詳細画像はこちら

スピード測定は光学センサー

テストドライバーのエルノ・マキが、トラクションやブレーキング、スタビリティをμの異なる路面で評価すべく、「ノルディック」ウインタータイヤを履いたeゴルフを結構なペースで走らせている。

右側のタイヤはウェット路面におけるeゴルフブレーキングと加速を、左側は氷結路でのそれぞれの性能を試しているのだ。

詳細画像はこちら
光学センサーがeゴルフの速度を計測する。

例え冬でも屋外でこうした路面状況を創り出すのは難しいが、屋内であれば一年中管理されたコンディションのもとで試験を行うことができる。

春に始まったこうしたテストは真夏の間も続けられており、お陰でタイヤメーカーは、EU基準に適合した「スリーピークス」と呼ばれる冬用タイヤのウェットグリップ性能やノイズ、燃費性能に関するデータを集めつつ、完ぺきなコンパウンドの配合とトレッドパターンを見つけ出すことができるのだ。

マキはかつて趣味で609psを発揮するラリークロスレーサーメカニックを務めていたが、いまの仕事では慎重にそれぞれの車両やタイヤにあったペーステストを行うことが求められている。

テストワールドフォルクスワーゲン・ティグアンのステアリングを握る彼が、素晴らしい才能の持ち主であることは直ぐに分かった。

一般的に速度計測で使用されるGPSセンサーは、金属で覆われたテスト施設内では使い物にならないため、正確なスピード測定を行うべく光学センサーが取付けられた今日のeゴルフは、まったく魅力的には見えない。

このどこにでもあるようなセンサーは、路面に向けてビームを発射することで速度を計測するが、この高い正確性を誇る光学センサーの価格は、1万5000ポンド(209万円)という驚くべきものだ。

われわれの目の前でeゴルフが雪に覆われたコース外に突っ込むようなことがあれば、マキのキャリアもタダでは済まないだろう。

まるで新雪 スーパーカーメーカーも

次の建物にあるのがインドア1とインドア3だが、インドア4とインドア5とはまったく異なり、13mの幅をもつコースは一面真っ新な新雪に覆われている。

4月からテストが行われているというのに、雪はまるで新雪のような状態を保っており、ティグアンでフルロックを試すと、キュッキュッと心地よい音を立てる。

詳細画像はこちら
メルトラックは現在の4倍の広さとなる10平方キロメートルへと拡張される予定だ。

インドア1とインドア3はインドア2と接続することで、雪に覆われた1kmのテストコースを創り出すこともできる。

だが、インドア1とインドア3ではいま英国のスーパーカーメーカーが新型モデルのトラクションコントロールセッティングを行っているために、今回はインドア2にだけを見学することができた。

実は今朝、ホテルの朝食会場でこのスーパーカーメーカーのロゴが入ったウェアを着たエンジニアの一団を目にしており、彼らが来ていることは知っていたのだ。

インドア2の雪も驚くべき柔らかさを保っており、まるで降ったばかりの新雪のように踏みしめると心地よい音を聞かせてくれるが、すでに数カ月もテストで使用されていることを考えると信じられない。

800kgのトレイラーピックアップトラックが雪面をならす様子を見ていたが、4本のタイヤには10mmのスパイクが取付けられている。路肩にはザクザクとした氷のような雪が見えるが、マキは例えティグアンがコントロールを失っても、建物の壁に穴を開けないためのものだと言う。

9mの幅しかないコースは非常に狭いが、広いレーンへと出入りするためのスペースには事欠かない。

一定したドライビング 唯一無二の場所

マキは10代の頃から長年にわたって訓練してきたそのスノードライビングの技術を遺憾なく発揮する。早めにしっかりとブレーキングしつつ、カウンターステアを当てながらコーナーへとアプローチすると、まったく簡単な様子で正確にティグアンをコントロールしてみせる。

