『ゾイドワイルド放送終了から約3か月。新たな『ゾイド』の世界を描く『ゾイドワイルドZERO』。現在発売中のアニメディア11月号では、1999年から放送された『ゾイド』や『ゾイド新世紀スラッシュゼロ』も手掛けた加戸誉夫監督のインタビューを掲載中。「超!アニメディア」では、本誌に掲載しきれなかった部分を含めたインタビューの長文をご紹介しよう。

 

――まず『ゾイドワイルドZERO』の「ZERO」の意味とはなんですか?

ゾイドワイルド』の原点という意味です。前作との関連がある予定でいますので、世界観として「つながっていたんだ」と思っていただければと思います。

――作品の魅力はどんなところにあると思われますか?

 よく動いている3DCGでしょうか。また、昔のTVシリーズ『ゾイド』 (1999~2000)と『ゾイド新世紀スラッシュゼロ』 (2001)でも担当していただいた坂﨑忠さんにキャラクターデザインをお願いしました。かなりいい感じになっていると思います。また、昔のTVシリーズを蹈襲したような、厚みのあるストーリー展開も期待してください。

――昔のTVシリーズの舞台だった「惑星Zi」が登場することに驚きました。

 どうしたら、アニメだけでなくタカラトミーから発売されている玩具も含めた「これまでの『ゾイド』」を活かせるのかを検討し、すべての『ゾイド』を網羅するような気持ちで制作しています。物語の大きな展開は、僕とメインライターの荒木憲一さんのふたりでいろいろ意見を出し合って考えたものです。僕はアイデアを出すだけですが、それをうまく荒木さんがまとめてくださいました。

――監督が今作でやりたかったこととは?

 最初に考えていたのは「玩具のコンセプトはすべて入れたい」ということ。たとえば、現在の『ゾイドワイルド』の玩具は「ゾイドの化石を発掘して復元する」というコンセプトなので、物語でもそれを描こう。また、前作の『ゾイドワイルド』の舞台が地球なので、どうやってゾイドが地球に来たのかも含めて描こう、ということです。

――映像化するうえで苦労されている点は?

 惑星Ziの人間は、移動手段に自動車ではなくゾイドを選ぶなど、文化の基本としてゾイドを使う思考になっている種族。その文化を描くには「彼らがゾイドを利用するのはなぜか?」という理由を考えなくてはいけません。それがスタッフには伝わりづらいですね。本当に見せたいことは、現代の都市が遺跡となってしまった未来の地球を舞台に、地球生まれの惑星Ziの末裔である主人公たちがゾイドをちゃんと使って生きている姿です。一番注力しているのは、主人公たちがゾイドをどうやって使っているか、ゾイドがどうやって使われているのか。そこを観てもらいたいですね。

――1話では、レオたちは運搬、帝国軍は兵器としてゾイドを使っていますね。

 帝国も共和国も、自分たちのテリトリーを広げるために、ゾイドを使っています。本作では、共和国が先に地球に到着し、後から帝国が地球に来た設定になっています。先にエリアを広げている共和国に追いつこうとする帝国は、軍が主導する社会ではないのですが、後追いで領地を広げるために、軍備・武器の開発を進め、軍事的な力としてゾイドを利用しています。レオや共和国が使うゾイドは普通に目が出ていますが、帝国のゾイドは武器を付けたときの負担軽減と制御しやすくするための装置「ゾイドオペレートバイザー」で目を隠しています。

――映像的に苦心しているのはどんなことですか?

 スタッフが苦労しているのは3Dですが、影のつけ方などを2Dの手書きアニメ的に処理しているところ。あえてそうしているのは、3Dっぽく見せたくないこともありますが、2Dで描かれるキャラクターと共存しやすいようにするため。それは、昔のTVシリーズのときも大命題としてあったものです。でも、当時と今ではコンピュータの性能がまるで違います。当時は処理作業に一晩かかっていましたが、今では10分で終了してしまいます。結果がすぐに見られるのは、トライアンドエラーをやりやすいので助かります。

――1話で手応えを感じたところは?

 ゾイドの存在感をちゃんと見せられたかなと思います。ゾイドが動いているシーンで、重量感や世界観のなかにゾイドがどのように存在するかの描画はうまくいったと思います。
でも、1話は謎だらけなので、2話以降を観ていただければ「そういうことか!」という発見があると思います。

――キャラクターの紹介をお願いします。まずレオから。

 応用力のある子。自分の置かれた環境のなかで、どんなことをすればどんな結果が得られるのかを考えることができる。それが彼の得意なゾイドの強化・改造にも通じると思います。また、王道の「ボーイ・ミーツ・ガール」の物語ですから、サリーとの交流を観ていれば、彼の人間性も見えてくるでしょう。

――では、そのサリーは?

 サリーを描くポイントは、とにかくかわいらしく。サリーは、祖父と一緒にゾイドの研究をしていたことから、ゾイドのことをよく知っている子。レオがゾイドに装備を追加するときには彼女がアドバイスすることもあります。彼女が持っている謎のペンダントは、(1話で描かれたように)ゾイドを直接的に進化させる力を持っています。ただし、祖父に託されたもので、彼女自身は内容の半分ほどしかわかっていません。話が進むにつれて、彼女にもその内容がわかっていきます。

――レオとサリーはどんな関係になりそうですか?

 サリーとレオには、恋愛感情はほぼないと思っていただいていいかもしれません。サリーにとってレオは、ものすごく信頼できる人。レオは、女の子は守らなくてはいけないと思っています。

――レオの相棒のバズは?

