11月の第4木曜日翌日(今年は29日)、米国などで「ブラックフライデー」と銘打った大規模なセールが行われます。日本でも近年、取り組む商業施設が出てきたようですが、まだなじみの薄い存在です。「ブラックフライデー」の発祥や位置付け、なぜ「ブラック」なのか、経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

米国は11月第4木曜日が「感謝祭」

Q.ブラックフライデーとは、どういうものですか。発祥や言葉の変遷、海外での位置付けについて教えてください。

大庭さん「アメリカでは、毎年11月の第4木曜日が『人々の生活を支えてくれている穀物の収穫を感謝する日』という趣旨で祝日(感謝祭)になっています。その日は、多くの国民が家族や親戚たちで寄り集まるという過ごし方をし、ほとんどの小売業者も店を閉めます。

その翌日からクリスマス、新年にかけての1カ月間が一年で最大の商戦期となるのですが、初日の金曜日が特にモノが売れる日であったため、1960年代から、感謝祭翌日の金曜日に感謝祭プレゼント用商品の一斉処分セールを行うことがアメリカ全土で定着しました。

その日は、親しい人間同士が寄り集まることで人々の心も開放的になっていることもあり、他のセールと比較して格段にモノの売れ行きが向上します。11月の第4木曜日翌日の金曜日に商品の販売セールを行う慣習は、ヨーロッパ諸国などにも広がりを見せています」

Q.「フライデー」ということは、1日のみのセールなのでしょうか。あるいは一定期間続くのでしょうか。クリスマス商戦とのつながりは。

大庭さん「開始当初、ブラックフライデーは感謝祭翌日の金曜日のみの限定セールとして行われていましたが、発祥地のアメリカでは現在、ブラックフライデーとクリスマスをそれぞれピークにした、11月から12月にかけての2カ月間、ネット販売をターゲットにしたセールが続けられているのが実態です」

Q.「ブラック」「曜日」の組み合わせから「ブラックマンデー」を連想する人もいるようです。「黒」なのに、いい意味で使われるのはなぜでしょうか。

大庭さん「ブラックマンデー(1987年10月19日)の『ブラック』は、株価の大暴落により、国民の生活を暗黒の世界に導くという悪いイメージで人々から捉えられました。

ブラックフライデーに関しては、発祥地であるアメリカ・フィラルフィアの地元紙が『ブラック』という言葉に関して『感謝祭商戦により、街に人があふれかえり、街中が黒く染まるようににぎわい、小売業者ももうかり、黒字になるという意味である』との解釈を発表し、それ以降、いい意味で捉えられるようになっています」

Q.日本で、ブラックフライデーはどの程度広がっているのでしょうか。

大庭さん「『感謝祭』という行事が日本人にはなじみが薄いことから、4年前まで、日本国内でブラックフライデーという名目でのセールが大々的に行われることはありませんでしたが、2016年にイオングループがブラックフライデーセールを実施して以降、大手総合スーパーや衣料品、靴、家電などの小売業、ネット通信販売の業界でブラックフライデーセールが実施され始めました。

しかし、ボーナス支給前の時期だということもあって、現状ではクリスマス商戦や年末商戦ほどの盛り上がりは見られないのが実態です」

Q.確かに、感謝祭は日本人にはなじみが薄い行事かと思いますが、将来的には、もっと盛り上がっていくのでしょうか。

大庭さん「日本も、感謝祭と同じ時期に『勤労感謝の日』(11月23日)という祝日があります。この日は、現在では『労働に感謝する日』という趣旨で運用されていますが、元々は『農作物の恵みに感謝をする日』という趣旨の日だったため、感謝祭と相通じる部分はあります。

しかし、アメリカの感謝祭は、感謝祭当日の木曜日から日曜日までの4日間が連休となるケースが多く、その期間に家族や親戚が集まり盛り上がりますが、日本では長期連休となることはなく、年末年始に家族や親戚が集まるという慣習も定着しているため、将来的に感謝祭が盛り上がりを見せるという想定はしづらいと思います」

オトナンサー編集部

ブラックフライデーのセールでにぎわうブラジル・サンパウロの商業施設(2017年11月、EPA=時事)