センサー自体が発電を行い、バッテリーも電源配線もいらない、という画期的な漏水センサーが登場した。少量の水による発電と、その微弱電力を無線通信に利用する技術を組み合わせて実現した。バッテリーと電源配線が不要で水滴レベルの水漏れを検知できるセンサーは世界初だという。

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 半導体の設計開発・製造を手掛けるエイブリックが大成建設と共同開発し、2019年7月に発売した「バッテリレス漏水センサ」である。エイブリック立命館大学と共同研究してきた「CLEAN-Boost」と呼ぶ技術によって、発電した微弱電力を蓄電・昇圧する。

センサーの数が増えるにつれて、(解決しなければならない難問として)バッテリーの問題が必ず出てくる」と、エイブリックCEOオフィスビジネス・ディベロップメントユニットの武内勇介ジェネラルマネージャーは開発動機を説明する。

 IoT用の各種センサーが大量に設置されれば、センサーを動かすための大量のバッテリーが必要になる。センサーを長期間稼働させるためにはバッテリーの点検や交換の手間が必要になることもある。また、膨大な数の使用済みバッテリーが適切に回収されないと、バッテリーからの液漏れによる健康被害や、破裂や発火による重大事故を招きかねない。IoTはそれで本当にスマートな社会を生み出せるのか――。

発電した微弱電力を蓄電・昇圧し無線発信

 エイブリックの「バッテリレス漏水センサ」は、2種類の金属を織り込んだ細長いリボン状のセンサーと、短距離無線通信規格のBluetoothで無線通信を行うモジュールからなる(写真)。リボン状のセンサーは水が浸みるとごくわずかな電気が発生する仕組みになっている。センサー自体が発電した電力を無線通信に用いるので、バッテリーや電源ケーブルはもちろんのこと、通信用の配線もいらない。このため建物や設備への設置が非常に容易になる。

 水から発電できる電力はマイクロワットレベルと非常に小さく、そのままでは無線通信用回路を動かすには不足である。「バッテリレス漏水センサ」に組み込んだ「CLEAN-Boost」は、発電した電力を蓄電し、昇圧する技術である。リボン状のセンサーで発電した微弱な電力を蓄電し、一定の量に達したタイミングで昇圧して放出する。竹筒に少しずつ水を蓄え、溜まった水を一気に放出する“ししおどし”のような原理だ。そうすることでバッテリレス漏水センサは、Bluetooth通信用に必要な電力を得ている(図)。

 CLEAN-Boostは蓄電中、電圧を検出する回路が動作しているが、その消費電力は極めて小さく、センサーの発電量を下回るので、消費電力との差分を蓄電することができる。このためバッテリレス漏水センサは、ポタポタとしたたる水滴や、うっすらとにじむような湿りなど、ごく少量の水分の漏れを検知できる。

 リボン状のセンサーは1本あたりの長さが50センチ、2メートル、5メートルの3種類あり、複数連結すれば最大15メートルまで延長できる。水で濡れた範囲が広がるほどたくさんの電力を発電することから、無線通信に必要な電力を蓄積するまでの時間が短くなり、バッテリレス漏水センサは頻繁に電波を発信するようになる。したがって電波の発信間隔をみることで漏水の度合いが分かる。

漏水による設備故障の回避などの用途にも

 バッテリレス漏水センサの用途は多岐にわたる。工場内を張り巡らせた配管に巻きつけることで、水漏れに起因する設備故障や事故を回避するのはひとつの例だ。倉庫の床に張って水漏れを早い段階で発見し、保管している商品の損傷拡大を避けるといった使いかたも考えられる。商業施設や集合住宅の配電盤に貼り付けて漏電を防ぐ用途も想定される。

 また、CLEAN-Boostの技術は漏水検知以外の分野でもバッテリーいらずのセンサーの可能性も広げる。エイブリック立命館大学とともに、水分で発電するセンサーを貼り付けた紙おむつの研究を進めている。いずれ、交換時期をタイムリーに知らせてくれる紙おむつが誕生するかもしれない。

 同じく立命館大学と共同で、植物の活性をモニタリングするシステムの研究にも取り組んでいる。樹木の幹と地中に針状のセンサーを刺し、樹幹内を流れる水分で発電して電波を発信する。光合成が活発な樹木は地中からたくさんの水を吸い上げるという特性を踏まえ、電波の発信間隔が他よりも長いものは活性が低くなっていると判断し、診断や病気の早期治療に役立てられる。

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エイブリックの武内勇介CEOオフィス ビジネス・ディベロップメントユニット ジェネラルマネージャー