 バズは、現実主義者。夢見がちなレオをちゃんと導いてあげられる、いい相棒。経済的なことも含めて教えてもらえる人です。バズとの年齢差は10歳くらいあります。

――レオとバズは運び屋ですが、帝国軍の仕事も請け負っていたようですね? ふたりは共和国側でもない、フリーの立場なのですか?

 両方の仕事を受けますが、帝国のほうが仕事が多かったようですね。レオは父親が共和国に務めていたのですが、現在はどちらにも属さない人間です。

――先の展開で登場するジョー・アイセルは?

 共和国の女性兵士。地球のことをよく知っている「地球考古学」の専門家です。地球考古学は、昔の地球を知ることで、どのあたりにゾイドの化石が埋まっているかを探索する学問。登場人物たちにとってゾイドは、資産や資源でもあります。エネルギーそのものをゾイドから取っているし、自分たちの足でもあり、労働力でもある。そんなゾイドの化石がどこに埋まっているのかを、地形や都市の痕跡などから推理します。

――クリストファー・ギレルは?

 帝国軍のゾイドライダー飛行タイプゾイドであるスナイプテラを駆る優秀な軍人。冷静と言いたいところですが、じつはこっそり熱いやつ。レオは彼にかなり苦戦します。
空から攻撃する方が圧倒的に有利ですからね。そうしたゾイドのマシンスペックの高さに加えてギレル自身のゾイドライダーとしての技術も高いので、レオはまったく歯が立ちません。ライバルにもならないくらいです。むしろ、レオにとっては憧れの存在かもしれません。

――注目すべきキャラクターは?

 帝国軍のリュック隊長。声を担当するのは、岸尾だいすけさん。彼は、昔のTVシリーズ『ゾイド』の主人公であるバン・フライハイト役でした。今回は、主人公の敵役ですが、すごく似合っています。候補リストに名前があったので「ぜひ、岸尾さんで」と、お願いしました。

――世界設定で視聴者が知っておくとより楽しめるのはどんなことでしょう?

 1話で描かれた「ゾイドクライシス」がなぜ起きたのか、その理由は、2話で描きました。でも、肝心なのは、その世界がどうしてそうなったのかよりも、その世界で主人公とゾイドがどのように活躍していくのか。それを注力して観ていただければと思います。言い方は悪いですが、主人公とゾイドが自由に動ける場所を提供するための「新地球歴0030年」なんです。彼らが魅力的に見えるような場所として提供したものなので、そこがどうやって生まれたのかは、僕らの言い訳でしかありません(笑)。

――では「新地球歴0030年」という舞台の魅力は?

 壊してもいいビルがあること(笑)。でも、冗談ではなく、ビルのような大きさが想像しやすい建造物が存在しないと、ゾイドの大きさの対比ができないんです。荒野にある岩が爆発しても破壊の規模が分かりませんが、ビルが倒れたらその凄さが分かってもらえます。大勢の人が暮らしているビルを破壊するのは問題ですが、「新地球歴0030年」は人がいなくなった世界ですから、壊してもいいビルがいっぱいある。若干、殺風景なところもありますが、主人公とゾイドが自由に動ける魅力的な世界になっていると思います。その一方で、廃墟だけでなく、惑星Ziの末裔たちがかつての地球の街を利用して作った街もあります。そこではゾイドをベースにした生活が営まれており、ゾイドを発掘・復元することで世の中にゾイドを送り出しています。荒廃しただけの世界ではなく、多くの人々がちゃんと生活をしています。ゾイドが暴れることができる世界と、ゾイドを作り出して生活する世界が共存している。そんなゾイドを中心とした世界で、人々がどんな日常生活を送るのかをお楽しみに。

――序盤の物語の注目ポイントは?

 1話は、今回の物語の根幹となる人、サリー・ランドが突然やってきました。レオは、ある意味、巻き込まれ型の主人公ですね。彼女と出会わなければ、大変な目に合うことはなかった。2話以降の展開で、この世界の成り立ちとゾイドとの関係が見えてきます。それが見えてくることで、物語はより面白くなっていくでしょう。5話で重要なキャラクターが登場するので、5話まで観てもらうと「なるほど」と思えることがたくさんあると思いますよ。また、4話以降は主人公たちが世界を旅することになるので、ロードムービー的な面白さも出てきます。でも、毎回舞台がどんどん変わっていくのが大変。1話でもすごく雰囲気のある廃墟などの背景美術を描いていただきましたが「美術設定がどれだけ必要なんだ」という状態になっています。こういう街にこういうゾイドがいると面白いなということで、登場するゾイドも変わってきます。

――では、ゾイドの注目ポイントは?

 今回のゾイドは、アニメファンだけでなく、『ゾイド』の玩具を楽しむ模型ファンに向けても作っているつもりです。色や武器などを特別にカスタマイズしたゾイドも登場するので、アニメに登場する機体のカラーリングや武装に塗装・改造し、ビルの廃墟のジオラマ仕立てにするなどして楽しんでいただけるといいですね。

――ところで、レオたちは、秋をどのように過ごすと思われますか?

 レオとサリーライガーに乗って紅葉狩りかな。現在レオたちが活躍している舞台は、アメリカ大陸のイメージ。アメリカから日本へ北極回りで向かうイメージです。ただし、地軸が移動しているので、北極も寒い地域ではなくなっています。

取材・文/草刈勤

ゾイドワイルド ZERO』公式サイト 
https://anime-zoidswild-zero.jp/

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