U-22コロンビア代表に0-2敗戦、堂安&久保のレフティーコンビも不発

 2020年東京五輪に向けて強化を進めるU-22日本代表は、17日に国際親善試合U-22コロンビア代表戦(広島)に臨み、0-2で敗れた。すでにA代表の主力であるMF堂安律PSV)やMF久保建英(マジョルカ)らを招集し、森保一監督も「現時点でのベストメンバー」と意気込んだものの、連係不足を露呈して攻撃が思うように機能せず。0-0で折り返した後半の立ち上がりに2点を失うと、最後まで歯車が噛み合わないまま敗れた。

 森保監督は東京五輪世代の立ち上げ当初から、自身の代名詞と言える3-4-2-1のシステムを採用。今回の一戦に向けては、その2シャドーの有力候補として東京五輪世代のエースである堂安、そして飛び級での選出となる18歳久保を招集し大きな注目を集めていた。

 かつて“名ドリブラー”としてその名を轟かせ、日本代表で19歳119日の最年少得点記録を持つ金田喜稔氏も、「シャドーでの2人のコンビネーションへの期待値は高いし、ともに日本を背負って立ってもらわなくては困る人材」と期待を寄せていた。だが、コロンビア戦の結果を受けて「厳しい。このままでは東京五輪での勝ち目はない」と断言。注目された堂安と久保のコンビネーションについても、「2人の間でのワンタッチのパス交換などはあっても、それはボールを取られないための足もとでのつなぎであって、その次の段階としての連動性のある崩しのイメージは、あまり浮かんでいなかったと思う」と指摘する。

 金田氏が特に気になったのは、久保と周囲の選手との「感性の違い」だ。

コロンビア戦での久保は、A代表とは異なる左サイドでのプレーでも、できることはすべてやっていた。ボールを止め、パスを狙い、自ら突破する。その判断は的確で、持てる力は目一杯出していたと思う。だが、久保の能力を引き出すために、チームとして周りに“感性の合う選手”がいなかった。

 局面を見れば、例えば後半35分に左サイドの久保からペナルティーエリア内の堂安につなぎ、右足で惜しいシュートを放ったが、あのシーンは久保の個人技でタメてタメてパスを通したもの。決して2人の感性が合ったコンビネーションで崩した場面ではない。局面のキープ力とアイデアは久保自身が持っているけど、まだU-22日本代表としてその感性を共有できていないと思う」

「つなぎ合うサッカーをやらないと、久保も生きないし、周りの選手を生かせない」

 金田氏は堂安との2人の関係性に限らず、U-22日本代表として久保の能力を生かす環境になっていないと語る。その最たる例として挙げるのが、「アタッキングサードで、どんなパスを選択するのか」だ。

 金田氏は大前提として、欧州や南米の列強に比べてフィジカルやスピード、球際でのリーチといった身体的特徴で劣る日本は、相手を崩し切るまで「ルーズボールでの走り合い、競り合いで勝てない以上、ボールを奪われないためには足もとでしっかりとパスをつなぐべき」と主張する。世界の中で、身体的に決して恵まれていない「チリやメキシコも、そういうサッカーをずっとしてきた」と語る一方、日本サッカーは「アタッキングサードでの崩しの場面で、背後のスペースへのパスを選んでいる」と指摘する。

「世界を相手にしたら、(最終ラインの)背後は簡単に取らせてくれない。スピードもフィジカルも日本が劣っているわけだから。でも、日本のサッカーはいつも局面を打開する時、『スルーパスで背後のスペースを突く』、あるいは『ワンツーで相手の裏』を狙っていく。おそらくそれは、小さい頃からこうしなさいと選手が学んできたことなのだろうが、その感覚を持ったままでは世界で通用しない」

 そうしたなか金田氏が見る限り、久保のプレーからはそうした意識を感じないという。

「久保は若年層から、バルセロナで足もとの技術が高い選手たちを間近で見てきた。彼らは足もとでつなぐ技術も自信もある。だからお互いに足もとへのパスを選択しながら連動して、最後の局面で相手DFが飛び込んできた時に生まれたスペースを、ワンツーやスルーパスで狙っていく」

 バルサの下部組織で育ち、現在もスペインで戦う久保には、そうした感性がすり込まれていると語った金田氏は、「つなぎ合うサッカーをやらないと、久保自身も生きないし、久保自身も周りの選手を生かせない」と、両者の間に“ギャップ”が存在していると指摘する。

「スペースは“使う”のではなく“作る”」という概念を浸透させるべき

「もちろん、久保に合わせることがすべて良いとは言わない。“11分の1”の選手の感性がハマらないのなら、チーム作りとしては“11分の10”に合わせるべきだろう」とも語った金田氏だが、この日対戦したコロンビアサッカーを見れば、目指すべき方向は明確だと断言する。

「フィジカルもスピードも、日本より明らかに優位な立場にあるコロンビアが、簡単に背後のスペースを狙わずに足もとへのパスをつないでいた。東京五輪で、技術もコンビネーションの質も高い相手に、日本はどう戦えばいいのか? 足もとでつなぐことを放棄して、簡単に背後を狙う“博打のスルーパス”を出すサッカーでは絶対に通用しない。『スペースは“使う”のではなく“作る”』という概念を浸透させないと、世界では勝てないだろう」

 現状のベストメンバーによる一戦で攻守に課題が噴出したU-22日本代表。東京五輪まで残り8カ月、選手の拘束期間も限られ、長期に及ぶチーム作りが難しいなか、森保監督の手綱さばきに注目が集まる。

PROFILE
金田喜稔(かねだ・のぶとし)

1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。(Football ZONE web編集部)

トップチームでも主力を務める日本代表MF久保建英【写真:浦正弘】