11月10日に行われた、天皇陛下の即位を祝うパレード「祝賀御列の儀」で、雅子さまは時折涙ぐまれる場面があった。テレビや新聞なども雅子さまの涙について報じ、国民との近さを感じさせるエピソードとして、好意的な取り上げ方が多かったように思う。

 雅子さまは祝田橋交差点付近から目を潤ませていらっしゃったように見え、国会議事堂正門前では目頭を押さえる仕草を見せられた。勤務先だった外務省の方面をご覧になっていたのかもしれない。

「生まれてきて本当にありがとう

 皇室に入られてから、雅子さまが涙を見せられる場面は何度かあった。その中の一つとして、2002年4月、長女・愛子さまご誕生から4カ月後の記者会見でのご様子を思い出す人も多いのではないだろうか。関連質問では、記者とこのようなやり取りがあった。

――第一問の関連で妃殿下に伺います。大変不躾でデリカシーを欠いた質問であるのかもしれませんけれども、妃殿下は生まれてきてありがとうという気持ちで胸が一杯になりましたとおっしゃった時に、私、涙ぐまれたように拝見いたしたんですけれども、その胸中にですね、どんな思いがおありだったのかと、難しい質問ですが。

「難しいですね、やはり。言葉のとおり、やっぱりその生まれてきて本当にありがとうっていう気持ちですね。やっぱり非常に、なんて言ったらいいんでしょうね。胸が一杯になるような、そういった体験かしらと思いますけれども。すみません、母親になって涙もろくなって」

愛子さまの組体操で涙された

“母の涙”として思い起こすのは、2013年10月、愛子さまが小学校生活最後の運動会組体操を披露された時のことだ。皇太子さま(当時)はカメラ運動会の様子を撮影されていた。組体操の形が決まると、ご夫妻は大きな拍手を送られて、雅子さまはじっと愛子さまを見つめられ、目を潤ませていらっしゃった。

東日本大震災被災地ご訪問

 雅子さまは東日本大震災被災地を訪れられた時も、目に涙を浮かべられることがあった。2011年6月、初めての被災地ご訪問として、宮城県山元町の小学校の避難所を訪れられた時は、被災した人たちの話に耳を傾けられながら、目を赤くされていた。雅子さまがハンカチで目をぬぐわれる様子を目にした人もいたという。

 この頃、雅子さまのお出ましはまだ限られたもので、白いシャツにブラックパンツをお召しになり、現在のようなアップにまとめられたヘアスタイルではなく、長い御髪を後ろに流すようなスタイルだった。

パープルのお帽子の奥に光った涙

 雅子さまの涙に少し変化が感じられたのは、2017年12月、政府主催の「障害者週間」式典に臨席された時のことだ。

 小学2年生の女の子が、障害のある弟について書いた「わたしの弟」という作文の朗読に涙ぐまれながら耳を傾けられ、あたたかな視線を送られていたことも印象的だった。雅子さまは、穏やかな笑顔で大きな拍手を送られていた。パープルのお帽子の奥に涙が光っていた。

愛子さまもご覧になった「国民祭典」

 そして11月9日に開かれた、天皇陛下の即位を祝う「国民祭典」。 アイボリーのロングコートをお召しになった雅子さまは、「Journey to Harmony」を嵐のメンバーが歌い終えると、うっすらと涙を浮かべながら、拍手を送られていた。雅子さまが陛下に何かを語りかけられた後、一瞬涙をぬぐう仕草を見せられた。この時、愛子さまも皇居の正門近くから式典の様子をご覧になっていたという。

 11月14日から15日にかけて行われた「大嘗祭」を前に、14日15時頃、皇居・半蔵門を通過される雅子さまのお姿を拝見した。沿道からは雅子さまへの声援が起こる中、落ち着かれたご様子で、手を振られていた。

 長期療養中の雅子さまだが、こうした細かな表情や雅子さまらしさを取り入れられた装いといった、静かに発信される“メッセージ”をキャッチしている人は少なくないのではないだろうか。今後も、自然な感情として涙を流される場面があるならば、やはり注目が集まるだろう。

(佐藤 あさ子)

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