―[歌舞伎町流「欲望のすヽめ」]―


 生き馬の目を抜くビジネスシーン、成功を収める人は何が違うのか。広島からキャバ嬢になるため、カバンひとつで上京。外資系IT企業を経て、2003年キャバクラアップス」を起業。現在は年商10億円の同グループ代表を務める内野彩華さん

 今回、「日刊SPA!」での連載をもとに、成功に至るまでの経緯と秘訣をまとめた新刊『成り上がる女の法則』(扶桑社)が発売。年商10億円規模のグループを率いる内野さんに、男が成り上がる秘訣を聞いた。

◆上京したら何者かになってやる

――連載をまとめて本にしようと思ったきっかけは?

内野彩華(以下、内野):もともと「日刊SPA!」で連載をはじめたときは全然違うテーマだったんです。「一流のビジネスマンの欲望力」みたいなテーマだったかと思います。ただ、2年間、連載を続けていくうちにいろいろなテーマの記事が溜まってきたので、「まとめて本にしませんか?」と提案をいただきました。

――書籍の「成り上がる」というテーマは?

内野:連載記事にも書かせていただきましたが僭越ながら、大好きな矢沢永吉さんの本『成り上がり』から拝借しました。うちの店の「アップス」という名前の由来も英語の「アップスタート」という言葉からとったもので、「成り上がり」「成金」という意味です。

 上京前、広島時代にいろいろと悔しい経験をしたせいで「上京したら何者かになってやる」と強く思っていたんです。何が人生の幸せかはわかりませんが、そんな上昇志向が強すぎたために、わたしは人生のいろいろな場面で苦労しました。そこから学んだ自分なりのメッセージを込めたつもりです。

◆野心を表に出して生きるきっかけ

――上昇志向が強い生き方には憧れますか?

内野:私自身、エネルギッシュに生きている人が好きですし、本の中でも紹介させていただきましたが、歌舞伎町で出会うお客様の中にはエネルギーの塊のような人も多くいます。たとえば、その一人で、金貸しの山口さん(仮名)は、私が野心を表に出して生きるきっかけになった一人。お金の使い方も豪快ですし、「俺は、人よりおいしいものを食べるために金貸しになった。だから、人を蹴落としてだって前に進んで行く」というのが口癖でした。

 食事をしたときに、あれこれ勝手に大量に注文してしまう山口さんを「もうちょっと少なめに注文しようよ」と何度文句を言ったかわかりません(笑)。山口さんは数年前に癌を患って死んでしまいましたが、自ら代償を払う覚悟があるからこそ、豪快な生き方だったと言えるんだと思います。

◆小さい山のお山の大将になる

――とはいえ、なかなかやる気を高く維持するのは大変ですよね。

内野:はい。わたしも大学を卒業して、日本オラクルに入社したのですが、仕事ができる人って星の数ほどいるんです。そして、サラリーマン社会というのはピラミッドの構造なので、自動的に、脱落する人が年々増えていく構造になっている。ピラミッドの頂点は最後、点ですから。

――どうすればいいのでしょうか?

内野:この本にも書きましたが、大きい組織で勝負すべきではなく、「小さい山のお山の大将」になるといいと思います。その会社の競争に敗れてしまったら、それは能力がないんじゃなくて、勝負の仕方を間違えてるんです。

 それだったら、誰もが「面倒だから」「汚いから」「苦しいから」とやりたがらないこと、自分以外の競争相手が極端に少ないこと、そういう自分が戦える土俵を見つけて、勝負し、そこで1番になることが大事だと思います。

◆営業トップになっても辞めた理由

――内野さんにもそういう経験がありました?

内野:わたしも新卒で入社した日本オラクルで、営業のトップセールスになることができました。でも、わたしの人気は出物腫れ物のキャバ嬢あがりの営業だからインパクトがあるだけで、技術がわからないわたしでは、あと数年で売上が頭打ちになるのは目に見えていました。

 それでも、とにかく社長になりたかったので、大学時代、働いていた水商売のほうが手っ取り早いと思い、独立しました。そこからは試行錯誤の毎日でしたが、25歳のときにアップスを起業して、今は歌舞伎町で4店舗を経営できるようになりました。

 ただ、2年前に銀座に出店することができたのですが、失敗に終わり、撤退したこともあります。頑張ってだめなこともありますが、どうしてもやりたいことならまたチャレンジすればいいと思いますし、苦しくてもそこで踏ん張れそうなら、頑張ればいいと思います。

ビジネスの世界に万人受けは不要

――自分の世界を確立することが大切なんですね。ほかにビジネスマンに向けたアドバイスはありますか?

内野:キャバクラの世界では「万人受けを狙う必要はない」と、私は良く教えているのですが、それはビジネスにも通じる法則だと思っています。

――どういうことでしょうか?

内野:歌舞伎町ってなにもない女の子がある日突然、一攫千金を稼ぐことができる場所だと思うんです。それこそ、上京したての女の子が一晩で1000万円稼ぐ「歌舞伎町ドリーム」という言葉があるくらいに。

 そんな世界で稼げるキャバ嬢は、「わたし」が成功するために、全力を尽くしているんですが、一方で稼げないキャバ嬢はベクトルが「他人」を向いていることが多いです。お店の人に気に入られるために媚を売ったり、先輩にイジメられないように必死で挨拶をしたり、先輩から逆恨みさないように無難な接客までしたりします。

 つまり、売り上げを上げるには数をこなす必要がある半面、数をこなそうとして誰にでも好かれるように振る舞ってしまうと、誰の印象にも残らない女の子になってしまうんです。

――なるほど……。

内野:つまり、稼ぐ人になるには、万人に受け入れられるため、あれこれ他人に気を遣ったりする必要はない。

 もちろん仕事で成功するには、営業でも、開発でも数をこなすのは大事です。ただ、それ自体を目的にしてしまうと、何も特徴のない存在に成り下がってしまいます。むしろ「わたし」にベクトルを向けて、この仕事必要ないし、気を遣っても仕方ないと割り切ったほうが、仕事で結果を残せると思うんですよね。

◆キャバ嬢の教育は変わった

――内野さん自身、お店で働く女の子に新人教育したりすることはあるんですか?

内野:女の子の教育はやっていますが、昔と違って、いまはアルバイト感覚で働いている子が多いので、その女の子女の子にあった売り方を話すようにしています。

 それこそ最近は、キャバ嬢がテレビに出演したり、「なりたい職業」の上位にランクインするくらいになってきたので、本気で働いているのは2割、あとは大学生や会社が終わってからのアルバイトです。

 彼女たちはお礼のLINEは送らないし、接客中にあくびもしたり、つきあいでアフターはいかないし、休日ゴルフに行ったりしてお客様とつきあわないです。それでも、やり方さえ身につければ、アルバイトでも1か月に軽く数百万円を売り上げられるようになります。わたしたちの課題は、アルバイトの子をいかに売らせるようにするかにかかっています。

――人それぞれ考え方や背景がある女の子に、どういう教育をしているんですか?

内野:わたしは必ず、女の子に「どういう風になりたいのか」ってことと、「10年後にどうなってたいか」を聞いてからアドバイスするように注意しています。お店側から見たら、ひたすら売上てくれるキャバ嬢がありがたいですが、キャバ嬢にとっては、やみくもに売れることが必ずしも幸せとはいえないからです。

 それでも、人生のなかで1年でも、3年でも、5年でも、10年でも「わたしキャバ嬢をこの期間やったから今のわたしがあるんだね」と思ってもらえるよう日々頑張っています。

<取材・文/日刊SPA!取材班 撮影/スギゾー>

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