「すいませーん」禁止店ですーー。そんな張り紙のある居酒屋がネットで話題になりました。

あるツイッターユーザーが10月、このお店の張り紙の写真を投稿し、2万RT超(現在は削除済み)。そこには、いろいろな「ルール」が書いてありました(以下、写真から一部抜粋)。

・「すいませーん」禁止店です ・スタッフを呼ぶときは、名前で呼んでもらえると嬉しいです。 ・女の子のスタッフは●●ちゃん、男のスタッフは呼び捨てで結構です。

なかなかユニークな居酒屋ではありますが、ネットでは、「めんどくさい」「知らない人を名前で呼ぶのは気がひける」という声も上がっていました。

一般論としてこうした「独自ルール」はどこまで許されるのでしょうか。もし守れなかった場合は、退店させられてしまうのでしょうか。前島申長弁護士に聞きました。

●「ジーンズ禁止の高級レストラン」とどう違う?

「飲食店における飲食物の提供契約は、店側が、調理を行った上でその飲食物およびその飲食物を食べることのできる場所を客に対し提供し、客側は、それに対して代金を支払うことが主たる契約内容になると考えられます(請負と売買の混合契約と理解することもできると思われます)。

そうすると、居酒屋などの一般的な飲食店においては、客が店側に対し、どのような形で注文およびそれに付随するサービスの提供を求めるかは、常識的な範囲では客の自由と考えられ、一般的には、『すいません』と従業員にオーダーの意思表示をしたことをもって退店などを求めることは難しいと思われます。

その意味では、店側の独自ルールというのは、『ジーンズ禁止の高級レストラン』などそれが契約の本質に関わるような特殊なケース以外は認められないのではないかと思われます。

もっとも、本件で問題となった店側の意図は、本当に『すいませーん』という呼びかけを禁止したものではなく、従業員に対し名前で呼んでもらうことで客と従業員とのコミュニケーションを図る方便として提案されたものと思われますので、そもそも店側も注文の際に『すいませーん』と従業員を呼んだ客を退店させる意思はないものと思われます」

【取材協力弁護士】
前島 申長(まえしま・のぶなが)弁護士
前島綜合法律事務所代表弁護士 大阪弁護士会所属
交通事故・労災事故などの一般民事事件、遺産分割・離婚問題などの家事事件を多く扱う。交通事故については、被害者側の損害賠償請求の他に加害者側の示談交渉・刑事弁護も扱う。

事務所名:前島綜合法律事務所

「すいませーん禁止、店員を名前で呼んで」 居酒屋の独自ルール、無視してもOK?