◆高級ホテルの立食パーティ5000円お花見は参加無料!

「招待基準の明確化やプロセスの透明化を検討し、予算や招待人数を含めて全般的に見直す」

 11月13日菅義偉官房長官は会見で、毎年春に新宿御苑で開かれる「桜を見る会」を来年度は中止すると発表した。

 同会は’52年に吉田茂内閣総理大臣主催の公的行事として始めたもので、「各界において功績、功労のあった方々を招き、日頃のご苦労を慰労するとともに、親しく懇談する」ことを目的としており、当然、費用はすべて税金で賄われている。

 ところが、安倍晋三首相の地元後援会関係者が多数招かれていたことが明らかとなったため、公的行事を「私物化」しているのではないかとの批判が湧き上がっていた。

 桜を見る会を巡っては、第2次安倍政権が発足して以降、招待客が増え始め、’14年に約1万3700人だった参加者は、’19年には約1万8200人に急増。支出額も’14年が3005万円だったのに対し、’19年は5518万円まで膨らんでいる。

 政権や与党の幹部に招待の「推薦枠」が割り振られることも杜撰な運用に繫がると問題視されており、国会では、現役のキャバクラ嬢が会に招待されたことを自身のSNSに写真付きでアップさせていたことも追及される事態に……。政府は今後、曖昧な招待基準や不透明な招待プロセスなどを見直すというが、なぜ、このような公私混同がまかり通っていたのか? 政治資金に詳しい神戸学院大学教授の上脇博之(ひろし)氏が話す。

「開催要領には、招待範囲は皇族、元皇族を筆頭に、各国大使や総理以外の三権の長が並び、最後に『その他、各界の代表者等』とされています。この『等』を無制限に運用したため、後援会の家族一同から、果ては、キャバクラ嬢までが招待されることになってしまったのでしょう。

 ただ、安倍首相は、後援会から参加者全体の20分の1に当たる850人もの関係者が招待されており『公的行事を私物化している』と批判されても仕方がない。国家予算を目的外に使えば財政法違反になる恐れも出てきますから。個人売買やオークションサイトに招待状や記念品が出品されているのを見ても、そもそも招待するに値しない人が少なくなかったことの証しではないか」

 首相は、桜を見る会の招待者について「個人情報」であることを理由に明らかにしていない。その一方で、内閣府にあったはずの「招待名簿」は、野党議員が国会で質問をするために内閣府に関係する資料を要求した5月9日のその日に廃棄されていたことが判明。このため、省庁ごとの「推薦名簿」は残っているものの、政治枠で誰が招待されたかを突き止めることは困難となってしまった。

◆「前夜祭」のほうがツッコミどころ満載

 公文書管理のあり方が改めて問われそうだが、今回の桜を見る会を巡る問題は「前夜祭」のほうがツッコミどころは満載と言えよう。

 そもそも、桜を見る会の日程を含む観光ツアーは、安倍首相事務所が企画している。このなかで、後援会が1人当たり5000円の立食パーティホテルニューオータニで開催していたが、この参加費用が「あまりに安すぎる」と疑惑の目が向けられているのだ。

 当初、報道では銀座 久兵衛の寿司も振る舞われたと報じられていたが、これについては同店が否定。ただ、国民民主党の安住淳国対委員長が、同様の条件でパーティを行ったらどれくらい費用がかかるのかをホテルに照会すると「最低でも1人1万1000円」との回答を得たと批判しており、安倍事務所が参加費用を「補塡」していたのではないか、という疑念は拭い切れないのだ。上脇氏が続ける。

「実際にかかった費用と参加費5000円の差額を首相の政治団体が『補塡』していたら、850人のうち大多数いると思われる有権者への寄付行為に当たり公選法に違反します。加えて、政治団体が会費を徴収して催し物を開いたとき、収支を政治資金収支報告書に記載することを義務づけていますが、安倍首相政治団体の収支報告書には『前夜祭』の記載そのものがなく、こちらは政治資金規正法に違反する可能性が高い。

 仮に、首相の政治団体からの補塡が一切なかったのに、ツアーの費用が社会一般の常識的な値段より著しく安ければ、旅行代理店が安倍首相の影響を『忖度』して足が出てしまった費用の一部を補ったとも考えられる。ただ、その場合においても、旅行代理店が安倍首相政治団体に寄付したことになり、企業が政党以外に政治献金することを禁じた政治資金規正法に違反することになる」

安倍首相、記者団の前で直接釈明

「夕食会費、旅費、宿泊費を含め参加者の自己負担で賄われた。事務所に支出はないと確認した」

「(費用が)安すぎるとの指摘があるが、大多数がホテルの宿泊者という事情を踏まえてホテル側が設定した価格だ」

 騒動が大きくなっていることに危機感を抱いたのか、安倍首相は15日、記者団の前で直接こう釈明した。しかし、事態は簡単には収まりそうにない雲行きのようだ。ジャーナリストの鈴木哲夫氏が話す。

「今回の問題は首相自らが権限を使って、自分の支持者を公的行事に招くだけでなく、金銭的にも優遇していたのではないか、という点です。我われ一般の国民からすれば、年金2000万円問題が典型ですが、わかりやすく、怒りに火がつきやすい。世論が反応しやすいタイプの問題なので、政権に逆風となるリスクを孕んでいるので、自民党内でも幹部から説明責任を果たすべきという声が上がっている。

 国会運営はもちろん、首相の悲願である改憲スケジュールに悪影響が出る恐れが出てきた。15日、首相自らが説明したのも、与党内で警戒感が強まっているからです」

◆年内に野党が合流する話が進行中

 “政治とカネ”の問題で2閣僚が相次いで辞任し、直近では英語民間試験が延期されるなど混乱が続く安倍政権。今後も野党は攻勢を強める構えだが、ここにきて「新たな展開」が生まれる可能性も出てきたという。鈴木氏が続ける。

「実は年内に野党が合流する話が進行中です。10月末、小沢一郎衆院議員が『年内に、野党が合流した新党結成を目指す』と言い、多くの人が本気にしなかったが、その翌日、小沢氏は枝野立民代表と会談している。枝野代表を含め、野党幹部の多くは、政権交代を視野に合流の腹を固めている。

 ただ、野党がまとまるためには材料やきっかけが要る。そんなタイミングで今回の問題に火がついた。しかも、世論の後押しもある。だから、安住国対委員長は『来年の通常国会でも徹底的にやる』と強い姿勢を見せているわけです」

 20日に通算在職日数が歴代最長となる安倍首相。来年の桜が咲く頃まで盤石な政権を維持できるのか? 野党の次の一手に注目したい。

<取材・文/週刊SPA!編集部 写真/朝日新聞社>
※週刊SPA!11月19日発売号より