(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家

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「桜を見る会」は廃止すべき

 内閣総理大臣が主催する公式行事の「桜を見る会」に、多数の安倍晋三首相の後援会員が招待されていたことが明らかになり、来年(2020年)は中止することが決まった。この問題を最初に暴露したのが共産党の機関紙である「しんぶん赤旗」日曜版であった。これが国会でも取り上げられた。

 この会への招待基準として、安倍内閣は「内閣総理大臣が各界において功績、功労のあった方々を招き、日頃の御苦労を慰労するとともに、親しく懇談する内閣の公的行事として開催しているものであり、意義あるものと考えている」と閣議決定した答弁書を出している。

 これでは基準がないのと同じである。恣意的な選定が可能だからだ。

 この会の公開された写真などを見ても、“このタレントがどんな功績、功労があったのだろうか”と思うような人が招かれている。ましてや安倍後援会から850人などというのは、あってはならないことだ。こういう安っぽいことを抑制する高潔さを保つのが首相という立場なのではないのか。

 私が参院議員時代に、招待があったのか、なかったのか記憶に残っていないが、招待状くらいは届いていたかも知れない。もちろん何の関心もなかったし、行きたいとも思わなかった。桜の花など新宿御苑に行かずともどこでも見ることができる。今年など1万8200人もの人が出席したそうだが、桜を見るのではなく、人を見るために行くようなものだ。こんなことのために数千万円もの貴重な税金を費消する必要はない。こんな会はそもそも廃止にすべきだ。

「党の危機」の率直な吐露

 さて、「桜を見る会」問題を追及して一気に政権打倒へと気勢を上げる共産党だが、共産党自身はきわめて厳しい状況に置かれている。

 共産党は来年1月に第28回党大会を開く。その議案が11月初めの中央委員会総会で決められた。議案は3本だ。(1)綱領の一部改定案、(2)第一決議案(政治任務)、(3)第二議案(党建設)となっている。

「党建設」というのは、共産党独得の言い方である。これには大きく分けて2つのことが含まれている。1つは党員を増やし、「しんぶん赤旗」の読者を増やして、党の勢力を大きくすることである。2つ目は、かつては「思想建設」という言葉を使っていたこともあるが、最近は「『量とともに質を』の立場をつらぬく。全党が、綱領学習と科学的社会主義の古典学習に取り組むことを、日常の気風とする」(第27回党大会決議)という言い方がされているように、党員の理論的・思想的強さを鍛えることである。

 少し横道にそれるが、「綱領学習」というのがなんの矛盾もなしに使われているところが共産党らしさでもある。党の綱領というのは、共産党によれば全党の民主的討論を通じて、全党の英知を結集して作られたものということが建前になっている。それなのにその学習が大事だというのだ。なぜか。全党での民主的討論などなされていないからだ。党大会の議案や綱領案も、せいぜい3割程度しか読んでいないのが実態である。したがって民主的討論も、全党の英知の結集も不可能なのだ。現在の綱領は2004年に策定されたものだ。第27回大会は2017年に行われた。綱領策定後13年経っても、全党員が読んでもいないし、その内容を理解していないのだ。

「科学的社会主義の古典」とは、『資本論』や『共産党宣言』などを著したドイツカール・マルクスフリードリヒ・エンゲルス、ロシア革命の指導者ウラジミール・レーニンなどの著作を学ぶということだ。社会主義理論の初歩とも言えるのがマルクスとエンゲルスの共著『共産党宣言』なのだが、これすら読んだこともない人が共産党国会議員になっているのが現状なのだ。

 本論に戻る。このうちの第二議案(党建設)の第2章には、「当建設の現状をどう見るか──危機とともに大きな可能性が」とあるとして、その危機的状況が述べられている。いくつかを紹介する。

「少なくない地域支部で、支部長を70代以上の党員が担うなど、一部の高齢党員に負担が集中している。(中略)このまま推移すれば支部活動が困難に陥ってしまう状況が広がっている。職場支部数が減少し、重要な職場で党の灯が消えている。職場支部が中心の地区のなかには、地区委員会そのものの存続の危機が迫っているところもある」

 70代以上というのは、私と同じ団塊の世代が党活動を支えているということだ。この先、支部が消滅する危険性が迫っているということである。

 職場支部というのは、企業の中の共産党組織のことである。私はかつて都市銀行に勤めていたが、当時はすべての都市銀行に数十人から100人を超える共産党員が存在していた。だが今では間違いなく都市銀行共産党組織はほぼ壊滅状態になっているはずだ。団塊の世代は、すべて定年退職しているからである。

 地区委員会というのは、各都道府県をいくつかの地区に分けて、その地区ごとに置かれている委員会である。東京ならば23区の各区に、千葉県ならば9つの地区に、大阪ならば20の地区に置かれている。その上が都道府県委員会である。地区委員会が存続の危機にあるというのは、ある地域からすっぽり共産党の組織が消滅するということである。

「赤旗」の配達・集金体制も危機に

 さらに続く。「『しんぶん赤旗』読者の後退は、(中略)党財政の危機に直結している。配達・集金活動を高齢党員が懸命に支えているもとで、配達・集金ができない事態に陥りかねない地域も少なくない」

 共産党は、長く「しんぶん赤旗」読者を増やすことで国民との結びつきを強め、その売り上げで党活動を支えるということを党活動の柱に据えてきた。今回の決議案も同様の立場に立っている。だがこの活動モデルそのものがもはや成立しなくなっているのだ。

 新聞が減っているのは、「しんぶん赤旗」だけではない。一般紙も大幅に減紙している。週刊誌もそうだ。電車内の光景を見れば、10年前や20年前と大きく変わっている。新聞や週刊誌を読んでいる人は皆無に近い。ほとんどがスマホをいじっている。特に若年層の新聞離れが激しい。

 この巨大に変容した社会のもとで「しんぶん赤旗」を増やすことは不可能である。だが共産党の決議案は、「わが党は、危機を打開していく主体的な力ももっている」と強気の姿勢を崩さない。どんな力なのか。次の一文が続くのである。

「世代的継承の問題は、党づくりの最大の弱点だが、同時に、いま60年代、70年代に入党した世代が党の中核的な力となって党を支え、頑張っていることは党の誇りであり、さまざまな社会的経験を積んできた強みを発揮できる」

 意味不明と言うしかない。「世代的継承の問題は、党づくりの最大の弱点」と難しい言い方をしているが、要するに若者がさっぱり入党してこなくなったということだ。そして1960年代、70年代の人が中核になっているのが強みだというのだ。

 この前段では、年寄りばかりの党になり、新聞の配達、集金も困難になっていると嘆いていたのに、今度は一転して強みだというのだから支離滅裂と言うしかあるまい。60年代、70年代共産党に入党した人は、すでに70歳代や80歳代ということだ。こんな組織に若者が入ってくるわけがない。

 共産党は、今年の9月から来年1月の党大会に向けて党員と新聞を増やす「大運動」なるものを行なっている。党員はすべての支部で1人以上増やす、新聞は日刊紙が2万3000部、日曜版が12万部以上というのがその目標である。この数年をとっても何度も「大運動」が呼びかけられたが、成功したことがない。「大運動」どころか「小運動」にもなっていない。70歳代や80歳代が中心の組織に、「大運動」など不可能なのである。

 では今度はどうやって成功に導くのか。党建設についての決議案には、その答えは何も書かれてはいない。指導部自身が回答を持っていないのだ。苦難の道はまだまだ続く。

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