「おなかがすいていると、イライラしたり機嫌が悪くなったりしやすい」

 このような人について「身近にいる」「私のことだ」と心当たりがある人も多いことでしょう。空腹などの生理的要因によるいら立ちや不機嫌は、状況によっては周囲との関係に影響を及ぼすこともあるため、なるべく上手にコントロールしたいものですが、ネット上には「昼食が遅くなった日は、いつもよりいら立ちやすい」「上司がこのタイプなので気を使う」「イライラしないで済む方法はあるのかな」など、さまざまな声が上がっています。

 空腹によるイライラについて、内科医の市原由美江さんに聞きました。

低血糖でイライラ、やる気低下…

Q.そもそも、空腹時の人間の体は、どのような状態なのでしょうか。

市原さん「食べ物が胃に入ると、胃から分泌される胃酸によって食べ物が消化され、胃の収縮によって腸に送り込まれます。空腹時には胃酸の分泌は抑えられ、収縮する動きも弱まりますが、空腹の時間が続くと胃酸が胃の粘膜を刺激してしまうことがあり、胸焼けや胃痛の原因になることがあります」

Q.おなかがすいていると、イライラしたり機嫌が悪くなったりしやすいのは事実でしょうか。

市原さん「事実です。空腹の時間が長く続いた場合、血糖値を上げるホルモンによって調整されるので、通常は血糖値が下がることはありませんが、体質的に空腹時の血糖値が下がり過ぎて『低血糖』を起こす人がいます。低血糖の症状として、イライラや、やる気の低下などがあります」

Q.空腹時にいら立ちを感じやすい人は。

市原さん「低血糖が原因で空腹時にいら立つ人は、食後数時間が経過してから低血糖を起こす『反応性低血糖』の可能性があります。これは『境界型糖尿病』(糖尿病には至っていないが正常ともいえない状態)の人、または糖尿病の初期の人に起こりやすく、食事によって上がった血糖値を下げようと、インスリンを過剰に分泌することが原因です。糖尿病になりやすいのは、40歳以上▽男性▽肥満▽暴飲暴食をする▽生活が不規則▽甘いものが好き、などに当てはまる人で、注意が必要です」

Q.空腹によるいら立ちは、食事をして満たされると解消されますか。

市原さん「低血糖が原因であれば、食事をすると血糖値が上がるのでイライラは改善します。食事ができない状況では、甘いお菓子やジュースなどを少し摂取すると10分程度で改善します。甘いものを多く取ってしまうとカロリー過多になる上、インスリンが過剰に分泌されることによって、後々、同じように反応性低血糖が起こることがあるので少しだけ摂取するようにしましょう。

食事が取れる状況であれば、お米や麺類といった炭水化物から食べるとよいでしょう。ただし、ゆっくりよくかんで食べることは忘れないでください」

Q.空腹時、いら立ちを感じたり不機嫌になったりするのを未然に防ぐことは可能ですか。

市原さん「先述しましたが、軽く間食をして空腹を防ぐことにより、いら立ちは予防できます。間食の際は、糖質の含まれるものを軽く食べるようにしてください」

オトナンサー編集部

おなかがすくと、なぜイライラする?