空を見上げよう(2019年11月12日)
海が産んだ大量の卵?フィンランドの海岸を埋め尽くした氷球の珍百景、レアな自然現象
木星速ッ!太陽系内惑星10の自転速度を比較した爽快アニメーション
太陽系のアステロイドベルト(小惑星帯)から飛来する小惑星を避ける術を我々はまだ知らない
宇宙の形は巨大風船のように湾曲し、ループしているという新説が登場(英・伊共同研究)
ボイジャー2号が太陽圏を離脱し星間空間へ。太陽系と外宇宙の間にある壁の謎に迫る(NASA)