ランオフエリアの少ないタイトコーナーでは速度を抑えたままだが、マキはタイヤテストや車両評価というものは、異なるスタビリティコントロールセッティングやタイヤであっても、比較可能なデータを積み上げるため、つねに一定したドライビングを繰り返す必要があるとのだと強調する。

詳細画像はこちら
テストワールドの空港近くの施設は、4月になっても寒冷地試験を行える条件が維持できるため、プロジェクトが期限通りに終了しない場合、こちらの施設に切り替えるケースもある。

主要な指標としてラップタイムは計測されるが、シャシーやタイヤセットアップには経験に基づくテストドライバーの評価も欠かすことは出来ないのだ。

言うまでもないが、わたしドライビングはまったくお話にならず、遅すぎるブレーキングとアンダーステアという、ビギナーにありがちな失敗を披露することとなった。

照明の明るさと、屋外コースと違い何も目印がない高速サーキットにはやや戸惑いを感じたが、マキも同意見であり、プロドライバーでさえ、ストロボ効果を無くすためにほとんどのテストを照明をオフにして行うのだと教えてくれた。

それでも、マキのアドバイスのお陰で多少はドライビングを改善することができた。去年カナダで経験した新雪の上でのスノードライビングの思い出が脳裏に浮かんだが、テストワールドの雪は数カ月も使用されているのだ。

夏場に行う寒冷地試験のため、積もった雪の温度やグリップレベル、湿度といったものが正確にコントロールされているというのがテストワールドの特徴であり、まさにここでしか体験できないものだ。

番外編:「スノーハウ」とは

簡単に言えば、テストワールドとはアイスリンクの上に造られた、食べ物の鮮度を保つための冷蔵施設のようなものだ。だが、年間8カ月間も自然を再現したコンディションのなか、内部の雪を最高の状態に保っておくには、数々の「スノーハウ」が必要となる。

地表の温度を下げるだけでなく、何層もの保温材が巻かれた地中の埋設配管を使ってテストコースの温度を正確にコントロールする必要があるのだ。

詳細画像はこちら
整氷車とピックアップトラックが最適な路面状況を維持している。

もっとも深くに設置された配管は、冷凍機からの排熱を使って地中を暖めることで、テスト施設の下部にある永久凍土層がコースコンディションに影響するのを防いでいる。

配管設備は機密事項だということで、われわれの理解の及ぶところではないが、中心となる冷凍設備は1.5MWもの出力を誇り、アイスリンク4面を十分に冷やすことが出来るほどだという。

エチレングリコールの冷媒が80kmもの埋設配管のなかを流れており、冷凍設備に備え付けられた熱交換器によって冷却されている。加熱を担当するのは全長45kmの配管だ。

「ここにあるのはコールドルームだけではありません。そんなものは誰でもできますが、本当に難しいのは雪を完ぺきな状態に維持することです」とインドア責任者のティモ・トゥオビネンは言う。

雪は春の間に施設内へと移動され、スキー場で使われているのと同じようなピステンブーリーの圧雪車によって、22cmの厚さへとならされるが、シーズンが終わる頃には、この厚みは10cmになると言う。

重要なのは雪そのものではないため、テストワールドが自ら雪を創り出すようなことはしない。「それに、人工降雪機が使えるほどの空気が施設内部には存在しないのです」とトゥオビネンは言う。

スノーハウでもっとも重要なのは、自然環境に近づけた条件のなか、雪をいかに上手く圧雪するかだというが、8カ月以上にも渡ってまるで新雪のような状態を維持するための水分の制御方法は秘密だという。

われわれが目にしたようなピックアップトラックトレイラーを使って、シーズン中は定期的に雪面の整備が行われるが、ここではアイスホッケーリンクで活躍する姿がよく知られている整氷車も2台使用されている。


世界最大の寒冷地テスト施設に潜入 極寒の世界 秘密は「スノーハウ」 後編