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 オーストラリアの発明家を名乗るデイビット・マイルズは、2000年代初頭から天気天候を操作できる装置を開発したと主張し、その技術を売り込んでいる。

 彼は、干ばつで苦しむ農民たちに、5万オーストラリアドル(約376万円)支払えば、望み通り雨を降らせると約束したことで非難されている。

 彼の発明は俗にいう人工降雨発生装置のようなものではない。ワームホールの概念を利用し天気を人工的に変えるというものだ。その技術の裏にどんなからくりがあるのか、詳しい説明は一切なされていない。

 だが彼は、報酬をもらうのは雨が降った場合のみで、雨を降らすことができなかったらその限りではないと主張している。

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Introducing Weather Moderation

ワームホールの概念を利用した天気天候を操る装置

 デイビット・マイルズが運営するマイルズ・リサーチ社の公式ウェブサイトによると、マイルズは、ワームホールの概念の元となったアインシュタイン-ローゼン橋という数学的仮説に基づく時空構造モデルの変形版を使って、90年代に気候パターンを操作することが可能だということに気がついたという。

 ワームホールは、時空構造の位相幾何学として考えうる構造の一つで、時空のある一点から別の離れた一点へと直結する空間領域でトンネルのような抜け道のことである。

 マイルズは、近未来の出来事との間に効果的に橋をかけて、1日~10日先に起こることを予想し、少量のエネルギーをうまく適用することによって、気候を操れると主張する。

具体的な方法は不明なまま

 確かにちょっとSFめいた魅力的な説ではある。マイルズは、バタフライ効果(わずかな変化がその後の状態を大きく変えてしまう現象)といった概念を引き合いに出しているが、この降雨契約のために何万ドルも払うことになる農民たちの土地に、実際にどうやって雨を降らせるのかという具体的なことについては一切触れられていない。

 マイルズ曰く、あまり多くを披露しすぎると、自分のアイデアを盗まれたり、武器として悪用されたりするため、わざと多くを語らず、謎のままにしているのだとのこと。


How does Weather Moderation work?

消費者委員会から警告

 オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)は、マイルズの研究は農民たちの悩みにつけこんだものとして非難し、人々に彼と契約をしないよう警告した。

 それに対してマイルズは、ACCCは彼とその会社を中傷しようとしているだけで、実際には自分たちは成功しているし、もし雨が降らなければ、報酬は受け取らないと主張した。

ヴィクトリア州ウィマー地域の麦畑農家グループは、6月末までに100ミリの雨が降るという条件で、5万オーストラリアドルを支払う契約にサインした。もし、降雨量が50ミリなら、その金額は2万5000ドルになり、契約降雨量の半分以下の雨しか降らなかったら、報酬はもらわない

 雨を降らせるという彼の提案を受け入れたウィマーの一部の農民たちについて、マイルズはそう語った。

農民たちからは意外と信頼を得ていた

 まさかと思うだろうが、マイルズとこの契約を交わして金を支払った農民のひとりは、結果には非常に満足としていると語った。

天気を操作できるなんて、良さそうに思えたから、この話に乗ったんだよ。農民にとっちゃ、雨が降ってくれることがすべてだからね。

結果はすぐわかるさ。これから雨が降り始め、急に土砂降りになるっていう天気予報が出て、その裏には彼が絡んでいるのがわかるよ。これまで、ここらへんじゃどこでも見たことがなかったくらいの豊作になると思うな


 だが、マイルズのせいで雨が降ったと断定する証拠はまったくない。彼自身、今のところ、自分の主張をもっと詳しく説明する気はないようだ。

 この技術を盗まれることなく、安全に披露することができる施設を作ることについて話していたが、いつその準備が整うのか、スケジュールはなにも明かしていない。

我々は、異なるさまざまな構成要素を得ていて、ありふれた風景の中にいかにそれを隠し込むか、その方法を学んでいるところだ。だが、当分はかなり控えめに運用しなければならないため、これらをひとつにまとめられる防衛グレードの高い施設が必要なんだ(マイルズ)

Video: Inventor David Miles explains how he can manipulate the weather

疑似科学疑惑がある中、正しさを主張するマイルズ

 マイルズの主張が怪しげなのには、いくつかの明らかな理由がある。彼の会社のウェブサイトから、このテクノロジーが、スカラー電磁波を利用していると主張している部分がその後削除されていることなどがそうだ。ほかの科学者に言わせると、そんなものは存在しないという。

 「スカラ電磁波などというものは存在しません」メルボルン大学の物理学准教授マーティン・セヴィオは言う。「そのようなものはありません。彼はいくつかの言葉を組み合わせて、科学っぽく聞こえる単語を作っただけで、なんの意味もないものです」

 だが、マイルズはそうした批判にも悪びれる様子はない。この降雨契約に投資した勇敢な農民たちのために雨を降らすことができたと、あくまでも主張し続けている。

我々は事を進め、雨を降らせるという契約欄にサインして、クライアントの希望地域の降雨量の範囲を決めるために準備する。50ミリ降らせる自信があれば、60ミリからスタートする。我々の価格設定は、水の輸送コストをもとに行っている

最近の成果は、契約した分のほとんどは成功している。降雨量が足りず、完全ではないこともあるが、80%の成果は達成できている。失敗したら評判を失うが、我々は失敗したことはない

References:Inventor David Miles accused of preying on farmers creates device he claims can cause RAIN / written by konohazuku / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52284311.html
 

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