男性の育休に関する課題は多い

ゼネラルリサーチの調査によると、育児休業を取得しなかった男性は75.7%。一方で2017年度の男性育休取得率は5.14%で、政府は2020年までに13%へ引き上げを目標としていますが、現実には進んでいません。

男性育休の義務化について、まずは「強制しないと浸透しないから」というアプローチも理解はできます。ただ、やはり家庭によって事情もさまざまで、強制ではなく「選択肢の提示」という位置づけが本来は良いのではないかと感じます。(文:時短ママ戦略活用アドバイザー谷平優美)

男性が育休取得しやすくなるために必要な3ポイント

取得しやすくするためにどうすればいいのか。ポイントを3つ整理しました。

1.収入が減る問題

「収入が減る」というのがネックになっているという声も多いことから、本当に早急に浸透させるのであれば、「収入が(ほぼ)減らない育休」が必要となります。

さらに理想をいえば「育休を取れば会社も補助金が入り、個人も収入が増える」くらいでないと、特に妻が専業主婦の場合は「収入が減るなら育休は取らないでいい」となりかねません。リアルな家計面も配慮したいところです。子育てのために夫婦二人が休業状態なら助成金を出すなどの支援があってもいいのではないでしょうか。

2.企業の仕組みと文化

前時代の上司だと、男は仕事、女は家庭と思ったままで、理解が追いついていない場合があります。その中では「育休を申請したら出世を諦めろと言われた」「戻ってきたら排他的な待遇を受けた」などの事例がまだ聞かれます。

企業側には人手不足な時代に業務改善やシステム化、様々な工夫を模索した人材活用の仕組み作りが求められます。「子育て中の部下(男女)を活用した仕組みがつくれない管理職は評価が下がる」くらいの連動が必要でしょう。

3.男性の家庭進出サポートと育休中の過ごし方

さらに多いのが妻側の声として、「家事育児を平等に分担せずに家にいられても余計に困る」「喧嘩になるからいちいち怒ったり教育も面倒」といったもの。

見えやすい料理・洗濯・掃除など以外にタスクはいろいろとあります。園や習い事の送迎とその持ち物やノートの準備、予防接種の日程調整調整、トイレペーパーなど消耗品や薬を買う、献立を考えて買い物にいく、マットやシーツを洗う、ホコリがかった棚を拭く……など見えにくい家事育児仕事も多数存在します。

夜中に2時間おきに起こされ睡眠不足な妻を前に、それらを一切やらずにスマホを片手に寝ながら「ごはん何?」とか言ってしまったり、「ごみ捨てしたから」と家事をひとつだけこなして自分の趣味に時間を使われては大変な地雷になりかねません。

妻のストレスは増大してし、将来この人と一緒にいるんだろうかと漏らす人もいます。育休中に夫婦仲が悪くなっては本末転倒です。夫側も甘えていたり、悪気がないだけのことが多かったりします。妻が飲み込んでやり続けるのではなく、男性の家庭進出サポートと、率直な会話による改善が欠かせません。

夫婦での育休をスムーズに行うには?

まずはお互い家事育児タスクの理解レベルを揃えるために、「育休より毎日もっと早く帰れる社会づくりのほうが嬉しい」という意見もあります。子育て中は、ちょっとご飯を作る間にぐずる子どもと遊んでもらえるだけで、お風呂上りに子どもを受け取り、タオルで拭いて着替えさせてくれる人がいるだけで、心が救われるものです。

大変でも孤独じゃないという状態が支えになります。子育ては行うだけで無条件に満点をあげたいくらいの仕事。物理的に手伝ってもらえない日も、話をただ聞いたり優しく声をかけてもらえたりするだけで気持ちが落ち着きます。

女性の10人に1人が産後うつになるとも言われています。「妻が出産して変わった」ではなく、「ホルモンバランスの崩れと睡眠不足、大きな変化による感情の揺れでうつになりやすい」という知識をもって感情を受け止め、負担を減らすよう務めることも必要ですね。妊産婦の死因はなんと自殺がトップなのです。

スウェーデンでは1970年代に税制が大きく変わり、共働き世帯が有利になりました。いまや男性の育休取得率は約90%だといいます(労働政策研究・研修機構の調査より)。

まずは取得義務化で男性でも取れる人から取る文化と仕組みをつくりながら、制度を変えていくことで、娘の世代には間に合うといいなと思うばかりです。

著者近影

【筆者プロフィール】

谷平 優美

時短ママ戦略活用アドバイザー/株式会社ルバート代表取締役。早稲田大学商学部卒業後、総合人材サービス会社で新規事業立上げ・執行役員を経て、 株式会社リクルートエージェント(現リクルートキャリア)入社。WEB企画・マーケティング、法人営業を経て退職。出産前後には専業主婦やフリーランスも経験。サロン講師、就職講座講師やキャリアカウンセリングをしながら、無理ない子育て中の働き方を模索するも待機児童となり認証保育園を利用しながら活動。転職支援・キャリア教育に関わった経験と、出産後に感じた様々な社会への違和感に何か発信をしたいと2012年にママハピを創業。2018年、社名変更後は時短ママのジョブシェア体制で事業運営。J-WAVEやフジテレビライブニュースα、東洋経済、NewsPicksなどメディア実績多数。2児の母。