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たまに、尿が異様に思えるほど臭くなることはないでしょうか?

排泄物の色やニオイは健康のバロメーターと言われています。病気を疑って慌てて医療サイトを調べたけど自分の感じたニオイについては記載が見当たらない。食べ物自体のニオイを疑ってみても、そんなニオイのきついものを食べた覚えがない。

もし、そんな状況に覚えがある場合、その原因はアスパラガスかもしれません

アスパラガスは代謝されると、排尿時に揮発性化合物を放出し、蒸気となって強烈なニオイを放ちます。その悪臭は、卵の腐ったようなニオイ、または土っぽい香ばしいニオイと表現されます。

もしそんな悪臭が気になっていた場合には、病気の心配はしなくてもいいかもしれません。

しかしこの問題には別の恐怖が潜んでいます。

ここまでの話しが全くピンとこない人はいないでしょうか? 実はこの悪臭、人によっては嗅いでも感知できない場合があるのです。人によってはとてつもない悪臭の尿が、自分では感じないとなるとちょっと怖い話かもしれません。

一体どういうことなのでしょうか?

アスバラガスが体内で悪臭を生むわけ

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食べ物は私たちの体の中へ複雑な高分子として取り込まれます。

食物を分解するプロセスは、食べ物を口に入れた瞬間から始まっていて、排泄によって終了します。この過程の中で複雑な分子は、より単純な構造の分子へと分解されていき、必要なもの、不要なものに選り分けられていくのです。

アスパラガスには、この食べ物固有の特殊な化合物が含まれています。それが「アスパラガス酸」です。まんまなネーミングからもアスパラガス固有の物質であることを伺わせます。

このアスパラガス酸は、私たちの体内で分解されるときに、様々な揮発性の有機硫黄化合物を生成します。これらは腐った卵のような悪臭を放つ芳香族化合物で、食べてから15分〜20分以内に代謝産物として生成され、トイレにいくと排尿時に放出されます

揮発性とは室温で蒸発する物質をさします。そのため、排尿と同時にこれらの刺激臭が広がるのです。

あまりに早い代謝であることや、アスパラガス自体にはニオイがさほどないことから、これらを関連付けて考える人は少ないかもしれませんが、アスパラガスは食べた後のトイレですぐに悪臭を放ちだすのです。

臭わない人も存在する不思議

実はこの現象はすべての人にピンとくる話ではありません。

実はかなり多数の人たちが、アスパラガスを食べることで発生する尿の悪臭を感知できないのです。

研究によると、75%の人々は排尿時にこのニオイを嗅いでも嗅覚が検出できないといいます。

超音波のような高音が聴き取れる人と聴き取れない人がいたり、色の知覚が人によって多少異なっている様に、実は嗅覚についても感じ方にばらつきがあるのです。

嗅覚は400以上の遺伝子と関連していることが知られており、これらの組み合わせによって各個人の嗅覚認識が異なっていることがわかっています。

特定の高濃度のニオイ物質に鈍感な嗅盲の人は、健常者でも多く見られ「特異的無嗅覚症」と呼ばれています。

この症状については、脇の下の不快臭の原因と言われる「3-メチル-2-ヘキセン酸」についても、ほとんどニオイを感じない人が15%程度存在しているということがわかっています。

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こうした特定の嗅盲が発生する原因は人が主に視覚に依存する進化をしたためと考えられています。そのため他の生物に比べ人間は嗅覚が鈍感になっており、人によってはそれがさらに進んだ状態となるのです。

気にしないのが一番

アスパラガスを食べることで尿から沸き立つ悪臭については、結局研究によるとほとんどの人が認識できないということになります。

今まで感じたことがない人はもちろん、突然起こる尿の悪臭に驚いていた人も特に気にする必要はないようです。

しかし、こうしたニオイの感覚が人ごとに異なるというのは、自分が悪臭の発生源になっていながら、まるで気づかないという状況が生まれる可能性もあるので、ちょっと悩ましい問題ですね。

自分が感じた悪臭について、他人に聞いてもわからないと言われたり、またその逆が起こったとしても今後は不思議に思う必要はありません。これは人類に一定数発生している極めて普通のことなのです。

悪臭に悩まされないというのは、ある意味うらやましい話ですね。

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