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純正部品 完ぺきではない?

偽装をほどこされたプロトタイプの写真が公道上で撮影されることがあるが、こうした車両はまさに耐久試験を受けているところであり、公式発表会の場でメーカーエンジニアたちは、耐久性や信頼性を確保すべく数十万kmもの試験走行を行ったと誇らしげに話すことだろう。

それでも、デスバレーの酷暑やニュルブルクリンクでの徹底的なテスト、北極圏の酷寒のなかで開発されたにもかかわらず、英国を走り回るクルマのほとんどが、10年間重大な故障に見舞われることなく過ごすことは出来ない。

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X8R製パーツの数々。

さらに、その原因は決してエンジントランスミッションなどではなく、ほんの小さなパーツの不具合に過ぎないが、修理にはコストと手間暇がかかるようなトラブルなのだ。

だが、幸いにもラムズゲートの工業地帯の一角で、こうした些細なパーツの不具合に悩まされるオーナーたちのために、非常に安価なだけでなく同じようなトラブルの再発防止を可能にした部品を創り出している企業がある。

いまや彼らは世界中に何万もの部品を発送しており、その結果、この会社のオーナーキーラン・マニングスは若干32歳という若さでアストン マーティンレンジローバーに加え、ビーチハウスまで手に入れている。

キッカケは小さなリング

では、マニングスはどうやって世界最高のエンジニアたちが失敗した部品で成功することが出来たのだろう?

クルマに使われている部品のなかには、問題を抱えているものがあります。素材の耐久性が低かったり、そもそもの検討がまったく足りていないのです」と、彼は話す。

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175ポンド(2万3000円):BMW純正部品とXBR製DISAバルブ用リペアキットの価格差だ。

コストや重量制限、設計時間の不足といったものがその理由だと思いますが、その責任を取らされるのは車両オーナーです」

マニングスがこの会社を始めたのは、ホンダスクーター(特にX8Rがメインだったので、それが社名となっている)をさらに速くするためのパーツ販売を行っていた学生時代のことだった。

その後、ワイルドスピードシリーズの大ヒットを受け、インターネットを通じた自動車用のアンダーネオンの販売を始めた彼は、大学の学生寮の自室から商品を発送していたという。

そんな当時、彼のガールフレンドルノーメガーヌのトランクを開けるため鉛筆を使っているのが目に留まったが、その原因はリリースボタンの故障であり、ディーラーでこの部品を購入した場合150ポンドを支払う必要があった。

だが、この部品を分解してみると、小さなプラスチックリングが外れていることが不具合の根本原因であることが分かったので、ステンレスで新たな部品を製作してみると、このステンレスリングは完ぺきにフィットし、二度と同じような故障を起こすことはなかった。

調査が大事 開発は慎重に

こうしてマニングスはオンラインでこのステンレスリングの販売を始めることになったのだが、この部品はいまもX8Rの主力商品のひとつであり続けている。

さらに他のモデルの同じようなトラブルも調べてみると、オーナー同士のフォーラムメカニックとの会話を通じて、すぐに新たに対応すべき不具合部品の情報が集まってきた。いまX8Rでもっとも売れているのも同じトランクのロック部品だが、今回は日産の初代キャシュカイ(日本名:デュアリス)向けだ。

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日産キャシュカイ向けトランクリッドハンドル

マニングスは、「注意して見てみれば、トランクリッドのハンドルをダクトテープで固定したキャシュカイが多く走っていることに気付くでしょう。マウントの強度が足りないためにすぐに折れてしまうのです」と話す。

「純正部品を購入するには70ポンド(9300円)が必要ですが、さらに塗装費用が掛かるうえ、いずれ同じように破損してしまいます。オリジナルパーツの問題を克服するためのキットを販売していますが、より強度を増したこのキットの値段は18.90ポンド(2500円)です。毎日10ケは売れています」

簡単な話のようだが、この完ぺきな部品を創り出すには9カ月もの期間が必要だったのであり、X8Rの社内にはテストと測定を行うために古いクルマから取り外した部品が散乱している。

顧客は英国外にも

いま机の上にあるのはヴォクゾール・アストラのドアミラーだが、新しく3Dプリンターで作成した試作品のカバーとの組み合わせをテストしているところだ。

ヴォクゾールがこの簡単に壊れてしまうアウターシェルの下半分は販売していない一方、この部品を必要とするひとびとは確実に存在している。

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X8Rではより安価なアストラ用ドアミラー向け修理部品の開発を進めている。

次なる改良部品はフォードギャラクシーサイドブレーキのアッセンブリーパーツだ。X8Rが35ポンド(4600円)で販売している部品を使えば、切れたケーブルを30分で交換することが出来るが、ディーラーで取り扱っている不具合を抱えたままの純正パーツを使った場合、丸一日掛かりの作業となる。

X8Rではふたりが設計を担当しており、テストが行われる前に各部品は3Dプリンターで試作が行われる。その後、世界中にある協力工場でX8Rのスペックに基づき製作が行われるとラムズゲートへ向け発送されることになる。

彼らの顧客は英国内に留まらない。マニングスは米国と南アフリカの代理店へと発送されるX8Rの社名が記された木箱を指さす。

その中味はBMW用の鋳鉄製エグゾーストマニフォールド(オリジナルのクラックが生じやすいステンレス製の対策部品だ)と、ランドローバーアウディモデル向けエアサスポンプ用改修キット(このキットは15ポンドで購入可能だが、ディーラーでは300ポンド強で新品のポンプを購入することしかできない)だ。

将来も安泰?

その他にも小さな木箱の中には、eBayやアマゾン、さらにはオーナー同士のフォーラムリンクページからX8Rに辿り着いた英国と大陸欧州の顧客向けに集められ発送を待つ部品が入っている。

さらに社内に置かれているボックスにはさまざまな自動車メーカーの名が書かれている。フォルクスワーゲンビートル用ドアハンドルメルセデス・ベンツのギアレバーブッシュトヨタ・プリウスのトランク用リリースパーツの強化部品や、BMW用スワールフラップDISAバルブ、VANOS向け修理キットといったものだ。

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ふたりが設計を担当する。

そして、最新部品のひとつがシトロエンC4のグローブボックス用ヒンジの修理パーツだ。

「必ず破損しますが、eBayではバスタブ用のプラグを使った修理部品が販売されています。確かに機能上問題はありませんが、もっと良い方法があると考えたのです」と、マニングスは言う。

では、X8Rの将来はどうなるだろう?

「EVでは不具合が少なくなるのではないかと少し心配していました」と、彼は話す。「ですが、いまではEVにも問題を抱えたモデルもあるということが分かったので、これからも多くの需要があると考えています。確かにエンジンは無いかも知れませんが、その他の部分にはコストを絞った不具合パーツが数多く使われているのです」

番外編:DIYがコストを下げる

高額な料金を請求する正規ディーラーにとってはさらに悪いニュースかも知れない。

X8Rでは独立系ガレージや、「少し気の利いた」正規ディーラーにも部品の供給を行っているが、さらに車両オーナーに自らの手で部品の取り付けを行うよう熱心に勧めてもいる。

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VANOSリペアキットが限界だ。

「われわれの部品の取り付け方法を紹介するためのビデオ作製に何千時間も費やしています」とキーレン・マニングスは言う。

「以前さまざまな部品の製作を考えたことがありますが、アマチュアメカニックにとっては非常に取り付けが困難なものが存在することに気付いたのです。BMW向けのVANOSリペアキットが大多数のひとびとにとって自ら作業が行える限界だと考えています」


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