文藝春秋11月号の特選記事を公開します。(初公開 2019年10月27日

 ひと月に一回以上利用する「月間アクティブユーザー」が8100万人を超え、日本最大のプラットフォームとなったLINE。従来のコミュニケーションアプリにとどまらず、LINEペイやLINEバイトLINEショッピングなど買い物や仕事、娯楽に関わる新たなサービスを次々と提供している。

 そして、LINEが次なる目標として挑むのは金融業。昨年から、LINEグループの金融ビジネスを統括するLINEフィナンシャルの社長に就任した齊藤哲彦氏は、みずほ銀行などで電子商取引や個人向け事業に取り組んできた元銀行員で、LINEで「金融の民主化」を実現したいという。その具体像について、金融ジャーナリストの浪川攻氏が聞いた。

スマホタップするだけ

 齊藤氏はこう語る。

「私の経験から正直に振り返ると、これまでの銀行は、比較的規模の大きい企業に目を向けて、残念ながら、個人や小規模な個人事業主への対応は不十分でした。大企業や中堅企業のことは『お客さま』。でも個人事業主や個人相手は利益が小さいので『利用者』と呼ぶ銀行すらあります。

 一方、一般の人からみても『金融はよくわからないから俺には関係ない』とハードルが高いイメージが持たれがちです。大企業に独占されてきた金融のハードルを下げ、誰にとっても身近なものにしなくてはならない。これが私たちの目指している『金融の民主化』です」

「金融の民主化」の柱の一つが8月からサービスを開始した「LINE証券」である。最大の特徴は1株単位から投資を始められることだ。

齊藤 通常の取引所を介した売買の場合、100株が最低購入株数です。1株単位であれば手が届く値段であっても100株となると最低30、40万円なければ投資できない企業も多い。対して『LINE証券』は取引所を介在させずユーザーと直接やりとりする相対取引です。取引所からまとめて株を購入することで、ユーザーは1株から購入できます。

 LINE証券では日本や米国の株価指数などに連動するETF(上場投資信託)のほか、トヨタ自動車ソフトバンクなどLINEが厳選した国内企業100社の個別株を購入できる。つまり数千円で有名企業の株主になれるのだ。

齊藤 私も最近、『LINE証券』を使い始めましたが、専用のアプリは必要なく、LINEアプリの中にある『証券』というアイコンタップするだけで、取引画面が表示されます。売買自体も簡単です。株価の値動きは折れ線グラフで一目瞭然。これを参考にして、『売り』または『買い』のアイコンを押すだけです。

ジャック・マーから直接聞いた「予言」

 だがネット証券やスマホ投資など、これまでもIT企業による金融業は数多くある。既存のサービスLINEとの違いはどこにあるのか。

齊藤 LINEが手がける金融の特徴はLINEアプリで完結することです。私はこれを『手のひら金融』と呼んでいます。LINEは毎日スマホで使われていますから、すでにユーザーの『手のひら』に自然と溶け込んでいる。金融機関の窓口に行く必要はもちろん、新たなアプリダウンロードする必要もない。ここにプラットフォーカンパニーが金融に挑む優位性があるのです。

 LINEによる「金融の民主化」に自信をのぞかせる齊藤氏。実は、齊藤氏の経営ヴィジョンを支えるのは、3年前にアリババ集団の創業者であるジャック・マー氏から直接聞いた「予言」だという。

文藝春秋11月号および「文藝春秋digital」に掲載されている「LINEは『手のひら金融』で稼ぐ」では、齊藤氏とその「予言」との出会い、そして来年度の開業を目指す新銀行の構想がくわしく語られている。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2019年11月号)

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